ささたけ氏、門を叩く【山形小説家・ライター講座】

 ささたけ氏は山形県民である。


 のっけから皆様には得も興味もない身バレで申し訳ないが、そうでもしないと話が進まないのでお付き合い願いたい。

 とはいえ、すでにタイトルでバラしているようなものである。わざわざバラすのはささたけ氏の露悪癖の顕現であり文字数稼ぎでもある。


 それはともかく。


 そんな田舎者のささたけ氏であるが、田舎者は田舎者なりに、日々もっと小説が上手くなる方法を模索していた。


 理由は単純である。


 この電子の大海原の中で奇跡的に藻屑ささたけ氏と出会い、そのうえわざわざ作品を読んでいただいた方の時間を、少しでも無駄にしないようにするためである。


 なんでもネット小説というものは、無料であるがゆえその性質上、消費するのは時間だけであり、その時間をどれだけ有効に活用できるかが重要なのだそうだ。長文タイトルが好まれるのも、読者は短文タイトルが嫌いなのではなく、作品の傾向をタイトルから推測することができるからであるらしい。徹底的に無駄を省いた合理的な判断ではあると、個人的には思う。

 ために、ネット小説の読者にとって、つまらない作品に出会うイコール時間の無駄というのが共通認識であるらしい。

 ささたけ氏はどんな作品でも面白がることを心掛けているので、特に時間の無駄とは思わないのだが――それが一般的だというのならそうなのだろう。


 そんな界隈に進出してもうすぐ一年が経つささたけ氏は、自分の創作スタイルを振り返ってみた。


 長文タイトルに昔ほど抵抗はない――むしろ、それでどれだけPVが変わるかを確かめてもみたい――けれども、基本的に付けたくはない。異世界転生もざまぁも悪役令嬢も書けない。(コンテスト参加作品を除き)自作を宣伝する気もなければ、積極的にフォロー・フォロワーを増やすつもりもない。

 ここまでくるともはやネット小説の風上にも置けないような人間だが、そもそも風下にいるので何の問題もない。そう思っていた。


 ――だが。


 そんなささたけ氏の作品に触れ、たまさか心弾む高評価コメントを頂けることもある。時間の無駄どころか、時間を費やしてわざわざレビューを書いていただくこともある。フォローやお気に入りなどしてもらおうものなら、生きる喜びすら感じられる。

 そんな方々に対し、ささたけ氏の返せるものはなんであろうかと、深く深く思案してみたのである。

 その結果、少しでも多くの作品を作り、楽しんでもらうことが一番であるという点に思い至った。なぜなら、フォロワー様の作品を読ませていただくたびに、自分には描けない作品に触れることができ、非常に楽しませてもらっているためだ。

 自分が受けた刺激や喜びを、同じように返したい――純粋に、そう思ったのである。


 とはいえ。


 もはや周知の事実であるとは思うが、ささたけ氏の筆は非常に遅い。それゆえに、作品を量産することは非現実的である。

 となれば、作品自体のクオリティを上げ、少しでも「時間の無駄だった」と思われる回数を減らすべきだろう。

 そのためには、コンテストや新人賞を受賞するのが手っ取り早い。それはささたけ氏を評価してくださった方の目に狂いのないことを証明する、一番の方法であるからだ。「〇〇賞受賞」という箔がつけば、初めての方に対しても解りやすく価値を示せる。

 しかし、残念ながら現状その気配はない。そもそも現在のささたけ氏の力量では、狙って取れるものでもあるまい。


 というわけで。


 己の力量不足を感じ取り、さらなるレベルアップを図るため――ささたけ氏は地元の小説家講座への参加を決定したのである。

 ちなみにこの講座出身者の中には、「盤上の向日葵」や「孤狼の血」の作者であり「ミカエルの鼓動」にて先日の第166回直木賞候補にもなった柚月裕子氏がいる。歴代の講師陣としても三浦しをん氏や石田衣良氏、大沢在昌氏、江國香織氏、平山夢明氏、門田光代氏などそうそうたる面々が並んでいる。

 これらの偉大なる先達の力を借りて、ささたけ氏はさらなる飛躍を誓った。それにより読む価値あるものを皆様へお届けできるならば、どんな苦労も本望である。毎月三千円の受講料は若干痛いが気にしない。とにかく力の限り頑張るのみである。




 ――ところで。




 この講座に参加するにあたり、テキストとして同じ受講者の投稿した数本の小説および詩を読了することが求められている。

 すでに大量の本を積んでいるというのに、さらに読むものを増やすのはなかなかに厳しいものがある。

 さらに自身も作品を投稿すれば、優れたものならばテキストとして講師に評価してもらえるそうだ。

 すでに更新が滞っているというのに(以下略)。


 己が選んだ道の険しさを感じ、山形県の片隅で、独り打ち震えるささたけ氏であった。

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