最終話 再燃

部屋へ戻ると、早速健はスマホを操作していた。


あーあ、やっぱりなあ。


私も大人しく、最近ハマってるYouTuberの動画を見ることにした。


「…ハッハッハ!」


しまった。私は笑い方が変で有名だから、なるべく健の前では爆笑しないようにしていたのに。


こういうところで、冷められるのかもしれない。


私は健に背を向け、平静を装った。


すると、行為中に使用しなかった、ローターが視界に入ってきた。


お互い夢中になって、使うのを忘れていたんだった。


こういうのは不思議なもので、見ていると性欲が湧き上がってくる。


でも、健はスマホに夢中だ。


「…。」


このままで、いいのか?


自分の気持ちとか、願望とか、伝えないままで。


期待するのは、そんなに悪なのだろうか。


「…健。」


「ん?」


「スマホばっか見てないで、私を構ってよ。」


私は健の方を向き、俯いたまま、ローターを握りしめた。


「…わかった。」


健は私からローターを取り、唇を重ねた。


舌を吸いながら器用にローターのスイッチを入れ、それを私の陰部に当てた。


「んんっ…。」


下着越しでも、かなりの刺激が伝わってくる。


段々と私も腰が動き、唇を離して声を上げた。


「はあっ!…ああんっ!」


健が私を凝視する。


「み…見ないでっ。」 


「やだ。」


健は私のいやらしい姿を見ながら、性器を扱き始めた。


彼の眼差しが、私を射止めて逃さない。


「んんっ…。もう…やだっ。」


「駄目。亜美の気持ち良さそうな顔、もっと見せて?」


健は更に顔を近づけ、息を荒げた。


「はあ…はあっ…。」


「んっ…ああんっ。」


二人の喘ぎ声が重なる。


「あっ…!いきそうっ…!」


「うん…。俺もいくっ…。」


私たちは同時に達し、健の精子が私の腹部に飛びついた。


「はあ…はあ…。」


暫く放心し、やがて再び静寂を迎えた。


「…んーー。堪らんかったなあー!」


健は笑った。


「もう、変態!」


私も笑えてきた。


良かった…。


少しずつだけど、気持ちを表に出してもいいのかもしれない。


「ねえ、お腹空かない?」


「うん、空いてきた。」


「じゃあラーメン食べに行こうよ!」


「えー。まだ時間あるじゃん。」


「じっとしてても勿体無いでしょー。健の好きな家系行こ!」


少し渋っている健の手を取り、私たちはすっかり暗くなった町へ出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

束の間の熱情 ミエ @emitake

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