第14話 嘆いたよ、グシャート君
テルスとスセのパーティと別れた僕達は、改めて竜の元へと戻ることにした。
正直、気が重い。というか、気が進まない。
だってさ?
自分を助けたことで生前は賞賛されたのに、死後になって情勢的理由から不名誉極まりない扱いを受けたんだよ? それも恩人が。
……そんなの僕だったら……耐えられない……。
憂鬱な僕と珍しく静かなサイルの後ろを、いつも通りにしか見えないレナジェが着いてくる。
その距離が……また辛かった。
****
【……そうか】
僕達の報告を聞いた竜は、静かにそう呟くと目を閉じた。竜が何を考えているのか、僕にはわかりっこない。
だけど……いや、だからこそ。
サイルに対して、答えを出してやってほしいと思った。
しばらくの静寂が僕達を包む。焦る気持ちと不安がないまぜになって落ち着かない。そんな僕の傍らで、サイルはいつもの百倍も大人しかった。
【……理解した。だが、故にこそ……納得できるものではないな】
落ち着いた声の中に、確かな嘆きと怒りを感じられた。これは……やっぱり……。僕がそう諦めた時だった。ずっと静かに竜を見つめていたサイルが口を開いた。
「竜たん。ルルーシュタさんの名誉、取り戻さない? ウチと、いっしょに!!」
当の竜は、目を丸くした後静かに告げた。
【……それは悪くない。だが……見るにそこの盾の男は、まだ己を認識できていないな? そのような者が、ルルーシュタの名誉を取り戻すなど……どう信じられよう?】
「えっ。ぼ、僕ぅ!?」
まさかの名指しに、僕は思わず間抜けな声を上げてしまった。そこはサイルじゃないのか!?
動揺する僕に視線をやることなく、竜は告げた。はっきりと。
【そこの盾の男が、己を正しく認識し、また、娘が更なる成長を為した時、我は現れよう。必ずな?】
****
宿屋に戻った僕は、沈んだ気持ちで一直線にベッドへダイブする。その姿をみて、同室のレナジェが呆れた声を漏らす。
「はぁ~。アンタねぇ? そういうとこよぉ、そういう~」
グサッ。今日すでに竜に抉られた心の傷に更なる傷が与えられる。やめろよ……こっちはマジで落ち込んでるんだぞ!
あの後。
竜は僕達の前から飛び去り、サイルは「もっと成長するのん!」と意気込んでいたが、レナジェからの冷たい視線を浴びたのだ。
うっ……確かに、途中でサイルに嫉妬したり……いや、そもそもここまで堕ちたのも自業自得だけどさぁ……。それにしたって、あんまりじゃない?
半泣きになりながら枕に顔をうずめる僕に、再度レナジェが声をかけた。
……先程までとは違う優しい声で。
「……グシャート。本当のアンタを、思い出しなさいなぁ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます