『梅しごと』、それは危険と隣り合わせの仕事

こんにちは&こんばんは。

田舎暮らし初心者の小烏です。


 『梅しごと』ここ数年よく聞きますよね。

梅雨前後(今年は梅雨がほぼなかったですが)、丁寧な暮らしをしてる皆さんがこぞってなさる『梅しごと』。

うちもね、やるんですよ『梅しごと』。

丁寧に暮らしてないけど、梅の木があるもんですから。


 昔は家の下の斜面にたくさん植えていたそうですがだんだんと減り、小烏が嫁にきた頃は4本ほどになっていました。

それからも病気になったり台風で倒れたりと不幸が続き、大きな実をつける梅の木と普通サイズの梅をたくさん実らせる木の二本が残るのみとなりました。

どちらも日本画に描かれるような苔むした古木です。

さすがに古木だけになかなか上等な梅の実をつけてくれていましたが、大きく実をつけるほうがついに去年根元から折れて天国に転生してしまいました。

今年は残る普通サイズの実で『梅しごと』です。


 まずは梅の収穫。

茶の木も傾斜地に植えてありましたが、梅の木はもっと傾斜地にあります。しかも梅の木の下には半分埋もれた沼。梅雨前のこの時期は水が少ないのでズブズブハマることはありませんが、絶対そこには落ちたくない! 

そして、梅の実もそこへは落としたくない!


 どうするか。

農家の得意技、必殺ゴザ敷き作戦です。

梅の木の根元から湿地状態の沼にかけてゴザを広げます。

義母の計画では落とした梅の実は全てそのゴザに留まる予定です。が、残念ながらここは傾斜地。どう考えてもゴザから転がり出るのです。でも義母も譲りません。毎年ゴザを広げます。たまに義母の希望をかなえてくれる梅の実もいるので、今年も五枚敷くことになりました。


 梅の木の根元にゴザを広げたら、収穫開始!

まず長靴、手袋、帽子、首のタオル。この辺りは農家の正装と言えるでしょう。これに小さなバケツを片手に引っ掻けて準備万端です。

あ、あと脚立も持って行きましょう。


 まだ若い青梅なのでツツイたくらいでは落ちません。実に手を伸ばしてもぎ取るのです

ぷちっと、もぎ取る!これはある意味収穫の醍醐味です。

意味不明ながら、謎のやったぜ!感があります。


 さぁ、もぎ取っていきましょう。

まずは足元確認。立ち位置の確保から。

つぎに上空を観察。あ、帽子が邪魔ですね。ちょっと外しておきますか。

手の届く範囲の青いコロンとした可愛らしい青梅を、無情にもプチプチもぎ取って行きます。

ほほほ、ワタクシの勝ちよ!というあの謎の達成感を味わいつつ作業は進みます。


 「おかーさん、こっちにもまだ残っとるが。」

義母の長年の農家としての「眼」は、取り忘れた青梅を見逃しません。

足の悪い義母は梅の木の根元で総監督です。

手にした棒で、青梅を差します。


 手の届く範囲が終わったら脚立を持って来て木の根元、斜面に立てます。

恐る恐る脚立に上り、枝を頼りに手を伸ばします。

それでも届かないところは、義母の出番です。長い竹竿でバンバン枝を叩くと、ポテンポテンと残っていた梅の実と巻き添えを食った枝葉が落ちてきます。

敷いているゴザの上をコロコロ転がって結局草地に沈みます。

こちらは最初から草地に目を向けていて落ちた先を探すのです。

枝からの転落、脚立からの落下、沼への沈み込み事故。オールゼロで無事生還しなければいけないのです。


 さて、今年は全部で七キロほど採れました。


 タライに水を張り、ゴロンゴロンと青梅をタライに移します。ざっと汚れやら、不用な枝葉を捨てて。さてここからまた危険な仕事です。

竹串で梅の実のヘタをハズしていくのです。

なぜ爪楊枝でないのか?

それは爪楊枝では直ぐに折れるから。梅の実のヘタはそう簡単にはハズレてくれません。しっかりした竹串で、自らの手を刺さぬよう、しかしヘタはキッチリ取っていくのです。


 七キロの梅。

けっこうな量です。


 外の水道脇の離れの陰で、義母と話をしつつヘタ取りをするのですが、だんだん日陰は移動してふと気づくと直射日光に晒されています。

熱中症の危険が迫ってきました。

日陰に七キロ+タライの水を運ぶのか、このまま続行するのかの判断を下さなくてはいけません。


 義母にお伺いをたてます。

「お義母さん、日向になって暑くなってきましたね。

日陰に移動しますか?」

しかし判断は無情にも

「重いから、まぁ、このままやってしまおうか。」


 ここからは日光との戦いです。

帽子を被っていても暑いものは暑いのでだんだんと手元が雑になっていきます。

「これは梅干しのほうに回そう。」

ヘタの一部が残った梅を見て、義母が言います。『ならもう、ヘタは取らなくてもいいのではないか?』という言葉を飲み込みつつ

「はい。」と答える小烏なのでした。


 午前中に収穫。

午後からヘタ取りと選別をして、使い途別に梅の実をザルに上げ終わったのは夕食前のことでした。


その翌日、梅の実の大部分は冷凍され、梅の甘露煮、梅シロップ、梅酒、塩漬けにされ今年の「梅仕事」は終わりを告げたのでした。


近況ノートに写真があります

https://kakuyomu.jp/users/9875hh564/news/16817139556317006085#comment-16817139556319950267



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