間違いなく名作。
中学校を卒業する前の最後の文化祭。タイチはひそかに思いを寄せるクミと一緒にその準備をすることになった。
少しずつクミとの絆を深めていくタイチ、その様子を冷やかしながら見守る親友アツシらと静かな青春を過ごしていく。
しかし、かつてクミの父親が事故死した事件を探る記者、吹田がクミの周りをうろつき出して……。
確かな筆力で青春期の少年少女の情感を描く文章には圧巻です。
登場人物一人一人の人間ドラマが巧みで、その人物がなぜ行動を起こしたか、その行動原理に説得力があります。
読みやすいながらも重厚感のある作品で、面白さは保証します。
とにかく鮮烈な印象を受ける一話が、この物語の世界にぐいっと引き込んでくれます。引き込んだかと思えば、次からは多くの人にとっての『青春の一ページ』である文化祭の前準備が始まって突き放してきました。
この温度差で「おや? サスペンスだと思っていたけど、実は青春ものか!」と一気にジャンルを変えてきてくれます。いろんな人に読んでいただきたいのでできればネタバレなしでこのレビューを書き切りたいんですけれど、完結まで毎回更新を楽しみに待って、全部読んでしまった今、「実はここはこうで、こうなんですよ!」ってめちゃくちゃ語りたくなってしまう。作者の気持ちがわかっちゃったなぁー!
全52話、トータル10万4000文字という手軽なサイズ感の現代ドラマの逸品です。感想を共有しあいたいのでみなさんも読んでくださいお願いします。