能力無効でもてなす魔秘境の冒険者宿・怪楽苑 新米仲居ヒナタの日記、私に世界を救う力はないので世界を救える冒険者様たちを全力で癒します!

カズサノスケ

第1話

「お嬢ちゃん、予約していないんだけど泊まれるかな?」


「はい! 今は予約で満席ですが恐らくじきにキャンセルだらけになるので大丈夫だと思いますよ」


「えっ……。そんな話を聞いたら泊まるの怖くなっちゃうな」


「あっ! ちゃんとご説明した方がよさそうですね。ここは魔秘境と呼ばれるくらいですからとんでもない強さの魔物が出るんです。並の冒険者ではとても辿り着けないので結果的にキャンセル扱いになってしまうケースが多くて」


「なるほど、道理で。危うく死ぬところだった」


 カーシュと名乗ったお客様のお姿。それは見るも痛ましいくらいに傷ついておりました。鎧に血まみれの鱗がこびりついておりましたのできっとドラゴン系と戦ったのは間違いなさそうです。しかも、相手したのは1匹や2匹どころではないでしょう。


「ここに辿り着く程のカーシュ様には必要ないご説明かもしれませぬが。魔物の強さに応じてEランクからAランクまで等級付がございます。この辺りはAランクが雑魚の様に徘徊している上、滅多に現れないので通常の等級付に入っていない最強のSランクも割と出てしまいます。それがAランクを従えて群れを成している場合、お客様が辿り着くのは無理かと思われます」


「そうか、そうか。予約は取れるのに中々泊まれない宿との不可思議な評判はそういう事だったか! ガハハッ。では、早速お邪魔させてもらうよ」


「あっ、そのままでは駄目です。カーシュ様!」


 叫んだ時には手遅れでした……。門を踏み越えた途端、カーシュ様は全身の傷口から血が吹き出しその場にうずくまってしまわれました。


「ぐぉーーーー! 痛ぇ!!」


「あぁぁぁ……。私の説明が遅れてしまったせいで申し訳ございません。門から先はいかなる強者もただの人になってしまうのです。見たところ鋼の肉体となる様な命刻の印をお持ちだから先程まではダメージに耐えられたと思いますが、今は極々普通の肉体ですので」


 私が持つ命刻の印『持ち腐れ』はどんな印も封じて普通の凡人化させてしまう。女将のマードラ様が張った結界でその効果は宿の門から内のみで発動する様になっておりました。ですから、傷を癒やす前に門をくぐってしまっては大変な事になると先に申し上げていれば……。


「マードラ様! マードラ様!! お客様が大変にございます。一刻も早く治癒魔法を」


「あいよ! でも、丁度今、イカの皮むきが珍しく絶好調なんだわね。あと10杯終わってからじゃダメかい?」


「あまりの激痛で死んでしまうかもしれません……」


「そうかい。じゃあ、今日の夕食は昨日の残り物でお出しするしかないわね。まあいいっか、お客様はその1人になりそうだし。自業自得だし」


「マードラ様! 折角のところを中断させられて機嫌が悪くなったのはわかりますが早くーーーーっ!!」


 よく見ると傷口が腐り始めております。猛毒攻撃を受けていたのでしょうが、印の効果で抑え込んでいたのだと思われます。カーシュ様は口から泡を吹いて全身をピクピクと震わせていました。


「天源の神々よ。我の求めに応じ傷付きし者に命の水を注ぎ給え! リザレクション!!」


「えっ……。リザレクション? 治癒じゃなくて蘇生?」


「うん。間一髪で死んだね。イカ墨で汚れた手を洗ってたからしょーがないか。てへっ!」


「マードラ様っ!! 引退する前は大賢者だったからって! 奇蹟は日常が口癖だからって! 酷いじゃないですかっ!?」


「ごめん、ごめん。それにしても死んだ瞬間、0.1秒も空けずに蘇生したから死んだ事になってないかもしれないよ。あたしゃ、つくづく天才だわね」


「マードラ様……」


 性格、素行、気になる事を数え上げれば切りはありませんがマードラ様の魔法の腕が特上の天才級なのは確かだと思われ。宿を包む結界は、本来ならばパーティ内でのみ有効になる『持ち腐れ』の効果範囲を拡げております。更に敷地内に一切魔物を寄せ付けません。ある時、Sランクの魔物が突進してきた事があったのですが瞬時に溶けてしまったのを見た覚えがあります。そして、本当にすごいのは全ての命刻の印を無効にしてしまう『持ち腐れ』の効果を無視して自身の印を発動させる方法を思いついてしまった事かもしれません。



 それは、私がここに来てから数日経った時の事。


「よし、出来た! ヒナタ、ちょっと見てな」


 普段は基本的に寝ていてたまに起きるという生活を繰り返していたマードラ様。それが珍しく庭先に立ち何やら魔法の詠唱らしき物を繰り返していました。ただ、私がいるので魔法が発動する事はありませんでした。ところが、暫くすると少しずつ杖の先から発動の現れである発光が起きる様になったのです。そして、ついには特大の火炎を打ち出し宿の近くにある緑の生い茂った山を焼山に変えました……。


「マードラ様、どうやったので?」


「宿に張った結界にヒナタの命刻の印を結び付けただろ。結界単位に絞れるって事は、結界の中に更に結界を張ってあたいの身体を覆ったらその中にまでは効果が及ばないんじゃないか?と思ってみたのさ。いけた!いけた!」


「はあ、そういうものですか~~」


 説明されてもよく意味がわからなかったけど、こうして魔法を発動させているのだからマードラ様の考えは正しかったのでしょう。



 そんなわけで、瞬時に自身に結果を張ったマードラ様の魔法によりカーシュ様の傷は瞬く間に塞がり意識を取り戻していました。


「うぅぅ……。今、マードラと聞こえたが。賢帝よ、そこにいるのか?」


「おや? なんだい。真っ先にその通り名を出すとはあたいを知っている男かいな?」


「賢帝って……。冒険者養成学院の教科書に出てきた様な……」


「ああ、そう言えば見覚えあったわ。世間では不死身の傭兵王などと大層な呼ばれ方をしているカーシュか」


「えぇぇぇ!? お名前を聞いた瞬間に気付かなかった……。あの一介の傭兵から身を起こしてドルガン王国を興したと教科書に載っていた人」


「学院の教科書に出てくる冒険者は全てロクでもないと思うがね、あたい自ら言うんだから間違いない。で、あたいに言わせればこいつはどさくさの変態王カーシュだ。ほらっ」


 かがんだ状態のマードラ様が指差したのは自身のお尻の辺り。そこには激しくまさぐっているいかつい手が……。


「やっぱり、マードラだ。キャー!とか悲鳴を上げる様な女じゃないからな」


「まあ、揉まれて気持ちいのは事実だから気が済むまで揉ませてやればいいのさ。ただ、あたいだって悲鳴くらいあげるぜ。こぉの、ドスケベ変態野郎が!!」


「痛ぇ! それは怒声だろ! 悲鳴をあげたのはこっちじゃねぇか!?」


 マードラ様は杖を振り上げると思いっきりカーシュ様の頭に打ちつけたのです。


「ここは冒険者に最高の癒しをあたえる宿と聞いてるぞ! それがこの仕打ちか!?」


「あんた、ほんとにバカだね。気付かないのかい?」


「何に、だ?」


「まあ、じきに気付くだろうよ。取り敢えず、とっとと温泉にでも入んな。あんた、魔物と戦ってきたろ? 返り血で生臭くて仕方ないのさ。ヒナタ! 予約もしないで訪ねてくる様な不躾な奴の部屋の支度を頼んだよ」


「はい! と言うか、いつ予想に反してお客様が辿り着いてもいい様に全てのお部屋が準備済みです!」


「そうかい? 基本的にどうせ辿り着かないんだから、辺りで魔物の断末魔が聞こえ始めてからでいいって教えたはずだがね。まあ、それがヒナタだったか」



 怪楽苑ではお客様を部屋より先に温泉へご案内する場合がほとんどです。カーシュ様の様に返り血でびちょびちょの方にうろつかれると宿が汚れる、それを嫌ってマードラ様はまず湯浴みのご案内をするのです。


「カーシュ様、脱衣所に湯上りの御召し物を用意致しましたので御使い下さいませ」


「ありがとよ、ヒナタちゃん。ところで、俺にはいまいちわからねぇんだが、どうしてこの宿が冒険者最大の癒し処って呼ばれているんだろうな?」


「何かございましたか?」


「見たところ建物は少々ボロ宿気味。それにこの温泉、俺には熱くて1分間も浸かっていられないぜ」


「熱い、のでございますか?」


「ああ、こんなの魔王直属の配下である魔将の1人から火属性魔法の直撃を食らって以来だ」


「左様でございますか。それはよかったですね!」


「はぁ? 熱すぎるって言っただろ。ヒナタちゃん、マードラみたいな物言いを見習うといい男に巡り合えないぜ?

 」


「マードラ女将の素晴らしさ。じきにわかると思いますよ」



 お湯上りのカーシュ様がお部屋についたところで夕食をお運び致しました。普段は私が作るのですが、今宵はマードラ女将が腕によりをかけてお作りしたものです。


「ヒナタちゃん、やっぱりいまいちわからねぇんだよ。この魚の刺身、骨抜いてないよな? 刺身を食って旨い不味いより先に痛いって感想を持ったのは初めてだぜ」


「左様ですか。それはよかったですね!」


「はぁ? この宿は一体何がどうなっているんだ」



 翌朝、カーシュ様に頼まれた時刻に起こしに参りました。マードラ様も一緒でございます。


「ヒナタ、準備は出来ているかい?」


「はい! お申し付けの通り、獣肉と血をカーシュ様の部屋にたっぷり撒いておきました!」


「あたいが料理に仕込んだ、いけない葉っぱの乾燥粉末が効いていたから少し物音立てたくらいじゃ起きなかったろ?」


「ええ。でも、起こす為に、起きない様に注意しながら準備するって何かおかしい様な……」


「ヒナタ! 私と付き合う時にこれだけは忘れちゃならんってのを忘れていないだろうね?」


「はっ! いえ、大丈夫です。マーベラ様の言う事、やる事についていちいち考えるな。考えると気が狂ってしまう」


「そうそう。じゃあ、カーシュにとびっきりさわやかな朝をプレゼントするよ!」


 マードラ様が詠唱を始めるとカーシュ様の部屋がガタガタと震え始めました。そして、マードラ様が右手に持った杖を振り下ろすのに合わせて部屋が上空に飛び上がりました。放物線を描いて宿の敷地の外に向かって落ちて行きます。


「マードラ様、カーシュ様は大丈夫でしょうか?」


「結界の外に出たんだからヒナタの印の効果は受けないよ」


「あっ! そうでしたね。でも……」


 マードラ様の顔を覗き込むと、とにかく見た事もない様な笑みを浮かべていました。いや、笑みでは収まらず次第にニヤつき始め拳で地面を叩きながら大声を上げて笑っていました。


 バゴォォォーーーーン!と大きな音が響いたのを合図にマードラ様は私の手をつかみ、魔法の力で浮かび上がりました。見えたのはバラバラに散った部屋の残骸、その中心で寝ぼけた様子で眼をこすっているカーシュ様の姿がありました。そして、Aランクであるキメラ達がそこに群がって来る様子が見えました。いち早く到達した数体が辺りに散乱した獣肉をバリバリと貪っています。その歯牙はついにカーシュ様に向けられました。


「おかしいな、マードラの宿で寝ていたはずが何でキメラに囲まれてんだ!? まあ、朝の体操には丁度いい!! こい、ブレイブアックス」


 カーシュ様が叫ぶと巨木と見まがうほどの戦斧が飛んできてその手に握られました。無造作に一振り、それだけで今にも噛みつこうとしていたキメラ5体ほどが真っ二つに。しかし、その一撃を逃れた物の牙がカーシュ様の左脚を捉えます。


