第7話 みんな、悪口はやめてアオハルよ!
「みんないらっしゃい。ソラ君、はじめまして」
ママは普段より一オクターブ高い声でみんなをリビングに招き入れた。美月や花音ちゃんはよく遊びに来るから、勝手に持参したケーキを冷蔵庫にしまっている。
ユメカはソラ君の後ろに申し訳なさそうにくっついている。ユメカって声をかけようとしたけど、私は、陰口を言われてる事を思い出して目を合わせないでいた。
「ユメカちゃん、元気だった? この前はメールありがとう」
ママはユメカが二学期から謹慎、不登校になっている理由を知らない。援交して妊娠して堕ろしたっていう噂だ。
「ユメカちゃん、まずユメカちゃんから見本を見せて。ユメカちゃんはソラ君に何をして貰いたいの?」
───ユメカはずっと固まっている。
「ユメカちゃんは小学生の頃から寂しがり屋さんだからこうでしょ?!」
ママがいきなり、ユメカを後ろから抱きしめる。そのあと、クルリと前に向けて、もう一度抱きしめてから、頭を優しくポンポンってした。
「ユメカちゃん、大好きよ。幼稚園の頃からお顔が変わってなくて、まん丸の目が可愛くて……何があってもユメカちゃんはユメカちゃん」
ママにもう一度抱きしめられて、ユメカは大きな瞳から涙をポロポロこぼした。
「ラキ、ごめんね。私、ラキが羨ましくて……。もう悪口書かないから」
こういう場合、何て言うのが正解なんだろう。私も固まる。固まっていると、腕を引っ張られて、リビングの壁に押し付けられた。
「キャ、何! やだ。急に何? ソ、ソラ君!」
───ドン、クイ、チュ。
一瞬の出来事だった。ソラ君の顔が目の前にある。私の大好きなサラサラの茶髪。片エクボ。甘い吐息。
「ラキ、ずっとこうしたかった。前から好きだった……」
「……な、何? みんな見てるでしょ! や、め、て」
顔だけじゃなくて、耳まで赤くなってるのが自分でも分かった。
「ラキ、これは練習だよ。二人きりの時は指じゃなくて……く、ちび……」
耳元で囁かれて、私は嬉しいっていうより、ペペロンチーノ食べてなくて良かったって思った。
「ラキ、良かったわね。おめでとう!」
ママが飛び跳ねて手を叩く。美月も花音ちゃんも、そしてユメカも笑顔だ。
ソラ君はもう一度頬にキスすると。ママの方に行った。
「やった! 次はママの番よ。ママはお姫様抱っこからのソファドンね」
───ママもちゃっかりお願いしていたみたいだ。え! お姫様抱っこは分かるけどソファドンって何?
ソラ君は抱っこしたママをソファーの上にドンって落とす。
「キャ。イタッ。───ぴえん」
ソファーの上で泣き真似をするママにソラ君がデコツンをする。
「イタッ。今のはデコツンじゃなくて、デコピンよ。ぴえんこえてぱおん」
ママの言葉にみんな笑った。ソラ君は片エクボで、ユメカは涙を拭きながら、声をたてて。そんなユメカに私は勇気を出して話しかける。
「ユメカ、12日予定ある?……カラオケ行かない?」
「……いいの?」
「だって友達じゃん……学校も……来なよ」
「うん」
「アオハルかよ! さぁケーキ頂きましょう! 紅茶もキボンヌ! キボンヌって希望するって意味よ。みんなの幸せもキボンヌ!」
───アオハルかよ! みんなでママに突っ込んだ。
ママは相変わらずだ。けどネットスラングを知らないママのおかげで、ユメカと仲直り出来たし、ソラ君に告られて、キスされた。
ママ、ありがとう。
おしまい
3=3=3
伏字の正解は、ネットスラングを知らないママのせいで、本命君に告られてキスされちゃった件〜バーゲンだったのに! です。
最後までお付き合い下さりありがとうございました。ペコリ
ネットスラングを知らないママのせいで本命君に◯られて◯◯されちゃった件〜バー◯ンだったのに! 星都ハナス @hanasu-hosito
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