第29話 愚か者の末路
兵士たちに捕らえられた二人を見たレイン王子はここでナディアに見捨てられてしまえば自分は本当に破滅だと理解したのだ。今までさんざんな扱いをしていたナディアに精一杯、媚びを売り始める。
「ナディア!僕は君が賢い選択をしてくれると信じていたよ。こんな奴らは君の家族としてふさわしくない。僕なら君の夫として君を幸せにしてあげることが出来る。さぁ、これから式を挙げようじゃないか!」
レイン王子からすればこれは精一杯、媚びを売っているのだ。しかしながら彼の発言など、はたから見れば逆に煽っているようにしか見えない。案の定、ナディアもゴミを見るような目でレイン王子に今の気持ちをぶつける。
「そういうのキモいのでやめてもらっていいですか。一度自分から捨てておいて幸せにできるって流石に自分で言ってて、苦しいと思いませんか。
とにかく、私はあなた無しでも十分に幸せです。いえ、むしろあなたがいない方が私の人生は幸せなのでどうぞ、私のことは気にしないでください。」
「そんな!ナディア、ヘイルに何か言われたのか。君は僕と一緒にいないといけないんだ!大丈夫だ、ヘイルに何か脅されているのなら私が守ってあげるよ。おい、ヘイル!今すぐナディアを開放しろ!」
ナディアが拒絶しても、レイン王子は全く理解しておらず、話はどんどん変なほうに向かってしまう。そんなレイン王子も話すことは既になくなっただろうとへイル王子は兵士たちに命じ彼を連行していくのだった。
彼ら三人を兵士たちが連行し終え、ヘイル王子がナディアの元へとやってくる。
「やぁ、ごたごたに巻き込んでしまって本当に悪かったね。城で取り押さえようとしていたんだけど、まさかこんな場所に三人そろってきていたなんて思いもしなかったから予想以上に時間がかかってしまったよ。」
「いえ、それは大丈夫なのですが彼らはいったいどうなるんですか?」
ナディアがヘイル王子に尋ねると彼は国王の決定でもあると事前に断りを入れておき今後の彼らを待っている運命を話し出す。
「先ほども言ったように、故意ではないにしろ彼らのやったことが国家転覆であることには変わりない。そのため、レインは王位継承権もはく奪され、三人そろって呪いの影響がなさそうな地下牢へと幽閉する。一応、あれでも王族や貴族だからね。処刑となると色々ややこしいことになるんだ。」
「なるほど、確かに言われてみればそうとも取れますね。私も彼らとはかかわりになりたくないので街で会うことがないならそれでいいです。」
「その点に関しては大丈夫だろう。彼らは厳重な監視下に置き、幽閉するからな。それと、君に少し頼みたいことがあるのだが、もしも、先ほどの兵士たちや看守たちにミナミの呪いの症状が現れてしまったら君の力を借りたいのだが大丈夫だろうか?君には迷惑をかけるかもしれないが、あれを解呪できるのは君くらいしかいないんだよ。」
ナディアとしても、その程度のことであれば問題ないと首を縦に振る。
「はい、それくらいなら問題ありませんよ。それに、ヘイル王子からは家ももらっていますしね。」
「そうかい、ありがとう!この家は僕がこだわりぬいて作らせた家でね!こっちなんか見てくれよ!」
こうして、本来であれば家の案内をする役目はシータではあるはずだったがなぜだか、ヘイル王子が行うことになったのであった。
それから、数日しナディアの元にヘイル王子から一通の手紙が届けられる。その内容とはナディアの母が自身の屋敷にて亡くなっているのが発見されたというものだった。彼女の場合は他の三人と違い彼らがナディアの家に突撃してきたときにはすでに瀕死の状態で彼らと行動を共にすることなどできなかったのだ。
自身の屋敷で使用人たちに看病をさせるも一向に病状はよくならず、ついにはその命を燃やし尽くしてしまった。彼女の最期は痩せこけ、あまりにも酷い状態だったらしい。
そんな自分の母の最期を聞いてもナディアは特に気にしていなかった。当然、彼女も自業自得なのだ。自分の行いには必ず因果が訪れる。彼女は自身のみをもってそれを証明したのかもしれない。
そして、その手紙にはヘイル王子に連れて行かれた三人のことに関しても書かれていた。どうやら、三人は牢に連れていかれてからしばらくの間は暴れていたものの、次第にその声はしなくなったようだ。
そこで、看守たちもやっと観念したかと思っていたら急に叫び声が聞こえたらしい。そんな看守たちが何事かと牢を確認しに行くと彼らが血まみれで死んでいたようだ。その後、こうなった原因は呪いのせいではないかという推測がなされたのだが、症状がナディアの母の時とは全く異なるため、その考えは否定されたのである。
こうして、三人の死因は原因不明として片付けられ、王国は日常を取り戻していくことになる。もちろん、それはナディアにも言えることだ。彼女は今日も、自身の力を活かして医療ギルドにて人々を救うのであった。
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