第4話 これからどうするか

「え…?嘘やろ…?」


「もう…限界だった…。」




ゆっくりと、事の顛末を話してくれた。




「すぐにお葬式が開かれたんだけど…そこで親戚たちは……グスッ、私の処遇をめぐって……。」


「怒号が響くほど争ってて…もうその場にいたくなかった……。」


「最後に……グスッ、叔父さんから…『一人で生きていけ。ここには誰もお前を養いたいと思うやつなどいない。』と……。」


「ひどすぎるやろそれは…。」


「悔しい…、なにもできない…、親戚にも疎外され隔絶された絶望……もう私はだめだ…もう無理だった…!」


「私は…一人葬式場から、雨の中歩いて帰って…。」


「あの時そういえばめちゃくちゃ雨降ってたな、ほんならそのときに帰ったんか!?」


「うん……。家を出る気にもなれなかった…。家の食べ物がなくなって、もう死のうと思った時…。」


「俺がきたってことか。」


「そう……。今…、話せただけでもちょっと気持ちが楽に……なった気がする。」


「そうか…、辛かったな。よく耐えたな…。こんな…ことがあったんやて…、よく生きてくれた…!」


「……ごめんね…。心配かけちゃって…。」


「アホか。当然俺のなすべき義務や。ツラい状況に置かれてる人ひとり救われへんやつなんか…人間やない。」


「…ありがとう。ちょっと私…このままこの腕に包まれていたい…。……いい?」


「俺はなんぼでも付き合う。お前が幸せになれるんやったらなんでもする。」


「へへっ…、告白みたいなの言わないでよね………。」


「あ…あっ!あっ…あ、あれ…?寝てもうた…?」



俺の懐に顔を押し当てて、すやすやと眠ってしまった。疲れたのだろう。


泣いたあとだからか、目の周りが赤くなっている。


……手首には、なにかしらで切ったであろう傷もあった。



ちょっと胸の靄がはれたのかな、安らかな表情で、俺に腕を回して、眠っている。



少し緊張してしまうが、俺は、ここではゆっくり寝させてあげるしかできない。


愛奈を安心させて…、そしてこれからを笑顔で生きていってほしいために俺は彼女に尽くす。



俺は、一人女の子を、ゆっくりと愛情をこめて、体全身で包んだ。



________



「ん…んっ…あぁ、はっ!」


「お…、もう大丈夫か。」


「ひゃっ…!ごめん…、私ずっと晃介くんに…!」


「いやいや大丈夫ですよ。ちょっとは楽なれた?」


「うん…。すっごく…いごこちがよかった…。」


「こんな俺が役に立てたんやったら、それで充分す。」


「…ってか、私こんなにずっと近くに…。」


「まぁまぁ、大丈夫でっせ。愛奈、ちょっとソファーで寝転んどいてや、安静にね。」


「う…うん。」


「もう紐はないから…。俺がとりあえず取り外しといた…。これで…よかった…か?」


「うん…今は…。」


「とりあえず何もしないで、安静にソファーで寝といてくれ。一瞬外出てくる。」


「わかった…。」




「………早く帰って…きてね。」




_________


「これまでの日々…ツラかった…。本当に…。でも…晃介くんのおかげで…、心が少し、晴れたような気がした。」


「晃介くんのおかげで…、楽になれたような気がする。」


「晃介くん…私を助けてくれてありがとう。まだ生きようと思えた…。」



「早く帰ってきてね…。」



晃介くんが家を出たあと、一人私は呟いた。


_________


「大丈夫か!愛奈!」


「私、お利口にここにいたよ。」


「ちょっと体調良くなってきてるな、よかったよかった。」


「早かったね。」


「そらそうやろもちろんや。そう、俺は愛奈に何か作ろう思ってな。」


「お粥…つくります。」


「…!……ありがとう。」


__________



「お待ちどうさま。できました、お粥。」


「…!おいしそう…!」


「お粥炊いて、味付けは塩少々の卵入りです。熱いからゆっくり…いただいてくだせぇ。」



愛菜はお粥を一口、掬って食べてくれた。


少し手が震えている。でも、顔色はだいぶ良くなっている気がする。



「おいしい…!ありがとう…。」


「口にあったんやったらなによりや。」


「本当に…ありがとうね…。」


「なんのなんの。俺を頼ってくだせぇ。」


「ちょっと…心に余裕ができたような…気がしなくもない…かな。」



彼女の食べる姿は世界で1番美しかった。


_________


「愛奈…これからどうする…?」


「わからない……。でももう死のうとはしない。」


「それはなによりや。」


「だって晃介くんがいると…安心できるから。」


「…!よかった。そう思えてくれるのが1番嬉しい。」


この言葉を聞けて安堵とともに嬉しさが湧きあがった。


「ここで…俺の提案なんやけど…。」




「俺んちに…住む?」




「え…なにを…。」


「愛奈も結構精神にダメージきてるやろうし、一人じゃ孤独で寂しいやろうし、今一人でどうこうできそうな体調じゃない…やろうし。」


「そ…そんな…迷惑だよ私が、住むだなんて。」


「いや、一回その話家族でしててん。やからワンチャンいける…!」


「い…いいよそんな…。」


「愛奈…、自分の状況を考えてみてくれ…。お前に今1番必要なんは…、"家族の温かさ"や。」


「……!」


今愛奈を安心させるには…"家族"というものを改めて、自分の本来あるべき"居場所"だと再認識させないといけない。


「……母さんに今から電話してみる。」





「もしもし母さん。」


『どうしたの…?」



とりあえず母さんには全てを話して…。



『なるほど…。アタシたちが首突っ込んでいいかわからへんけど…。とりあえず2人でウチ帰ってきて。」


「わかった。改めて本人交えて、話す。」


『父さんにも言わんとあかんからね。」


「了解。」





「な…なんて…おっしゃってた…?」


「よし愛奈。」




「俺んちに行こう。」



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学校一の闇堕ち美少女を救おうとしたら一緒に暮らすことになりました 動点t/ポテトたくさんの人 @Doomight

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