こわれた、もの
虫十無
1
精神安定はどこに行ったんだろう。
昔の私は、何をしていたんだろう。
もう何も、わからない。
私がどこにいるのかだってよくわからない。何かで読んだ表現をつかうと、「本当の私はどこ?」
本当の私なんかいないのだけれど。
そう、本当の私はいなかった。いるならここに。でも、今も、これからも、いない。救いがないね。まあ、それがわかってからの方が、本当の自分探しをしたくなるものだったけれど。自分探し、おもしろい言葉だよね。自分はここにいる、そして、どこにもいない。牛は捕まえられない。
精神安定が崩れた根本原因はネットじゃない。でも、そのときの不安定な精神でネットやソシャゲをやるべきじゃなかった。違うね、その時選んだ内容がダメだったんだね。まあ、内容というか、なんというかだけど。
私は、もう、昔は何をして生きていたのか、思い出せない。多分本を読んでただけだけど。幸せだったのかもしれない、本を読んでいるだけで。その頃の自分が羨ましい。でも、あの本は読まなければよかったのかもしれない。あの本を一度読んだ時は難しくてわからなかったのだから、そこでやめておけばよかった。もう一回読もうと思ったせいで、私は、今、こうだ。こんなんだ。あなたもこちらへ来るかしら。来ちゃダメだけど、おいで。来るもんじゃない。おいでよ。幸福はここに。幸福はどこにも。幸福とは何か。幸福は幸福だ。幸福はコウフクだ? 幸福は降伏だ。自然に対して全面降伏することで、幸福を手に入れようとする。そこには、何もない。
自制が足りない、わかってる。わかっててもできない。そうだね、自制が足りない、そういうことだね。本当にわかってる? わかってないかも。ほらね。自制って何? なんだっけ? そんなもの存在しないかも。そうかもね。そうじゃないかな。それでいいんじゃない?
私の本質かもしれない、これは。もしかしたら、人の本性かもしれない。ああ、いやだ。そんなの、救いがない。当たり前か、神様はいない。神様が欲しい。神は死んだ。そこに神をもて。神様なんかいない。神様は人が捨てたんだ。信じよ、さすれば・・・・・・、さすれば、何?
なにもしたくない。こわいなあ。こわいという感覚はなくならないんだなあ。それが、一番、わるいことかな。うん、最悪だね。最悪でも笑顔になる、なれる。楽しいね。楽しいってなんだっけ?
くるってる、それがどうかしたの。そんなことより精神安定を。もっと、精神安定を。
狂っても何もない。私はここに。ここはどこ。私は誰。私は私。私はあなた。あなたは私。私も私。私もあなた。あなたも私。本当に?
それなら無になればいいのに、無にはならない。きえればむになる?
こわいことはもうたくさん。楽しいことはもっと欲しい。だから私はネットに希望を持ったかもしれない。だから? なんでだからになるの? 私は、あなたは、何を考えていたの? あなたは、私は、何故希望を持ったの? どうして? あなたは、私は、いつもそうね。いつもと言えるほどの判断材料を私が持っているかは知らないけれど。わからないけれど。
精神安定なんて、どこにもなかった、最初から。そうかもしれない。そのことに気づいたのは、結局、崩れてから。崩れるものなんてどこにもなかったかもしれないけれど。本当に崩れたのかもわからないけれど。今もここに崩れずにある可能性? 流石にないと思う。本当に?
でも、だから、精神安定を求めて、私は何をする。そこには精神安定などないと知っていても、私は、ネットをする。本当に知っているのかな? だから、ネット依存と言われるんだね。わかったよ、理解も認識もしていないけれど。いや、できていないのかもしれない。できないのかも。そもそもわかっていないのかもしれないし。わかったという言葉を便利に使っているだけで。言葉は便利に使うものだけど。言葉は最大公約数だけど。この場合は最大公約数がない可能性だってあるね。
認識を、私だけがしている可能性は、どれくらい? 他の人の頭の中なんか覗くことはできないから、生きているのは、私だけの可能性だってある。まあ、生きていることの定義にもよるかもしれないけれど。そう考えると何もわからないね。
私が見ているこの世界、観測者は何人いるか。私だけの可能性はないか。そもそも観測者が他にいても同じ世界を見ているとは限らない。こわいこと。本当にこわい? こわいってなんだっけ。こわいことなんて何もない。全てがこわくて、全てがこわくない。こわいもこわくないも同じこと。こわいと思うからこわいだけ、こわくないと信じればこわくない。信じられる? 神も信じられないあなたに。信じてる? 本当に?
