第6話 浮気は許す!
「ほら。これで明菜も紫雨君と肩を並べられるくらいには……なったでしょ?うん。私の子供だからね。素は良いのよ素は」
登校日。
私は母の手により小学校時代の輝きを取り戻した………かは分からないが、イメチェンをした。
前髪を整え、眼鏡をコンタクトに変え、姿勢を指導されて……。
で、キャラも変えることにしました!
テッテレー!!!
私、参上!
……//
私は、制服を着て、リビングに出ていった。
そこでは、音夢と紫雨が朝ごはんを食べている。
「ど…どどどどどう?」
ってめっちゃ噛みましたぁ……。
紫雨の前だからって……。
駄目だ。紫雨は弟なんだ。ただの弟。私より誕生日が三ヶ月遅い、年下なんだ。
「うん、かわいいよーおねぇちゃん」
世界一可愛い音夢が褒めてくださった。うん、私可愛い!
――一方戸惑いの笑みを浮かべる紫雨を、音夢が肘でこんこんとつついた。
ってお前らいつの間にそんな仲良くなったんじゃぁ!
……それはおいといて。
紫雨は取って付けたような返事をした。
「えぇっと、うん。かわいいよ」
――そう、紫雨には、人間なら誰でも持っているはずの、「可愛いな」とか「美人だな」とか、そんな感情がない。いつも隣に朝ちゃんという異次元に綺麗な子がいたからかなとも思ったけど、”異性”そのものに対して興味が無いのだ。
私が……その、む……胸を当てて抱きついた時も、なんの反応もしなかったし。
いや、おい、そこのお前!私がまな板だってわけじゃないからな!?
……すいません取り乱しました。
でも、「お母さん」と言ったときとか、「ただいま」と言った時とか。それから音夢との親睦会の時とか。
明らかに恥ずかしがってる様子があった。
いや、音夢に関してはワンチャン、癒やされるとか、思ってたんじゃないかなぁ?
音夢……やりおる。
――じゃなくて。
ってことは……ってことはだ。
これから異性に関する感情が芽生えることだって、十分有り得るのだ。
ふは。ふははは。
紫雨が恥ずかしがる様子が見たい。
あれ、母性本能がくすぐられるのよ。
もう可愛くて、抱きしめたくなる――音夢みたいだ。
でも、朝ちゃんに言ってたやつ。
「なぁ、もし次やったら、お前を抹殺してやるよ」
――くぅぅぅ。かっくいい!
可愛いのに格好いいとか、反則だよね。
あたしゃ惚れちまうよ(もう惚れてる)
で、私は現在、世界一可愛い妹と、世界一格好いい弟と共に登校している。
なにこれ幸せ。
最初は三人で手を繋いでいたのだけど、流石に恥ずか死にそうになって、私は不本意ながら脱退した。
音夢と紫雨は手を繋いだままだが……。
――さてと。
紫雨に色々と言わなければならないことがある。
「紫雨、もし朝ちゃんとかに何かされたら、私に言ってね。絶対に救けるから」
「うん……分かった」
「わたしもー」
音夢、良い子ね。
「ありがと、音夢ちゃん」
っておい紫雨、なにが「ありがと、音夢ちゃん」じゃ。
私にも言ってよそれ……。
「で、紫雨。これから紫雨には女やら男やらがうじゃうじゃと寄ってくるでしょう」
「そんなバカな」
「いやガチよ。朝ちゃんの恐怖から開放された彼ら彼女らは、あなたに、べったりと、すり寄ってくる」
「へ……へぇ」
信じてないな?
無理もないか。
ずぅっと、誰にも相手されないという環境の中にいたんだから。
次の言葉を言おうとした時、音夢の声が聞こえた。
「ばいばい」
――小学校についたのだ。
今まで音夢も私も車で送ってもらっていたのだが、せっかく紫雨もいるということで歩いての登校だった。
音夢を一人で行かせることなど絶対に出来ないので、私達が付き添った次第だ。
絶対に、と強調したのには理由がある。
昔、音夢はロ○コンというクソな性癖をもったクソオヤジに……。
駄目だ。思い出すだけで吐き気がしてきた。
ああ、忌まわしい。
そいつのせいで、音夢は人見知りになったのだ――。
それはおいといて。
私は音夢を笑顔で見送った。
「いってらっしゃい」
紫雨もキョドりながら言った。
「い……いってらっしゃい」
――可愛い。
「うん。いってきます。おねぇちゃん、おにいちゃん」
音夢も可愛い過ぎる。
もう幸せ過ぎて溶けちゃいそう。
音夢は満面の笑みで、校門へ入っていった。
さて、話の続きだ。
……どこまで言ったっけ。
――まあいいか。
「で、あなたと私は兄妹だけど、同じくカップルでもあるわけ」
「お、おう……」
……あれ?こんな話してたっけ。
まあいっか。
「でも私は紫雨を縛ることは絶対にしたくない。紫雨にはたくさんの友達を作って欲しい」
私が独占欲に飲み込まれないよう、口にしてはっきりと言っておく。これが重要だ。
「浮気は許す。男でも女でも、がんがん仲良くなりなさい」
「はぁ……」
「ただし!私はもう紫雨に大好きって言っちゃったんだし。紫雨は断らなかったんだし。私が第一恋人って認識ではいてね」
「う…うん」
思い出すと、顔が熱くなる。
「教えるよ。紫雨がどれだけ大切かを」――って……。いくら必死だったとはいえ、流石に痛すぎる。
ああ、記憶を消し去りたい。
三十分ほど喋り続けたけど、多分、その中で紫雨に大好きだよって言った回数は、十回を越えている。
ああ、記憶を消し去りたい。
でもまあ、紫雨は嫌そうにはしていなかった。
ってことは、OKだと解釈しても良い……ね。うん。
紫雨が異性に対する感情が目覚めたら、絶対最初に、私に惚れさせてやる!
自殺配信で死ねなかった僕は、どうやら存在価値があるらしい @santakurousu
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