第17話 いよいよ全面戦争だよ、グシャート君

 それから。

 僕は、騎士であり続けながらサイルと二人パーティで行動している。

 その間も、レナジェは監視という名目で着いてきて、見守っているのが現状……だった。


 なお、僕の悪評もあってパーティメンバーは増えていない。それも仕方ないことだし……何より今の仲間であるサイルを大事にしたいと思っている。

 そんな日々を過ごしていたある日、それは


「緊急クエストを発令する。冒険者ギルドに登録している全てを動員し……魔族との全面戦争に入る!」


 冒険者ギルド長、ライハナサン・グーガスラヒ様の声が魔法で造られた念話装置から聴こえてくる。

 その声は緊迫感に満ちていて、いよいよ勇者と聖女が真価を発揮するというところか? と僕は緊張感を募らせる。


 ……その最前線に僕が立つことはないけれど。


 魔族との対立は、何十年も前から起こっていた。それを治めるために勇者が選出され、対立原因となったを倒すのがその役目だ。混沌の覇者――魔族達と共にこの世界を闇へ堕とそうとする者。危険な、存在。


 僕がリーダーになっていたのは、その大役をサポートするためでもあった。まぁ愚かな行為でそれすらままならなくなってしまったが。


 それでも。僕は騎士として、盾になろうと心に決めた。いや、誓い直した。


 だから……。


「サイル、行こう」


「……うん、グシャート君たん!」


 僕達は今、最底辺のEからCにまで上り詰めた。それゆえ、ある程度前線には出られるだろう。

 別に華々しい活躍をしようなんて、もう思っていない。ただ――騎士としての役目を果たす。それだけだ。

 

 ****


 全面戦争の舞台は、魔族と人間との境界線だ。

 そこで、混沌の覇者が率いる魔族と決着をつけるのだ。僕達Cランクは、雑魚より少し上くらいの中級の相手だ。


 そこに……レナジェはいない。彼は一人でSランクとして認定されており、今回はテルス達の補佐に回ることとなったからだ。


 だからこそ、僕はサイルと二人、協力し合うと約束した。……まぁ他チームからの侮蔑や冷笑は相変わらずだけど。


 その声すらも自分への罰だと思いながら、僕は盾と剣を握る。隣にいるサイルも槍を構える。

 彼女は結局、槍術士そうじゅつしのままだ。理由は、あの竜を待つためだそうで。


 そんな純粋な想いを持つサイルのためにも、僕が! 僕が認められなければ!


 気合を入れる。全身に魔力を巡らせる。さぁ、決戦はもうすぐだ。


 ――始めよう。最後の、戦いを! 混沌の覇者から平和を取り戻すために!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る