第2話 魑魅魍魎ーTIMIMOURYOU
時は流れて ー 現代 ー
「え~、最近は物騒な事件が続いていますが、今日は明るいニュースがあります」
すると、小さな歓声が上がった。
「え~、今日は転校生の子が来てます」
都内某所 ○○中学校 一年C組教室
新しいクラスメイトに、教室にいる子供たちは騒ぎ立てる。
「はぁ」
そんな騒がしい様子に、扉の外にいる転校生はため息をつく。
「何回経験してもこの感じは慣れないなぁ」
教室の中が一瞬静まり、静けさとは反比例して胸の鼓動は少し大きくなった。
入って来なさい、と先生が呼びかける。
ガラガラ、と扉を開けると大勢の好奇の目が一斉に向けられる。教卓の前に立ち、軽く息を吸ってから、
「織田一花(おだいちか)です。よろしく。」
と、自己紹介をした。ボブカットで眼鏡をかけている彼女はどこかおとなしい雰囲気だが、矢継ぎ早にこう続けた。
「まだ転校してきたばかりなので、早く友達を作りたいです。趣味は、料理、テニス、読書、デッサン、映画鑑賞、ドラマ鑑賞、演劇鑑賞、カフェ巡り、卓球、半身浴、サイクリング、ゲーム、RPG、射撃、ボウリング、ショッピング、アニメ、ジョギング、園芸、ギター、ドラム、寝ること、YOUTUBEを見ること、旅行、写真‥.、とあと何だっけ?...うーん、まぁいっか、そんな感じで。あと、今言った趣味と合わない人とは話したくないです。...改めてよろしく。」と言った後の教室は、皆がお互いの顔を見てどのような反応をしたらいいのか探りあっていた。
「...はい、え~~、と、ありがとう。皆、一花さんと仲良く頼むよ」
その後、窓際の席を案内された一花は、誰とも関わりたくない、とでも言うように窓の外を眺めた。
「一花さん、今日からよろしくね!私、花咲未来(はなさきみく)って名前なの!同じ花だね!」
独特な自己紹介を披露したことで早くも周りから距離を置かれていた一花に花咲未来は満面の笑顔であいさつをした。
「...すごいね。」
「えっ?」
「私、あんな自己紹介して、今も周りからどう接していいか分からず距離置かれてるのに。それでもあなたは私に近付けるんだね。」
「私はすごい一花さんに興味持ったよ!興味バリバリだよ!」
花咲は目をキラキラさせて綺麗にまとめられたツインテールを振り乱した。
「ほんとは孤立したかったからあんなことしたんだけどね~。まっ、これはこれでいっか。」
「(・_・?)」
「趣味の欄は、今まで転校した先の学校で言ったことを全部詰め込んでみたんだけど~...。あの中で何が一番興味持った?」
学校が終わった後で一花と花咲は、花咲が一番興味を持ったというカフェ巡りをしていた。すでに4件目のカフェに入り、時刻は19時を回っていた。
「これ美味しいね!何でこんなにサクサクな生地に出来るのかなぁ?...ふ、ふ、ふ!」
花咲はドイツの伝統菓子のシュトーレンを食べながら幸せそうな笑顔をする。
「花咲さんは普段からこんな時間まで遊んでんの?」
花咲は、えっ、という表情で腕時計を確認して驚いた顔をした。
「もうこんな時間だったんだ!一花ちゃんは大丈夫?」
「...私は親が共働きで夜遅くまでいないから」
「そうなんだ!転校が多いって言ってたもんね!実は私も親が共働きなんだ!だからいつもはこの時間一人で夜ご飯食べるから、今日は楽しくって!」
「...そっか。私も楽しかったよ。あと、どさくさ紛れにちゃん付けしたな。」
「いいじゃん!一花ちゃん!もう友達なんだから!」
ふ、ふ、と一花は笑った。
「あっ!初めて笑った!」
それから20分ほど談笑したあとで二人は店を出た。
「あー楽しかった!...そうだ!学校行こうよ!」
「学校?こんな時間に?..何で?」
花咲からの提案に一花は目を細めた。が、口角はうっすら上がっている。
「この街ってあんまり行くところ無いけど、唯一自慢出来るのは星が綺麗に見えるところなの!学校の屋上から見る星が一番綺麗なんだ!これって都会の中では貴重だと思うんだ!」
「ふーん。全然高いビルも建ってないしね。」
「そっ!」
花咲は相づちを打ち、一花の手を取って走り出した。
「ちょっと!...ほんとにこれから行くの!?」
花咲は振り返ってにんまりと笑った。
カフェからは結局40分ほどかかって学校に着いた。
「...着いてからする質問じゃないけど、入れなくない?」
「へーき、へーき!入るのは、今は使われてない旧校舎の方で、鍵壊れてて簡単に入れるから!」
花咲は一花に向かってVサインをする。
一花は心の中でため息をつき、花咲の後をついて校舎に入った。
階段を駆け上がり勢いよく屋上のドアを開けた。
空にはたくさんの星が輝き、シャワーのように下界に光を降り注いでいた。
「...綺麗」
一花が星に見とれていると、花咲が、
あれ?どこいったんだろ?とカバンの中を探し始めた。
「何か失くしたの?」
「うん!カメラ持ってきてたのに...。落としちゃったかなぁ?」
「それなら私探してくる。トイレも行きたいし。」
それなら私も行く!という花咲を無理やり残して、一花はまた校舎に入っていった。
数十分経っても一花は戻って来ず、花咲は一花を探しに行くことにした。
暗闇の中を花咲は歩いていくと、数十メートル先の廊下の真ん中にカメラが置かれているのが見えた。駆け足でカメラに寄ると、突然。
バリン、と教室の窓が割れ、廊下の壁に何かが突き刺さった。
花咲が見るとそれは刀だった。
えっ?という花咲の言葉と同時に教室から一花が現れた。
「どうゆうこと?何?...何してるの!?」
花咲は目を見開き一花を見る。
「はぁー、もういいよ。」
「何が?」
「だから!...もう演技はやめろ。」
「...何言ってるの?」
一花は刀の方に近寄り、花咲と対面した。
「もう今ので決定的だろ!私はお前に向かって刀を投げた。それをお前は避けた。この暗闇の中で。」
一花は刀を持ち、刃こぼれしていないか確かめた。
「当然、カメラは私があんたのカバンから抜いてこの廊下に置いた。」
一花は眼鏡をクイッ、と上に持ち上げる。
「第一、校舎に入っていく時も明かりが無いのにどんどん進んでいくし。...あと、ここ数週間の連続児童失踪事件もお前だな?念を押して、ここの生徒には手を出してないようだけど、もう少し頭を使わないと。児童が失踪してない学校はこの辺りでここだけだ。」
花咲は手で顔を覆う。
「そう、全部知ってる。お前が妖魔で、児童を食い殺してることも。」
それまで無言で一花の話しを聴いていた花咲は口を開いた。その口からは牙が覗く。
「何で何で何で何で何で何何何何何何が何がぁあぁあああぁ!!!!!」
正体を表した妖魔が一花に襲いかかろうとした刹那。一刀両断、妖魔の体は次の瞬間、崩れ落ちていた。
織田一花(天下布武) 13歳(104歳) B型
織田信長の末裔(ヴァンパイア)
特技(趣味) 妖魔退治
ROYAL MIX JUICE くりすてる @kurisuteru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ROYAL MIX JUICEの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます