第十二話  【カスミの適性探し】

プリズンから華麗に脱獄し、野宿で夜を明かした俺達は近くにあるマーズでも大きめな町に向かっていた。


「やっと町に着きましたね…」

「そうだな…アキは俺が監獄で空虚な時間を過ごす間この街で温泉と美食を堪能してたんだっけ?」

「失礼ですね、本当の事言わないでください」

「………」ジャリ

 

颯爽とアキの髪の毛にそのへんの石をくっ付ける事で復讐を決めていく、俺の名前はサクライカスミ。


この街の監獄から脱出し、冤罪を吹っ掛けた犯人を探している、しがない異世界転生者だ…


「それにしても腹が減りましたね…」

「どうする?一回ワープで家戻る?」

「いえ、それはできません。囚人が脱走した事は公になっていませんが、私達がこの街に来るまでにワープを封じる魔封石の範囲がマーズ全体まで不自然に伸びていました、国境でも検問が始まったとの噂です…」

「しばらくはこの街で大人しくしてた方がいいかもな…」

「さぁ?どうだか…、そんなことよりあの雰囲気良さげなBARで『マスター…いつもの…』して反応を楽しむ遊びでもしません?」

「ん、いいね、賛成」



――――――――――――――――――――――― 

そんなこんなで二人はカウンターの端っこに座った。

そして白髪のダンディーな男に二人して声をかける

「「マスター…いつもの…」」

マスターの戸惑いが見て取れた。


(…なんだ!?この客…顔に全く覚えがない…!?)

グラスを拭く手が止まる。


(こんな常連いたか…?でもここで聞くのも失礼だ…取り敢えず『いつもの』とやらが無い事だけ伝えておこう…)


