ささたけ氏、反省する【東洋水産コンテストを終えて】
ささたけ氏はこう見えて、案外と内省的な人間である。
近況ノートでも書いた通り、東洋水産コンテストに見事玉砕したささたけ氏は、昼食および昼食代を稼ぐという目論見が外れ、腹を空かせながら考えた。
(いったい、何がいけなかったのだろう)
コンテストに応募する以上、自信のない作品は出品しない。ましてささたけ氏には、昼飯を確保しなければならないという切実な事情もある。だからその時の自分にできる、最大火力の物語を東洋水産に叩きつけてやったつもりであった。
ちなみにその最大火力はこちら。
『笑顔の色は』
https://kakuyomu.jp/works/16816700429016153283/episodes/16816700429021685784
――だがしかし。
ささたけ氏の一斉射撃も虚しく、結果は東洋水産の厚い壁にあえなく阻まれ、「おのれ鉄矢めぇ!」とまったく関係のない武田鉄矢への恨み言を放ちながら撤退するはめになった。
無念である。
屈辱である。
なにより空腹である。
このような思い、二度としてなるものかと拳を握りしめたささたけ氏は、次なる戦いに向け今回の反省をすることにしたのである。
それにあたり、一番手っ取り早いのは――選考側からささたけ氏の作品に対して講評をいただくことである。何が良くて何が駄目だったのかが明示されれば、次への生かしようもある。
しかし、多忙を極める東洋水産およびカクヨム運営の方々である。すべての、まして落選した者にいちいちそんなことをしていては、他の業務に支障が出てしまうだろう。
ささたけ氏は大人なので、それくらいは解っている。
なんせカクヨムは、本来一月に終了予定だった『第2回角川武蔵野文学賞』の中間選考ですらが、いまだに終わっていないのだから。二か月も先延ばしにするって、大丈夫なのだろうか?
それはともかく。
最善策が見込めないとなれば、次善の策として、自分で答えを探しに行くしかない。
そう思い、ささたけ氏は受賞作を読みに行くことにしたのだった。
というわけで、以下より受賞作と自作を比べ軽く思ったことを述べようと思うのだが――あくまでもこれは「ささたけ氏の作品に対して」の話であり、他の方に当てはまるかは保証できないのでご注意願いたい。
ちなみに、各受賞作を未読の方はこちらからどうぞ。
https://kakuyomu.jp/contests/akamidori
さて。
一通り読み終えて思ったのは――月並みではあるが受賞作は伊達ではないな、ということであった。
皆さまがそれぞれ「幸せしみる」というテーマのもとに、家族や友人との一幕をありありと描き出している。
そのうえで、
「幸せしみる」というテーマの表現の個性。
タイトルに隠された意味。
間口の広い童話調。
あるいは実体験ではあるまいかと思わせる過去の事件。
似て非なる青春の一幕。
などなどを、四千文字に盛り込みつつも――きちんと『赤いきつね』『緑のたぬき』の物語となっているのである。
他方、自作を鑑みれば――なるほど読みやすくはあるし、面白くてオチもちゃんとついている。その点に関しては負けているとは思っていない。事実はともあれ、個人が思うのは自由だからそれは曲げない。
だがしかし。
『赤いきつね』『緑のたぬき』らしさがそこにあったかといえば、はなはだ疑問である。一応、それらしさを出そうと思って商品名の由来や紅一点の故事成語なんぞを書いてはみたが――別に東洋水産サイドは「雑学を披露せぇ」と言ったわけではない。「『赤いきつね』や『緑のたぬき』を使って、幸せの一幕を演出しろ」と言ったのである。それがなっていなかった。
そこに敗因はあっただろうと、ささたけ氏は推察する。
直木賞作家の朝井リョウ氏は、飲んだこともないのに発注をもらったからという理由でウィスキーの物語を描いたそうだ。
ならば、一度ならず何度も食べたことのあるものの物語を描く今回のお題は、先の朝井氏に比べればずっとイージーだったはずである。氏の逸話を知りつつも、それを自分の立場に置き換えて活用できなかったのは、想像力が未熟というより他ない。
つまり今回のコンテストは、創造力ではなく想像力で敗れたようなものである。
もちろんささたけ氏はプロではないが、それでも「相手(企業もしくは主催者)から求められているものにきちんと応えるものを書き、対価を得る」という目的を果たすならば、せめて意識や想像力くらいはプロと同じであるべきだったろう。まして技術がないのならばなおさらである。それが果たせなかったことこそが、じつは一番悔しく、また残念でもあったりする。
こうしてささたけ氏は、今回の経験を活かし、次回はよりいっそう精進していこうと固く胸に誓ったのだった。
それにしても――。
ああ、腹が減った。
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