「あん? キメラにお目覚めのキスをされても嬉しくないもんだな」


 自身の左脚に食らいつくキメラを一瞥すると、その脚を大きく前方へ振り上げキメラを吊るし上げた状態にしました。そして、首筋を目掛けて斧を一閃。


「アハハハっ! 久しぶりに見たが相変わらず酷い戦い方だ。ヤツの命刻の印『痛いの痛いの飛んでいけ』のお陰で傷を受けても痛みは感じないし、損傷も9割カットだからあんな酷い有様になる」


 マードラ様の高笑いに気付いたカーシュ様がこちらを睨んでいます。ものすごく睨んでいるせいか、その姿に恐怖を感じたキメラたちがギャンギャン鳴き始め後ずさりするほどです。


「おかしいと思ったらテメーか! いつぞやの冒険で朝になったらドラゴンと添い寝させられた時と手口が一緒じゃねぇか」


「アッハハッ! どうだいあたいのサービスは? 懐かしくて涙が出るだろ」


「お前に関わるといつだって出るのは反吐と相場が決まってるんだよ。こいつらを始末したら次はお前だ、今度こそ覚悟しろ!」


「いいね、いいね、あたいがたっぷりお相手してやるよ!」


 最初にお会いした時、ちょっと変わった方だなと思った女将のマードラ様。此度、昔馴染みらしいカーシュ様がいらっしゃった事でちょっとどころではないのだと考え直しました。断言できます、マードラ様は変人も極まれば清々しさすら感じさせるド変人です。


 さて、カーシュ様は当宿の寝間着である東方から伝わった浴衣を召しておられたのですが、そんな恰好で戦えば当然ながらはだけてしまいます……。


「ヒャッヒャッヒャッ! 朝から全裸で巨大な斧を振り回す、さすがは変態王カーシュ様だねぇ」


「うるせぇ! 気が散る、黙れ」


「あら? あんたに散る様な繊細な気なんてあったかね? それより、股の辺りで縮こまっている繊細なそれは何だい? ファッハッハッ!」


「起きたては仕方ねぇんだよ!」


「餌と間違われてキメラに食いちぎられない様に注意しな。アッハッハッ!」


 怪楽苑で働く様になって特別な出来事があったら付け続けている日記ですが、今日ほど「もう辞めようか……」と迷った日はありません。それほどお2人の会話は酷いもので、恥ずかしくてとても全ての言葉を書き記す事は出来ませんでした。



 しばらく戦いの様子を見守っていたマードラ様でしたが、急にあくびをし始め「先に帰ろうか」と言ってきました。宿の縁側に座り、紅茶を淹れてカップを口に運ぼうとした瞬間にガクンっと崩れて寝てしまわれました。何が起きてもそんな事ってあるんだろうか?などとこの人の前で思ってはいけません。あるんです。


 門の方から足音が聞こえて来ました。きっとカーシュ様がお戻りになられたのでしょう。


「おい! マードラ! ぐっ……、痛ぇ」


「あっ! そうだ。あれだけ傷を受けて印が無効になってしまったら……」


「ったく。学習能力のない脳筋だわね」


 よだれを垂らして寝ていたはずのマードラ様でしたが急に目を覚ましてぼやくと、次の瞬間には目の前から消えていました。慌てて門の前へ向かうと横たわるカーシュ様に治癒魔法をかけるマードラ様の姿がありました。


