文字通り人類は

いちのさつき

ある日、空から落ちてきた透明な爆弾によって、人類は静かに終焉をむかえた。

 ある日、空から落ちてきた透明な爆弾によって、人類は静かに終焉をむかえた。


人の目では見えない爆弾だった。


宇宙機関に存在する機器、人工衛星であろうと、捉えることが出来なかった。




 透明な爆弾は地表に付く前に空中分解した。中に詰め込まれていた成分が霧と化し、風に流されて、世界各地へと飛んでいく。宇宙ステーションにも飛んでいく。


爆弾の中に含まれている成分の粒子は地球全体に蔓延していく。


呼吸をして。皮膚に付着して。水と一緒に飲んで。様々な方法でその粒子は人類の身体の中に入っていく。


全人類は眠りに入った。すべてがその粒子を取り込んだと知っているかのように、同じタイミングだった。


目覚めることは二度とない。どんな刺激を与えようと、起き上がることがない。


だから生きるために必要な行動が取れない。穏やかに、静かに、次の段階に移行していく。


夢の世界から死の世界へ。例外なんてものはなかった。全員が永遠の眠りに行ってしまった。




 こうして文字通り、空から落ちてきた透明な爆弾によって、人類は静かに終焉をむかえた。


誰かが作った兵器なのか。あるいは宇宙から飛来したものなのか。それ以外か。


いや。そもそも透明な爆弾によるものだと知らない。証拠すらないのだ。


神のみぞ知るとはこのことだろう。

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