第30話 呪いの真相
「ふぅ~、スッキリした。まったく、あいつらピィピィ騒ぐんだから本当にうるさいよね。困ったもんだよ。うっかり止めを刺しちゃった。」
「何がスッキリしたですか!あなた本当になんてことをしてくれたんですか!神が人間の人生に干渉するなんてどれだけ問題か分かっているのですか!この間、お説教したばかりですよね!」
「なんだよ、天使のくせにどうして神に説教をするんだよ。ふつう逆だろ。それに、放っておいても勝手に死ぬんだからいいじゃないか。」
「あなたが問題ばかり起こすからじゃないですか!何度言ったら分かるんですか、我々はただ人間の生を見守るだけの存在なんですよ!それなのに、殺してしまうなんて!勝手に死ぬから干渉していいということではありません!」
何度も問題を起こし、先ほどから怒られているのはナディアたちがいるこの世界の神だ。そして、その神を怒っているのは彼が作り出した天使である。
では、なぜ、神である彼が生み出した天使に説教を食らっているのか?そこには神に課せられた絶対的なルールがある。それは人間に干渉してはならないことである、それが唯一にして絶対のルールなのだ。
「あのさ、人間に干渉しないなんて誰が決めたルールだよ、そもそも、そんなものを破ったって何か罰があるのか?」
「そ、それはないですけど。我々は生まれた瞬間からそのルールが体に刻み込まれているんですよ!私なんか、何か干渉しようと考えるだけで気分が悪くなったり、罪悪感で押しつぶされそうになるんですよ。
確か、そのルールは位が高いほど顕著になるはずですよね?どうして神であるはずのあなたが何も気にしていないで、私だけ、こんなに苦しんでいるんですか!」
「さぁ?悪いことをしようとしているからじゃない?きみとは違って僕は良いことをしているんだから。」
「はぁ!なんで私が悪者であなたが善人みたいになっているんですか!」
天使は不服だとでも言うように、神に反論している。しかし、天使はなぜ、彼がこんな事をしているのか、分かっていなかったのだ。神はやれやれと言うように天使を馬鹿にしている。
「まったく、これだから何も分かっていないやつはダメなんだよ。いいか、この僕が私利私欲で干渉をしたなんて思っていたのか?」
「はい、神様ですから。」
神は私利私欲で干渉などしていないと天使に話すが悲しいことに普段からの行いのせいなのか全く信用されていない。
「よし、お前あとで独房な。そろそろ、どっちの位が上か教えてやらないと。」
「ちょ!何でですか!普段からのあなたの行いが悪いからでしょうか!」
「うるさい、黙って話を聞け!いいか、話は彼らの前世にさかのぼる。もう知っていると思うが、人間は誰にだって前世というものがある。僕が呪いを解く力を与えたナディアにもあるんだ。
そして、ナディアの父親、母親、ミナミは前世でも今のナディアと全く同じ家族関係だったんだよ。」
「つまり、ナディアの前世も妹はミナミで父親と母親も変わっていなかったということですか?」
「あぁ、そして、レインはナディアの幼馴染だった。さて、前世でも同じような関係だったが、ある時、彼らの住んでいた地域で流行り病が発生したんだ。
確か、咳が止まらなくて、熱が出て、胸が痛くなる病気だったかな?咳をするだけで移っていたな。致死率も高くて病気も移りやすいからみんな自然と外出を控えるようになった。もしも、病気を発症したことが分かってしまえばこれ以上感染が広がらないように殺されてしまうくらい、危ないものだったんだ。
そして、そんななかでナディアに悲劇が起こることになる。外出を控えるようになってご飯が食べれなくなったミナミはナディアのご飯を欲しがったんだ。でも、ナディアもお腹が減っていたからそれを拒否したんだよ。そしたら、あいつ、どうしたと思う?
ご飯が足りないなら、食べる人間を減らしてしまえと思ったんだよ!家族たちにナディアが病気にかかったって嘘を言って彼女を追い出そうとしたんだ。
もちろん、そんなことはナディアを見れはすぐに分かることだし、実の娘が病気にかかっていてもそう簡単に殺そうなんて思わないだろ?
だが、あいつらは違った。心の中では病気なんてしていないと分かっていたんだ。でも、あいつらはご飯欲しさに病気でも何でもないナディアを殺したんだよ。彼女が必死に助けを求めているのにもかかわらずね。
だから、僕は思ったんだ。己の欲望のために嘘をついたミナミには本当にそんな病気に罹ってもらおうとね。そして、その反対にナディアには呪いを解く力を与えた。
嘘をついたものが来世ではその病気に罹り、被害を受けたナディアしかミナミを治す力はない。皮肉なものだろ?もちろん、嘘と知っていた両親も同罪さ。あいつらにもミナミの呪いが最も影響のある家族という関係に輪廻転生させてやった。どうだ、ぐっとアイデアだろ?」
「えっと?レイン王子に関してはどうなんですか?今の話だと、関係なさそうな気がするんですが?」
「ん?あぁ、忘れていたな。あいつはナディアが殺される寸前にたまたま現場を目撃したんだ。ナディアは殺されそうになって幼馴染である彼に助けを求めたが、彼は助けなかった。あいつは、いきなりナディアの家族に黙っておいてやることの見返りに食べ物を要求したんだよ。それで、あいつは物だけもらって殺されそうになっているナディアを見捨てて帰りやがったんだ!あいつまじで、最悪!」
「なるほど、今の話を聞けば神様のやったことが少しだけ、まともだったと思えます。」
「だろ、だから言っているじゃないか、僕は何も悪いことはしていないと。」
神は天使に向かってほら見たことかと勝ち誇った顔をしているが、問題はそれだけではない。
「では、ミナミの呪いで被害を受けた人たちはどうなんですか!たまたま今回は死ななかったですけど、もしも死んでいたらどうするつもりだったんですか!」
「あぁ、それに関しては大丈夫だよ。たしかに、あの呪いは体長は悪くなってしまうけど、あいつら以外は絶対に死なない呪いだ。だから安心していいぞ!」
神は何も問題はないとドヤ顔で天使に教えてあげるが、それが天使の逆鱗に触れることになる。
「安心していいではありません、無関係なものを巻き込むなど、あなたはやっぱり神失格です!今日という今日は私も本気でお説教をしますからね!」
こうして、天使の説教は今日も続いていくのであった。もちろん、ミナミの呪いにこんな裏話があったことなど、ナディアは知らない。前世では幸せになれなかった彼女は前世の分まで今を幸せに生きているのである。
殿下、私よりも妹を選ぶというのならそれで良いですが、もちろん呪いも一緒に引き取ってくれますよね? 創造執筆者 @souzousixtupitusya
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