最終話
これから消えようというのに、僕は穏やかだった。僕の隣には、僕と同じように愛を求めていた人がいる。僕と同じ感情を持っている。僕は、一人じゃない。
一体何人もの人が、ここで愛となったのだろう。死神になれば、分かるのかな。
僕は隣にいる名前のない女を見て言った。
「今度は、僕達が消えてしまうね」
「そうだね。悲しい?」
「どうだろう。悲しいのかな。でも、愛し合う事を叶えられないまま死んでしまうより、ここで愛になって、愛のために消えるなら、それでいい」
女は微笑み、僕の肩に身を寄せた。僕達は目を閉じた。
──手を伸ばしていた。
ずっと、何かに、誰かに触れようと、伸ばしていた。そうやって生きてきた。その手を掴んでくれるものの温もりを、知らなかった。
今、僕の手には、僕と共に消える女の手が握られている。それはどうしようもなく哀しくて、優しくて。
繋いだ手から、全てが繋がった。これまでこの世界で生まれたすべての愛と、僕達は一つになった。
すべてが、一つになった。
廻り愛 名波 路加 @mochin7
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