第2話


昼休み


「いやー、やっぱり人が多いなぁこりゃ」


S組の渡り廊下まで来てみたが、埋め尽くさんばかりの人だかりとなっていた。もちろん、皆の目的は転入してきた武士組を一目見たいという気持ちだろう。


(それにしてもものすごい人数だな…)


期間限定なんかじゃないんだからいつでも見れるだろうに、と思うが、それでも転校初日に一目見てみたかったのだろう。確かに、朝礼の際に見かけたカリスマというだろうか、惹きつけるものを強く感じた。それをこの人だかりも感じたのだろうか。流石の教科書に載るほどの英雄。

とりあえず今日一日は、この話題で持ち切りになるだろうし、今日は諦めた方が良さそうだ。


「翔一、今日はやめておこう。この人だかりだし満足に話したりもできない」


「それもそうだなぁ、今日は辞めておくか。よし!昼飯食いに行こうぜ!」


今日会うのは諦めて食堂に向かおうとすると後ろから声が聞こえた。


「ちょっ…退いてくれないな…くるしぃ…」


(ん?なんか人の声が聞こえたような…)


聞き間違えか?と思うもやっぱりその声は聞こえる。それに、少し苦しそうな声だ。


(あの人混みの中から聞こえるな…女の子の声か?…ちょっと行ってみるか)


「翔一、すまんが先に行っててくれ。用が済んだらすぐに行くから」


「ん?早く来いよなー」


そういって足早に翔一は食堂に向かっていった。よほどお腹が空いていたのだろう。翔一の為にも、助けを求めている子を救い出さなければ。


「すみません…少し通りますよ〜」


人混みの中を空いた隙間に避けて歩いて行く。押し合ったりして危ないが、助けを求めている子の方が一番危ない状態だろう。


「ほんとに…少し通してくれ…!ちょっと!?触らないで…!」


(ほんとにヤバそうだなぁ…てか、先生たちも何とかしろよ。この状況)

数分、進んで行くと声が聞こえる所まできた。

俺はその子に聞こえるよう少し大きめの声で話しかけた。

「なぁ!大丈夫か?危なそうなら手を貸すぞ」


「!?た、助けてほしい…」


人の群れから手が伸びる。俺はその手を離さないようしっかりと握りしめて、人混みの外へ脱出した。


「ご、ごめん…ありがとう…背が小さいばかりに人混みに呑まれたら身動きが取れなくなってしまって…」


「別に大丈夫だよ、それより怪我はない….か…」


「源義経?」


彼女と話したキッカケがまさかこんな展開だったとは…

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真剣で私に恋しなさい!A-5 Rod-ルーズ @BFTsinon

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