第11話 ねずみドラゴンの初戦

(前回のあらすじ:あまりにも強すぎる事が分かったねずみドラゴン。そんなねずみドラゴンに、にぼし男はパワーを抑えるための作戦を教えます。はたしてどんな作戦なのでしょうか……)


 ガヤガヤ!ワーワー!ニギニギ!

 今日のムキムキの森は大にぎわいです。それもそのはず、今日はムキムキ格闘大会の2日目、最終日だからです。

 代理選手のねずみドラゴンとそのセコンドのにぼし男は、選手控えのテントの中にて最終打ち合わせをしていました。

「ええか?あせらず作戦通りに戦えば、お前なら絶対に勝てるし相手も殺さずに済む。気負きおい過ぎるな。リラックスや。ええな?」

「チュウ!」

「よし、その意気や!」

「ねずみドラゴンさーん、にぼし男さーん、そろそろ試合のお時間でーす」

 運営スタッフの方が二人を呼びに来ました。

「チュチュウ!」

「はいはい、今行きまっせ!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「赤コーナー、サムライパンダ選手の代理でねずみドラゴン選手!青コーナー、ムササビキャット選手!」

 『第100回ムキムキ格闘大会』と書かれた大きな看板が掲げられ、たくさんの色とりどりの垂れ幕が樹々の間に掛かった会場の中、それぞれのコーナーから選手が入場します。

 「チュチュウ……」

 おや、ねずみドラゴンは少し緊張しているようですね。思ったより大勢のお客さんがいてびっくりしてしまったのでしょうか。

 ちなみにそのお客さんの方はというと、

「で、でけえ……」「えっ、ねずみドラゴンってあの伝説のドラゴン族?大きすぎない?」「ドラゴンってこんなにでかいんか……」「こんな大きい生物いるんだ……」「可愛いけどでかすぎる」

 ねずみドラゴンの体の大きさにもっとびっくりしていました。

 ねずみドラゴンと対戦相手のムササビキャットがリング内に上がります。

「両者、用意はいいか?ファイト!」

 レフェリーが試合開始を宣言し、ゴングがカーンと鳴りました。

「ニャーッハッハッハ!ここで俺に当たったのが運のつき!多少思ったよりでかいからといってどうなるものではない!俺のムササビ殺法をその身でとくと味わうがいい!ニャニャーッ!」

 ムササビキャットはそう言うと、大きく高く飛び上がりました。そしてムササビの翼をひろげ、猫の鋭い爪を立てて上空からねずみドラゴンに襲いかかります!

 しかし!

「チュウ」

 ねずみドラゴンはサッと素早く体をせました。ムササビキャットはそのすぐ真上を勢いよく通りすぎて行きました。

「ムササビキャット場外!ルール上1ダウンと見なす!」

 レフェリーが宣言しました。勢いがつきすぎて場外まで出てしまったようです。

「おのれこしゃくニャ……レフェリー!試合続行ニャ!」

「ファイト!」

 レフェリーが試合再開を宣言し、ゴングがカーンと鳴りました。

「今度こそ真のムササビ殺法を味あわせてくれるニャ!」

 ムササビキャットはそう言うと、さっきよりさらに大きく高く飛び上がりました。そしてムササビの翼をひろげ、猫の鋭い爪を立てて、よく狙いをさだめた上で上空からねずみドラゴンに襲いかかります。

「隙あり!もらったアーッ!……ニャ!?」

 パクッ。

 ねずみドラゴンは、ムササビキャットの爪が届く寸前で、タイミング良く口でくわえるようにしてキャッチしていました。

「ニャニをするか!はニャせ!」

 ムササビキャットはもがいて何とか脱出だっしゅつしようとしますが、ねずみドラゴンの口はびくともしません。もちろんねずみドラゴンは歯を立てず、怪我けがをさせないように加減してくわえています。そしてそのままリングのふちまで歩いていき、口を開きました。ムササビキャットは場外に落ちました。

「ムササビキャット、場外!2ダウン!ねずみドラゴンの勝ち!」

「そんニャ~」

 レフェリーが高らかにねずみドラゴンの勝ちを宣言しました。観客がワッと盛り上がります。

「チュウ!」

 歓声の中、ねずみドラゴンはニコニコしながらにぼし男の所まで走り寄りました。

「ようやった!作戦どおり傷つけずに勝てたな!この調子で次の試合も勝つで!」

「チュチュウ!」

 最初の勝利を喜び合う二人。その二人を遠くの方から腕組みをしながら見ている人影がありました。

「フン……今年は少しは楽しめそうだのう……決勝で待っておるぞ、ねずみドラゴン」

 そう、その人影は優勝候補のグリズリースライムでした。久しぶりの登場です。

 はたしてグリズリースライムのひとりごとの通り、ねずみドラゴンとグリズリースライムは決勝で戦うことになるのでしょうか……


(つづく)



 



 

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ねずみドラゴンの冒険 加納佑成 @awcyfollower001

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