人の欲望なんて果てしないよね。まあ、ヒトだけでない欲求をのぞいても、ほら、あんなに。私も多分そうなんだ。最悪なことに。
全てを支配しようとする、これも一つ。そして、支配する。でも、支配した気になっただけ。何も支配できてなんかいない。もうわかんなさすぎておもしろいなあ。おもしろいか。そんな感覚もあったね。忘れてた。今まで感じてこなかった可能性もあるね。私のことなんて、私にはわからない。感覚はある、多分。自分のことがわからないことも気付いたばっかり。気付かなければ、まだマシだったのに。
かみさま、カミサマ、カミ様、神様。
神様、私に、『人』生を。じんせいを。もっと人生を。もっと、もっと。
無理なら、無を。無にする勇気を。
神がおわしますならば・・・・・・、
ネットに逃げる? ネットは逃げられるところなの? やってる私にもわからないの。教えて? 誰に聞く。ネットに聞く。依存って? ネットで調べてもわかりやすくなんて出てこない。わかりにくくしか出てこない。知ってた。でも、とりあえず調べる。わからない。まあ、いいか。
ネットってなんだっけ。わからない。私の感覚を信じるのならば、実在するのはパソコンやスマホだけ。ネットって概念かな。かもね。少なくとも概念に近いところはあるよね。本当に存在するのかな。存在可能性は私たちより低くない? どうだろうね。あるかないかの二択なら、存在可能性に高低なんてない。
神様が、教えてくれるか。カミサマ、神様。神様ってそういう存在だっただろうか。そんなに都合のいいものだろうか。都合良く作られたものではあったかもしれない。今の、今を生きている私たちにはわからないこと。わからなくてもいいこと。わかる必要のないこと。
わからないのはこわいこと。本当にそう? わからなくてもいいじゃない。わかるって実は傲慢かもしれない。驕りかも。まあそれでもいいけど。それでもいいかもしれないけど。ほら、わかる必要のないことかもしれないのだし。わかった方がこわいかもしれないのだし。
おいで、こわいことなんか、何もない。こわいことしかない。おいで。あなたにはどちらに感じられるでしょうね。私にはどちらに感じられたのでしょうね。私にわかると思って? あなたならわかるのかもしれないけれど。
柳の葉がゆれる。しだれ柳と言うのだろうか。柳は陰のかたちだなあ。私も陰の側だから。私の外にも世界がある。忘れてたな。半分くらい。それだけ? もっと忘れてたかも。本当にないのかも。そんな、外の世界なんて。今見ている世界だって私の外にある保証なんか何もない。私の心象風景のようなものかもしれない。さらさら、さらさらさら。
私も、中で何かが揺れてる。回ってるのかもしれない。なんだろう、これは。私には区別がつかない、つけられない。倒れないから回ってるのかもなあ。揺れてるだけでも倒れないかもなあ。くるくる、くるくるくる。
安定か、安寧か。回っていれば、回り続けていれば、安定。揺れていれば、ゆったりと揺れていれば、安寧。ゆらゆら、ゆらゆらゆら。
全て無くなる、それもまた、安定だ。安寧かもしれない、そうだね。ほら、そうでしょう? 存在など誰にも保証されない。あなたはあなたの存在を証明できる? そう考えると不在証明っておもしろい言葉だね。在も、不在も、証明できない。できる? 無理だと思う。諦めたっていいじゃない。
こりゃこなた狂気めさったかは仮名手本忠臣蔵。見たことはないけど。でも、狂気ってなんだろう。狂うってなんだろう。狂えたら楽かもしれない。漫画の中のあの子みたいに。死ぬこともそうかな。死ぬ勇気? 私は安定しちゃったから、多分。そんなものはないよ、多分。本当に? ホントウに?
本当って何? 本当の反対は嘘? その違い、完全にわかる? わからない。完全なんてものはないかも、あるかも。知らない。私は何も知らない。私は何も見ない。私には何ももう伝わらない。安寧だからね。私には何も聞こえない。あなたはどう?
あなたって誰? あなたは本当に存在するの? この世界に私一人であってもおかしくない。私一人だって、存在しているかわからない。それなのに、私に認識されているあなたが、存在しなくったって、おかしくないでしょう? あなたは多分世間では存在を保証されてるけれど、その世間が私の内にある可能性だって、なんなら、全てが幻想だって。まあ、それは私も同じ。あなたは私を認識している、私は認識されている。あなたの中の私の存在証明は私にもできない。
私って誰? 私が存在しない可能性だって高いでしょう。確率はあるかないかの五十パーセント。私が私である確率はあるの中の数パーセント。あら、そんなにないかもね。それなら、私はあなたの中のナニカかもしれない。そうじゃなくて、あなたと私は同じものかもしれない。こんな考え方する自分は気持ち悪い? でも、あなたと私は同じものではないと証明できないでしょう?
ほら、入り口はここに。真っ白だ。出口はない?
こわれた、もの 虫十無 @musitomu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます