第18話 異世界2週目 (おそらく火曜日)

 昼すぎ。


 目を醒ます。熱は治まり、傷の痛みもほぼ感じない。オレはゆっくりと身体を起こしベットに腰をかける。干してあった包帯は取り込んであった。


シーツは、乾いたあとオレにかけてくれていたようだ。



 まだ幼い("実世界"では16才だった、と思う…)心くばりに胸を打たれる。――いや、16才ならそのぐらいは気がまわるか、、。しかし、久しぶりに人の温かさに触れ、自分のなかに、まともな?人間の心を感じたような気がしていた。


 オレは、レアデブが膝をかかえて眠っていた部屋の隅を見たが、もうその姿はなかった。さすがに帰ったのか、、。またどこかで会えるだろうか。学校では見かけなかった。上のクラスなんだろうか。


 とにかくありがとうレデアブ。


 オレは心のなかでつぶやいた。


数日だとしてもずっと一緒にいた異性が急にいなくなると淋しいものだ。これが恋愛の感覚なのだろうか。たしかなことは分からないが、なんだか、、だ。


何も考える気が起きずに、ベットに後ろ手をついて天井を見上げ、そのまま上体を倒した。




 ――後頭部にでかい物体が、、?


この部屋にこのサイズの物はないはず、、獣が窓から入り込んだのか!?


異世界バトルに逆戻りか?!!!オレは、オークに襲われた恐怖を思いだしながら、恐る恐る顔の向きをかえた。



 レデアブと目が合った。


 シーツから顔を出し、レアデブは眠そうに言った。



「おはよう」


 そして、少し起きあがりオレの額に手を置いて熱を確認し、そのあとはオレの頬をゆっくりと、さすった。


 オレはつい、まだ側にいてくれた嬉しさでレデアブ抱きしめた。


 嫌がる様子はなかった。


 更に強く、頭を自分の胸に抱き寄せる。レデアブも手をオレの背中に回した。


 冴えない半オジサンもこうして女子を抱きしめる権利はあるはず。ここは恋愛の世界なのだから、、なにか頭のなかで無数の矛盾が無数の細かいノイズ音を発しているのを感じるが、、




 ともかく、そうしてしばらく気だるい幸福感を味わっていると、オレのお腹が鳴った。



「そういえば、何も食べてなかった」


 ――もうじき夜だ。どこも閉店の準備だろう。



 オレは自宅にあったモノで2人分の食事を作った。


「明日、ちゃんとしたものを食べよう。バイトを休む連絡も入れないといけないし。レアデブも一緒に出かける?」


「うん。出かける」




(――とくに何のオチもない。男と女のやりとりを天井目線ぐらいの俯瞰ふかんで見たらこんなもんだろうか?)







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

週6で愛を探す 111asano @111asano

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