1:古代遺跡地下の出逢い
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「っ……う〜ん……いててて」
落ちた衝撃で少し気を失っていたらしい。不思議なことに大きな痛みや怪我は無く、多少打撲した程度で済んでいる。
『アーティファクト』は腰に差しているためか、手元にある。私も多少打撲が痛いものの、立ち上がることが出来る。
なら、と連絡を取ろうと水晶の魔道具を使おうとする。しかし、見当たらない。
確かあの時、連絡を入れようと手に持っていたはず。
と、なると、おそらく落下中に手放してしまったのだろう。
上を見上げてみれば、光が差している。でも、登って出られるような距離ではない。というか、そもそも登れるような高さでは無い。私、よく無事だったな……。
何かないかと周囲を見れば、淡く光るものが。何かと思って拾い上げると、水晶の魔道具だった。ただ、ヒビが入ってしまっている。
通信できるかな?と思って起動してみる。
「あ、あー……こちら、ラピスです。聞こえますか?」
『───よかっ─そっち───けそう──?』
ノイズが多いものの、なんとか意味だけは伝わる。
「動けそうか?うん、一応。でも、登れそうにはないから探索してみる」
『わかっ───動け──な────』
プツン、と通信は切れてしまった。
仕方ない。ここから出られる場所がないか探索してみることにしよう。
まずは暗いから、魔法で明かりを灯す。火の玉が近くに浮かび、周囲を照らす。光量はそこまで強くないけど、ないよりはマシだ。
どうやらここも遺跡の中らしく、石材のようなもので壁が作られているし、鉄に似たもので作られているであろう扉もある。
棚などはなく、ベンチやテーブルの残骸等がある。どちらかと言うと、休憩室に近い印象だ。
一応、水晶の魔道具は魔力への反応機能に関しては問題ないようで、私の魔法に反応してか淡く……ではなく、かなり強く光っている。
もしやと思って扉に近づけば、さらに反応は強くなる。
「……行ってみよう」
いつでも『アーティファクト』────この、剣の形をしたそれを抜けるように手をかけつつ、鍵のかかってない扉を開けた。
◇◇◇
「ラピス?ラピス!!……切れたか」
ラピスが地下に落ちた頃、タンザは切れた通信に不安を覚えていた。
急いでローズへと連絡入れたものの、あいた穴はかなり深い。助けに降りようにも、持っている縄ばしごでは明らかに届きそうもない。
「はいはーい、呼ばれて来た……って何この穴?!」
タンザはローズに、突然穴があいたこと、その穴にラピスが落ちてしまったこと、ラピスと一応連絡は取れたがノイズが酷く切れてしまったことを伝える。
ローズは話を聞いてから穴を覗き込んで、それから水晶の魔道具を見た。
「……なーるほどね。経年劣化とかだと思うけど、仕掛けの誤作動で穴があいた感じだねー」
「仕掛けなんですか?」
「うん。穴って言うより、床が全部抜け落ちたって感じだねー」
ほら、と言ってローズが指さしたのは、壁と床が触れてあったであろう位置。切り口は崩れたと言うにはあまりにも綺麗な状態だった。
「とりあえず、ラピスちゃんは無事そうだった?」
「一応は。向こうで出られそうなところ探すって言ってました」
「りょーかいりょーかい。なら、こっち側からも他にこう言う仕掛けとかないか探そ……ん?」
ローズは、タンザが探索していた部屋の、通路との扉の方を向く。
「……誰か来るよ。構えといて」
◆◆◆
その部屋はなんだか雰囲気が違うように感じられた。
あまり広くなく、壁こそ同じものの内装はあまりにもシンプルだった。
テーブルとイスがひとつずつある。それだけ。
「ここは……?ん?」
火の玉を動かして部屋を照らすと、人影があることに気づく。
驚いてよく見てみると、人影と言っても誰かいるという訳では無かった。部屋の隅に、人形のような人影が座っているのだ。
そっと寄って見てみる。
それは、くすみの青緑色をした長髪をしていた。毛先に行くほど、明るめの黄緑になっている。
真っ白なローブと黒紫色のマフラーとベルトをしており、マフラーの先はおよそ手のような形になっている。
閉じられた目といい、白い肌といい、まるで眠っているだけのように見えるくらい精巧だ。
傍にはパーツのような……円をおよそ等分したパーツが4つと、菱形の八面体の水晶のようなものが2つ落ちている。
「これは……なんだろう?ここを使っていた人の人形……だったのかな?」
とりあえず回収した方がいいかな?と思い、人形に触れた。
その瞬間、人形の目が開き、声がした。
『再起動───Legendia:N.o.06──Uggdracil』
「えっ、えっ?!な、何これ?!」
無機質な、男性とも女性とも取れないような機械音声。それは、人形から発せられていた。
『音声認証完了。マスター登録完了───』
人形が一度目を閉じると、そばに落ちていたパーツや水晶のようなものが浮かび上がり、人形自体も浮かび上がり、立ち上がった。
私はあとずさりつつ、アーティファクトの剣にてをかけた。
パーツたちは人形の周囲をひと回りすると、人形のそばに浮かんだ状態で静止する。人形は、再度目を開く。
そして、今度はは柔らかな青年の声色で、確かにその口から発声した。
「───こんにちは、マスター。僕は決戦兵器・
水晶の魔道具が一際強く光を放っていたことに、私は気づいていなかった。
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