「イタタッ」


「不死身の傭兵王がそれくらいの傷でわめくんじゃないよ」


「痛いものは痛いだろ……。あれ? そう言えば俺は何年振りに痛いと思ったのだろう」


「ようやく気付いたか。ホント、これだからバカは嫌だ嫌だ」


「カーシュ様。宿のおもてなし、その趣向をご説明差し上げますね!」



 昨日、カーシュ様を温泉へご案内する直前の事。マードラ様は私の耳元で「あいつを痛い目に遭わせる」とだけ告げられました。最初は何か因縁でもあるのかと思ったのですがどうやら違った様です。マードラ様ご自身もそうらしいのですが、冒険者学院の教科書に載ってしまうほどの力と実績のある者は、そもそもただの人間である事を感じられなく瞬間があるそうです。これは私の様な凡人にはとても理解出来ませんが、人間離れし過ぎるとまるで化け物にでもなったかの様な恐怖を覚えるそうなのです。


「こいつはある魔法使いの話だよ、あたいじゃないからね。ある町が魔物の群れに襲われて住む者が皆恐怖に包まれた。その時、偶然宿に泊まっていた魔法使いが飛び出してそれを一瞬で消し飛ばしてやった。そして、町に戻った時に見たのはさっきまで魔物の群れを見ていた様な人々の目だった。それ以来、その魔法使いは人助けをしなくなった。な~~んて話もあるわいね」


 マードラ様は仰いました。だから、強大な力を持つ冒険者には一時的にその力を忘れてただの人間に戻れる一時が最大の癒しになる、のだと。



「マードラ、てめー。いい女になったじゃねぇか」


「何言ってるのさ? あたいはずっといい女さ」


 マードラ様がいい女かどうかわかりません。でも、余裕のある女将だとは思います。自分がどんなに切羽詰まっていてもたゆまない余裕のあるマードラ様の仕草を見ればどこか安心する。湧き出る余裕で安らぎを注ぎ込んでくれる人なのです。冒険者だった頃、きっとパーティ内でもそんなポジションにあったのではないでしょうか?これは普通に聞いても教えてくれそうもないので、いつか方法を考えて聞いてみよう。


「俺は痛みを知らなければならない」


「噂は聞いてるよ。近く、ドルガン王国は諸侯連合軍の先鋒として魔王軍とぶつかるんだろ?」


「世間に関心がなくて戦いから身を引いた割にはちゃんと詳しいじゃねぇか。先鋒と言えば聞こえはいいが時間稼ぎとさほど変わらん。新興の小国は歴史と伝統ある大国が万全な準備を整えたいとのご意向に逆らえないのさ」


「へぇ、一端に王様みたいな物言いをする様になったじゃないの」


「俺自身は痛みを感じないが俺を信じて付き従う兵達は違う。そして、その者達が感じた痛みは違う形でその家族にも伝わる……。痛みの連鎖、危うくそれを忘れたまま戦に臨むところだった」


「情勢はそんなに悪いのかい?」


「悪い、なんて言葉では足りない程にな」


「そうかい。ヒナタ! たった今から女将代行だ。あたしゃちょっと用事を思い出したんで出かけてくるよ。そろそろウチ流のおもてなしは出来るはずだわいね?」


「えっ? はい!頑張ります!! でも、どちらへ?」


「宿の女将が野暮な質問なんてするもんじゃないよ。昔馴染みが頭痛を起こしたらしいからちょっと治癒しに行くだけさ。あと、ウチの仕事は頑張ってしちゃダメだよ。基本は手を抜いて必要な時だけ手を突っ込む、まるでトレイが詰まった時の様に!」


「そっ、そうでした! 適当にやっときます」


「それそれ、いい返事だ。それなら安心して任せられる」



 マードラ様が旅立ってから少し経った頃。珍しく宿まで辿り着いたお客様から傭兵として参戦した戦いのお話を聞かせて頂きました。ドルガン王国に雇われたそうですが、何と魔王軍を相手に奇蹟の逆転勝利を収めたそうなのです。「戦いに参加して笑ったのは初めてだ」との感想が印象的でございました。それについて詳しくお話をなされようとしたところで失礼ながら私は遠慮させて頂きました。そして、夜空に一際明るく輝く星を眺めながらこう思ったのです。


「そのお話を本人から初めて聞いて笑って差し上げるのがヒナタのおもてなしです。それでいいですよね? マードラ様!」

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