作品のモチーフと旅行と日本酒と

 旅行から帰って来て若干の倦怠感を伴う。

 まるで遠足が楽しみにし過ぎた小学生が風邪を押して無理して登校したようだ。

 いい歳してお恥ずかしい。

 いや、まだまだ若い気持ちであちこち歩き回っては、四六時中食べて酒を飲んでいるのだから当然かも知れない。ある意味、いい歳したからこその老いとも言える。


 アニメ映画では実際の街を舞台に描いたものが散見される。

 私も同様で、別にそこで二匹目のどじょうを狙っている訳では無い。

 しかし作品に説得力を持たせるという意味では、実際の街にキャラ達を据えてそこの歴史や風土を描く方が自分が書いてて楽しくもある。こうして取材と称した旅行にも行ける訳だし。



『神のまにまに』は処女作でもあるので、気合十分であった。

https://kakuyomu.jp/works/16816927861950427178

 京都市は左京区にある貴船神社をベースに日ユ同祖論の都市伝説を交えてというものだが、これはもうそのまんま主人公も「貴船」姓だし、パロディやモチーフと呼ぶには余りにも拝借したものが多すぎる。アブない作品だ。

 キンシ正宗さんがわざわざ聖地周辺だけに卸している日本酒「貴船」ラベルが飲めるのは当地だけ。聖地バイアスも手伝って、川床で昼から「貴船」を飲むのが良い。



『あの娘に「すき」と言えないワケで』は、四本目の長編。

https://kakuyomu.jp/works/16816700428502371673

 第28回電撃大賞さんで三次選考を通過したせいか、特に愛おしい作品である。

 群馬県みどり市東町を舞台に、将来ダムに沈む架空の「みどりさわ村」で生まれた少年と実家の土蔵に居た座敷童の女の子を中心に、恋の話を描いたロマンティックコメディー……このロマンティックコメディーっていうのが80年代過ぎてダメだった。

 今の若い子はメグ・ライアンとか知らんかな~。

 まぁ選考の編集さんには少しだけ刺さったのだから良しとするよ。

 実在する草木ダムを展望台からぼんやりと眺めるのが大好き。贅沢な時間だ。

 ダムは良い。とにかくダムは強い。

 ダムという語感も良いし、ダムの存在感、機能性、迫力、全てが良い。

 みどり市の近藤酒造さんの銘酒「赤城山」を買って帰る。



 そして今回は連載中の『越の翠華 ~僕と古代出雲大戦』の世界を楽しもうと新潟県は糸魚川市にやってきた。

https://kakuyomu.jp/works/16817139555314461456

 出雲の大国主命と結婚した高志の国の女王・奴奈川姫。

 その息子は諏訪の建御名方命だという。

 作品自体は日本神話をベースにしたよくある過去転移ものだが、主人公の家のご近所にある「諏訪の名を冠した神社」というのは、東京都荒川区、JR西日暮里駅からほど近い、丘の上にある実在の神社だ。


 糸魚川は2016年に大火事に見舞われた。

 今やすっかりと復興し、電線や架線は埋設され、スタイリッシュな和モダンの建物が居並ぶオシャレタウンになったが、しかしまぁ観光客が居ないったらない。

 糸魚川駅(えちごトキめき鉄道ではなく、JR西日本の新幹線)の平均乗降客数は日に1100人。

 一時間に一本の新幹線で降りる人は40人弱という驚くべき閑散さである。

 とにかく人が歩いていない。地元の車の方が多い。


 糸魚川は五大酒蔵が有名で、そのうちのひとつ加賀の井酒造さんも先の火災に遭難したが私は猪又酒蔵さんの「奴奈姫」を飲んでいる。

 理由はひとつ、名前が奴奈川姫だから。すいません。

 観光客もほぼ居ないこの街で奴奈川姫の銅像の写真を熱心に撮ってるオッサンが居たら、それは邑楽じゅんである。

 年イチくらいでお邪魔しているので気軽に声を掛けて欲しい。

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