「…すみません、今日『いつもの』切らしちゃってるんですよ。」

アキに耳打ちする

「どうするアキ…乗ってきたぞ…!」

「あ~…じゃあおまかせで」

マスターは魔法冷蔵庫を開け、言う。

「それではしばしお待ちを…」


⬇️しばし

「カスミ、これはなんでしょう」

バーカウンターに砂場のような物がある

「フィンガー…洗うやつ」

「違います、コーヒーを作る所です」

このマーズには熱された砂の上で作るコーヒーの文化があるようだ。

アキがドヤ顔で説明していた。

⬆️しばし終わり


「お待たせいたしました、こちら塩鯛エンダイのキムチとポテトとなっております。」

すごい美味しそうだよ

「それとコーヒー2つお願いします」


「かしこまりました」

マスターがひしゃくに似た鉄の道具で珈琲を作る。

何処からか沸き上がるコーヒをカップに移す、大体3回くらいでカップは満タンになった。


正直コーヒーは苦手だけど、これなら飲んでみたい。

そう思わせるような面白い作り方だ。


カツンとなったカップをアキはしなやかに取る。

「岩塩が入っていることでまろやかさが増していますね、コクがあって美味しいです、口どけはチョコレートなのに苦味も甘味もコーヒーの味のまま、面白いですよこれは」

カスミは砂を取り口に含む。

「そうだな、ミネラルウォーターのような滑らかな味は勿論、ジャリジャリとした食感だが不思議と不快感は無く、後味の透明感が安心を与えてくれる。」


「お客様、それは砂です」

「あぁ、そうですか」


アキはポテトを手に取る。

ポテトフライは思ったより甘く、パンケーキのような味がした、こういうポテトも悪くない、何よりコーヒーに合う。

すかさずアキはエンダイのキムチを口に入れる。

溢れる生魚の凝縮された旨味と辛みの塩梅が絶妙。

卵黄を添えてくれたのがありがたい。

濃厚な卵黄がキムチに合っている。 


感動に思わず耳打ちするアキ

「カスミ、この店良い店ですよ!」

カスミは料理や店の写真を撮っていた。



「あぁそれスマホですか?」

マスターが思わぬワードを発した。

適応力の高いアキもこれにはビックリだ。

「…なんでスマホの事を知ってるんですか?」

「はい?昔店に来た人が持ってたんですよ。」

昔と言うことはあのドライバーの物では無い。

それなら誰がこの異世界でスマホを持っているのか、元から地図が発達していたり不自然な所はあった。

そのスマホの不自然さが再び浮き彫りになった。


しばらくするとカスミがアキに耳打ちする。


「金無いけどどうする?」

「ツケにしときましょう、また来れば良いんです。」

「わかった」

手を上げる

「マスターツケにしといて!」

「えぇ…?はい…」


二人は引き戸のドアを押し、少ししてから気付き出ていった。

「あの人たち絶対常連じゃないよ…」


―――――――――――――――――――――――

マーズ1自由なBAR『カルデラ・スター』

知る人ぞ知る名店であるこの店に、足を踏み入れたのは、帝国の役人達だった。

「この二人を見なかったか?」


最近、特殊な客が話す脱獄囚の話はこれか…

ウチは脱獄してきた囚人が来るような店じゃない事は役人もわかっているはずだ。

今は昼時、ここで聞き込みという建前で昼食を食べに来たのだろう。


もちろん顔に微塵も見覚えが…ある!?!?

「まぁ、こんな店に来る訳ないか…いやいやこんな店ってのは貶してるわけではありませんよ、この店の評判はかねてから聞いていました。私達もここで昼食を食べるのを楽しみにして現にここに来ている所もあるのですから。」

…あのお客様達がツケを払う未来が見えない

ここで見たと言ってしまっても良い。

だがその場合永遠に金を回収することが出来なくなるかもしれない。

どうする、私…

────────────────────────


「カスミも適性診断しませんか?」

「適性診断?」

そういえばこのライエバの世界では9つ属性があってそれを調べる道具はギルドや一部の人間しか所持していないというのを最近の動画で見た。

この世界がライエバという動画のストーリーから出来ている事をすっかり忘れていた。


そんなこんなでギルドに向かった訳だが


何故か俺はギルドの配管で身を潜めている。


ギルドの中にプリズンの重役がいたのだ。

ここで見つかる訳にはいかないので隠れる場所を探した結果がこれだ、どれだよ!!!!!

なんで狭いダクトに二人して入ってるんだ??

アキは狭いダクトを器用に進んでいる。

しょうがないので進むアキの後ろに着いていく。

交差するダクトを右に旋回するアキ。


「ここが受付の裏ですよ!カスミ!」

「助かった~ここを探してたんですよ~」






「…誰だよ!」


カスミはいつの間にか別ルートから合流したその知らない男に先を越されていたのだ。

アキがダクトから降りて臨戦体制に入る、知らない男とカスミも続いて受付の裏に降りた。

どうやら今は受付の休憩時間のようで降りた先にギルドの人間は居なかった。


「待ってくださいきっと利害は一致してるはずです!僕はあなたの敵じゃありません!」

なんかこいつ見たことあるな…





ふと甦るプリズンの記憶

アキだと思ったら全然知らない囚人が着いてきてた事があった…

こいつはそいつだ!


