第1.5話 感情色

昔から不思議なものが見えていた。物心ついた時からずっと。

人肌に触れた時、うっすらと色が見えた。最初はただそれだけだった。


──綺麗な色。


その色がはっきりと見えるようになってから、初めて見た色がとても綺麗だったことを覚えてる。

最初に見た人は、誰だったか……幼なじみの子だったと思う。


まだ、小学3年生ぐらいの俺にとっては、その青い色が美しいものと勘違いをしていた。


本当はそんなもの綺麗でも何でもないただの薄ら汚い感情だったのに。


そんなことも知らずにただのほほんとその色を見ている自分のことが大嫌いだった。


それが感情色だということに気づいたのは、それから一年後くらいだった。


──色が変わった……?


きっかけは、友達の色が徐々に変化していったことだった。

さっきまで暖色系の色だったものが、寒色系の色に変わっていった。

当時は、その変化への驚きで声も出なかった。

どうして、色が変わったのか全くわからなかった。


……その日から見える色に対しての考え方を変えた。


日が経つにつれて、色に対する理解が深まっていった。相手の感情の変化で色が変わることに気がついたのはそう遅くはなかった。


人の持っている感情……喜び、悲しみ、怒り、憎悪、嫉妬、厭悪、など様々なものが色として表される。

いつしか俺にとってその色を見ることは苦痛にすらなっていた。だからこそ、関わる人間も極力少なくなった。

……それなのに……。


──先輩のことがずっと好きでした。


水萌に告白されたその日、彼女の肌に触れて実感した。

知らない色。だけどどこか懐かしい色。不思議とその色に見入ってしまう。


彼女が涙を流した時、一瞬だけ胸があつくなった気がした。だけどその時の感情をなんというのかわからない。

家に帰るまでの道でそれを考えたが、やっぱりわからない。


……恋ってなんなのか全く理解できない。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

後輩の感情色が恋色だった たこすけ @kotapi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