いわゆる「完璧」の語源となった話ではありますが、このお話を読むにあたっては、当時の中国における秦の扱いが「問答無用のクソ無体を働くクソ野郎」扱いであった、と言うところを強調せねばなりません。世間を風靡している漫画「キングダム」の一世紀弱くらい前の話ですが、キングダムは元々「クソと評価されている秦をヒーローとして扱う特異な漫画」であったことにご注意。つまりこっちの昭襄王のような姿が一般的なのです。
なにが言いたいかといえば、藺相如のくそ度胸がやべー。そういやキングダムでも先代「趙三大天」として名前は挙がっていましたね。あの廉頗を差し置いて当時の国政トップに上りつめているお人です。やばくねーわけがない。この人はその後もなぞのクソ度胸とハッタリで昭襄王をコテンパンにします。具体的には昭襄王が趙の王との会談で高圧的に態度に出たとき、ひとり昭襄王の前にやって来、「おいてめーいまなら俺の手でてめーのこと殺せんだぞ、わかってんのかその辺」とか脅しかけるくらい。秦の兵士たちはその無礼さにいきり立つのですが、完全に藺相如にブルってる昭襄王、兵士たちを抑え込みます。趙という国じゃなくて藺相如個人にブルってるんですよね。
そういう、トンデモネーお方のエピソード。史記とか十八史略の記述よりも現代日本人から見ると臨場感あふれる描写であり、こういったエピソードから昭襄王まわりの時代、つまり戦国四君の活躍だとか破壊王白起無双だとかを楽しめるきっかけになってくれるといいよなあ、と思うのでした。