「あ!あなたプリズンの!」

「あのときの囚人!!」

アキにとっては知らない囚人だが俺にとっては知ってる知らない囚人だったのだ。

「僕あなたのおかげで脱出出来たんですよ!」


────────────────────────


「僕の名前はラース。

職業は盗賊、ある目的の為に盗んだ物に探知魔道具が付いていて、あのプリズンに…って訳。」

お互いに自己紹介を済ませた所で彼のギルドへの訪問目的は技の習得だそうだ、お互いに見つかったらまずい境遇にあるので彼と協力する事した。

「よろしく、ニャース」

「ラースです」

「ニャースよろしく!」

「ラースです(抗議)」


早速水晶玉みたいな奴を使って属性適性診断を行う


「それじゃあカスミ、ここに手を置いてください」

触れた水晶玉の中から色が少しずつ煙のように舞う


「これは…アキ、これ何?水?草?」


「わかりません…もしかして両方!?」

「すごいの!?!?」

「多分?ちなみに私は風だけでした。」

「俺は勝ち組だァッ!」



さっきから眺めてたニャースが

「僕も試しにやろうかな」

なんていうもんだからこの2属性のエリートが見てあげよう。


彼が水晶玉に触れると中に黒煙と雷のような光が見えた。

「これは…雷と闇です!!」

「やったぁ!」

2属性というアイデンティティーは3分で崩壊した

しかも闇と雷だ。

どう考えても強いし厨二的な格好良さを感じる。

それに比べて俺はどうだ…

水と草。

ルンパッパしか頭に浮かばない。

ルンパッパ…ルンパッパ…ルンパッパ…


「俺の属性、ダサい…」

「私は風だけ何ですからカスミは得してますよ」

「ニャースはいいな…闇を切り裂く雷鳴…」

「まぁまぁ、僕は魔法は特に使う予定ないし…それと僕はラースです(確固とした意思)」


「そういえばニャースは技の習得が一番の目的じゃなかったか?」

「ラースだけど(プチギレ)もう済ませたよ」


俺も属性わかったし技の習得しようかな~

「アキ~わざマシンの使い方教えてくれ~」

「取りに行くのは自分でやってよ」

アキが技覚えマシンを持ってきてくれた

「早速おぼえられる技オープン!」

────────────────────────

フックプラント    MP16

ハイドロプレーニング MP12

ターザンロープ    MP6

アクアボムナッツ   MP25

────────────────────────

「見たこと無い技が多いですね、使ってみたらどうです?」

「そうだな…それにレベルアップしてMPも実は増えてるんだ」

「良かったじゃないですか!脱獄の賜物ですね!」

「そんな進化した俺のステータスがこちらです!」

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

サクライ・カスミ     LV10 HP306 MP73

●職業

冒険者

●属性

水・草

 有利属性(火・岩)

 4倍弱点(雷)

●戦技

・卑劣

急所率5%アップ

・姑息

MP0~10の魔法は連続して打てる

・塵の影

足音が失くなる

背後からの攻撃力10%アップ

●特技

ファイヤ(炎)           MP5

サンダー(雷)           MP5

ワープ              MP8

シャドウ(闇)           MP10

違和感の影(風)          MP26

フックプラント(草)        MP16

ハイドロプレーニング(水)     MP12

ターザンロープ(草)        MP6

アクアナッツ(水・草)       MP25


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 

「別に特段強いステータスじゃないですね」

「こんな細かいステータス見るのK位だから大丈夫だ、それじゃあさっそくフックプラント使おう」

意識を集中させる


「フックプラント!」

ザスッ!

音と共にホチキスの『コ』みたいな形のデカイ枝が地面に刺さった。

どうやらこれを発射できる魔法らしい。

「これはどうやって使うんだ?」

二人は暫く悩み答える

「敵に打ち込んで転ばせる…?」

「壁に張り付けにする…?」


「地味ィ!!!!!!」

気を取り直して次!


「ハイドロプレーニング!」

…何も起こらない

「あれ?カスミ足元濡れてますよ」

「ん、そう?」

足の裏を確認しようとした瞬間俺は転倒した。

「キャハハハ!何もない所でこけましたよコイツ!」

足元に水の膜が張ってあったのだ。

なんとかコントロールが掴めて、水を足元から移動させる事に成功した。

カスミの足元に張り付けて置こう。

多分この魔法は慣れれば移動や罠に使えるはずだ…

どちらにせよ地味だが次こそは派手な奴が来るはず!

いや名前的に攻撃技じゃないなこれ

「ターザンロープ…」

元から手に持ってたかの様にロープが手元から現れた、試しに振り上げてみると天井に張り付いた。

「…」

「いいじゃないですか!私がそのロープでカスミをトラックに括って引きずり回してあげますよ!」

…ペシッ

しなりを効かせてアキにロープをぶつける

「…そこそこ痛いです」

攻撃にも使えるようだ


ラスト!せめて攻撃技であってくれ!

「アクアナッツ!」

放たれたのは茶色の木の実だった。

それは真っ直ぐ飛んで行き…


空中で爆発した


「誰だお前ら!」

良く考えたらここはギルドの窓口の中。

休憩時間とはいえギルドには依然人は多く、騒ぎが起きれば当然こうなる。


「どうします…?」

「決まってるじゃないですか…」

パリンッ

アキが窓ガラスを割り外へ飛び出す

「逃げるぞォ!!!!!!ニャース!!」

「ラース!!!!!!(憤怒)」

アキの背を追い、床を蹴り上げ、窓を越える。






割れ窓を飛び越えた先は崖だった。

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異世界ワイヤレス転生 名無しのジンベエ @nanashinozinbei

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