10話.[やっぱりします]

「昨日はどうでしたか? 励先輩と楽しめましたか?」

「話をしながらだらだらしていたな、普通に楽しかったぞ」


 不安なことがあっても表に出さないところは本当にいいと思う、前も言ったがそこを抑えられるかどうかで相手にも与える影響力が変わるからだ。

 昨日は「最近は行きすぎているので我慢します」ということで彼は参加していなかった、だけど今日はちゃんと来てくれたから必要以上に不安になる必要はないのか?


「いきなりだけど俺は昨日不安になったぞ」

「不安? 楽しめたんじゃなかったんですか?」

「だって初日に言ってきてこっちが断ってから一度も言ってきていないだろ?」

「ああ、それは亮太朗先輩のことを考えて我慢していたんですけど……」

「そうか、じゃあ興味がなくなったわけじゃないんだな? それならよかった」


 これでほっとしているということは俺も求めていたってことか。

 母はきっと俺が青のことをそういう風に好きじゃないんだろと言いたかったと思うが、こういうところを見ると俺も……程度の差はあっても似たようなもんだったんじゃないかってたまに……。


「こ、こういうことだろ?」

「無理していないですか? 亮太朗先輩が無理する必要なんかないですよ。あのとき言っていたみたいにゆっくりでいいんです、焦ったってなにもいいことがありませんからね」

「こういうときに冷静に対応するのはやめてくれ……」


 もうしてしまった後だからどう動けばいいのか分からなくなるから。

 だがまあ、ずっとこのままというわけにもいかないからばっと離れて床に寝転んだ。

 なんでそれを励といるときにできないのかという話だろう、いやマジでいま冷静になるのは酷いぞ青……。

 逆ギレということは分かっていても結局恥ずかし死をしそうになったという話、やっぱり自分から動くのはやめておくべきだったなあ……。


「俺、嬉しかったですよ? 受け入れてくれたこともそうですけど、こっちが一方的に頑張っているだけじゃないと分かって」

「い、いまはいい、ほら、今日も休憩しようぜ?」

「分かりました」


 決めた、俺は絶対に自分から動かないと決めた。

 断られたというわけではないが似たような経験をして、結構辛いということが分かってよかったのかもしれない。

 だからこそ次は絶対に受け入れてやらなければならないという気持ちになった、次があるかどうかは知らないがそれだけは絶対に守る。


「やっぱりします!」

「おっ、……はは、なんか安心できたよ」

「はい! 我慢ばかりでもよくないですからね」


 ここまでいい笑みを浮かべられると俺からしたらどうなるのかとか急に気になり始めるんだよな。

 でも、微妙な結果で終わったばかりだったからやっぱり任せておくことにしたのだった。

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