2:Legendia・Uggdracil

「……マスター?どうされましたか?」

「えっ、いや?!あ、えーっと……」


 人形……青年?の声に、我に返る。

 待って、え?Legendia?決戦兵器?いやいやまずここ、古代遺跡の地下だよね?埃かぶったり植物が侵食するような古代遺跡の地下だよね??いやあれ、人形??ヒト???


 そんな大混乱する思考を読んだのか感じたのか、人形らしき青年は、少し悩んだ様子を見せてから声をかけてきた。


「混乱されていますよね。分かりました。疑問にお答えしますので、順番に質問をお願いします」

「あ、うん……えーっと、じゃあ、まず、あなたは誰?」


 無理矢理混乱する頭から質問を捻り出す。


「はい。僕は決戦兵器Legendiaシリーズの1機、N.o.06・Uggdracil。ユグドラシルと申します。ユグ、とお呼びください、マスター」


 とにかく、彼の名前はユグドラシルと言うらしい。

 種族はなんだろうか、と思って見てみるが、特に思い当たる種族がない。


 特に、目……オレンジと青等のオッドアイ自体は時々いるのだけど、例えばオレンジ色の右の瞳の中にスコープのような模様があるとか、右目の白目が黒い色になっているとか、そういう種族に思い当たるものは無い。両目ともに白目が黒い種族はいるけど。


「えーっと、じゃあ……種族は?種族は何?」

「はい。決戦兵器・Legendiaシリーズ……ですが、そうですね。分かりやすく言えば機械人マキナ、つまり機械ですね」

「機械」


 どこからどう見ても、機械には見えない。強いて言うなら、そのスコープのような瞳孔の右目くらいか。

 決戦兵器と言うくらいだから、ここで保管……放置されていたのだろうか?


「うん、分かった。とりあえずそこは分かったよ。それじゃあ、うーんと……どうして私をマスターって?」

「はい。前回停止前に、次回再起動された方をマスターと登録するようにと指示がありましたので」

「う、う〜ん?その指示した人って?」

「はい。それは……」


 ユグドラシルは質問に答えようとして、首を傾げた。何やら、「データ破損?」などということを呟いている。

 すると、ユグドラシルは申し訳なさそうな表情になり。


「申し訳ありません。現在一部データに破損があり、お答えできません……」

「そ、それじゃあ、この古代遺跡の地図とか知らないの?」

「……申し訳ありません。そちらも破損情報です」


 おーう。ちょっと地図とか内部情報とか持ってるかなって思ったけど、破損中かあ。


「分かった。とりあえず、ここから出るのを手伝ってくれる?私、上から来たんだけど、床が崩れて落ちてきちゃったの。仲間が上にいるんだ」


 そう言うと、ユグドラシルは笑って頷いた。


「承りました、マスター」

「あ、それと、私の名前はラピスだからね。ラピス・ラグドール。ラピスでいいよ。マスターって名前じゃないから!あと、私がマスター?っていうならそんなに固くなくていいからね」

「承……分かりました、ラピス」


 そうして、私はユグドラシルと共に何も無い部屋を出た。


◆◆◆


 ユグドラシルが動くと、周囲のパーツたちもついてくる。

 ただ、その……なんというか。


「ねえ、それって、収納とかできないの?」


 まあそこそこ大きいのだ。円を等分したようなパーツなんか、2つほど繋げてしまえば簡単に3人ほど座れそうな大きさがある。


「ユニット達ですか?ええ、できますよ」


 そうユグドラシルが行ったかと思うと、パーツや水晶のようなそれらが小さくなり、ユグドラシルの纏うローブの内側に入っていく。


「わあ、便利」

「ありがとうございます」


 ふわりと笑うユグドラシル。やはり、まるで機械には見えない。本当に機械なんだろうか?と思うものの、おそらく何百年とあの場所にいたはずだから、機械なのは本当なのだろう。多分。



 さて、私が落ちてきた部屋にはもうひとつ扉があった。およそ真後ろの少し離れた位置にあったため、さっきは気が付かなかった。


 そこから先に進んで、廊下らしき通路を歩いている。時々、硝子のような透明な窓が壁にある。何かを観察できるようになっている感じだけど、窓の向こうは薄闇で、何者もいない。


「気になりますか?」


 窓を見ていたら、ユグドラシルがたずねてくる。


「何か知ってるの?」

「いえ、そこのデータも破損していますが……僕の異能チカラ、というか機能で何が存在していたか程度なら調べられますよ」

「なるほど?でも、今はいいかな。後で調べる必要があったら頼むかも」

「分かりました」


 チカラというのが気になったけど、それは出たら問おうと思って今は置いておくことにした。


 通路には扉がいくつかあったが、それらは鍵がかかっていて、全て開かなかった。ユグドラシルが「破壊しましょうか?」と提案してきたのは流石に断った。変に壊して、崩れて生き埋めとかになったら嫌だからだ。


 しかし、本当に広い。上にあがるためのものが何一つ見えることなく、長い廊下を歩いている。


 本当に、出られるのかなあ……大丈夫なのかなあ……と、少し不安が湧いてきた。


 だがその不安は、突如また地面が揺れたことによって吹き飛んだ。


「うわっとと?!」

「大丈夫ですか、ラピス?」

「あっ、ありがとう」


 転けそうになったのを、ユグドラシルが受け止めてくれた。

 今の揺れはなんだろうか。もしや、どこかでまた仕掛けでも動いたのかな?と考えながら立ち直すも、またすぐに小さく揺れた。踏ん張ったため、ちょっとよろけただけで済んだ。


「ここ、どれだけ仕掛けがあるんだろう?」

「データが破損していなければ、記録されていた筈なのですが……申し訳ありません……」

「いやいや!ユグドラシルが悪い訳じゃないよ。居てくれるだけで助かってるから、ね?」


 1人で探索よりも、2人の方が、精神的にもまだマシだ。


「さ、進もうわっ?!」


 再度進もうとすると、今度は地震……と言うよりも、ドン!という音とともに、衝撃のような揺れが走った。天井から、パラパラと塵と埃が落ちる。


「何が……」

「ラピス、あれを」


 ユグドラシルが指さす方を照らすと、上りの階段が見えた。ただし、出口は壁のような扉のような、そんなもので塞がれている。


◇◇◇


 時は少し遡り、地上。

 ローズの指示で、タンザは『アーティファクト』を構えた。


 タンザはそこで、徐々に近付いてくる足音に気付く。


「……いつでも動けるね?」

「は、はい」

「おーけー。倒すより、生きて帰るのを優先してね?……来るよ」


 バタン!と勢いよく扉が開き、赤い軍服を着た数名の集団が突入した。少なくとも、黒か白の軍服である、グランティアの軍のものではないことは、タンザはすぐに理解した。


「何者だ!」

「こっちのセリフだよー?ここはグランティアの領内なんだけど。キミ達、どこのだーれ?」


 ローズは武器もアーティファクトも構える様子を見せず、ヘラヘラとしながら、赤い軍服の集団に問いかける。


「それともなに?答えられないのかなー?不法侵入なのー?」


 煽るように言うローズに、おそらくリーダー格の男はイラついたのだろう。帯刀していた剣を抜いた。


「こんのっ………クソチキン野郎め!!!総員突撃!!!」


「へー。じゃ、タンザくん。まずはこの場所から脱出してみよっかー!」

「えええ?!」


 

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ジャッジメント×ジャガーノート 偽禍津 @NiseMagatu

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