病んでしまった話

病むことは社会の落伍者で弱さの象徴なの?

 喉が痛い。頭が痛い。寒気がする。

 季節性のものかしら?

 体育の日の連休を挟んで旅に行ってたのに、急に体調不良っていうのも情けない。

 職場に迷惑をかけることに、いささかの恐縮感や居たたまれなさもありつつ早退。


 総合感冒薬を飲んでグースカ昼寝したらいくらか回復。


 翌日。

 どうにもまだ頭が痛い。

 眩暈(というか頭に靄がかかってグルグルする感じ)もする。


 おかしな話だ。

 昨今は落ち着いているコの字の流行病ではあるまいて、と病院に向かう。


 2年前にちょっと仕事でつまずいて、転職をすることになってからお世話になっている主治医からは、あれやこれやと話を聞かれる。

 ここ最近は残業も多かったし仕事も忙しかったので、またメンタル崩したんだろうなと思って、服薬方法や日々の心構えなども確認する。

 といっても、胃薬だったりちょいと寝つきを良くする程度の薬だけ飲んでるから、いつもの処方を貰ってこれで済むだろうと思ってた。


「じゃあ診断書だしておきますね?」


 ふぁっ!?

 診断書べつに書いてくださいとも言ってないんですけど。

 前の晩は風邪の疑症状に襲われて少し横になったけど、いちおう今はクルマを運転して主治医のとこに来れるくらい元気なんですけど。


 すなわちメンタル系の診断だった。

 これは素直にショックだ。


 私は普通の人が社会で送っている日常すら送れないのか。

 世の大半の方が割り切って付き合ってるストレスすら捌けないのか。

 いわゆる過労死ラインと呼ぶにはまだまだってレベルの、世の取締役や管理職や大手企業の皆さんが平然とこなしている残業を、ほんの3か月ほどしただけで私はバテてしまう情けない奴なのか。


 加えて「長期休職」という文字が頭をよぎる。

 これを会社から沙汰されたら、私は社会とのつながりも失った者になる。

「あら、邑楽さんちは最近、急に平日もお宅に居るようになったけど、なんかあったのかしら?」

 とご近所から後ろ指を差されて陰口をたたかれて、非生産的で無意味で役立たずな人間になってしまう。

 今はまだ人生の夏休みは要らない。仕事もやることたくさんあるし、それでゲットした残業代で買わねばならないものもあるし、普通に休暇として行きたい旅もある。



 まぁ、ようするに細かくて神経質で四角四面な、こういう性格の奴が病むっていうのは実体験で良く分かった次第。


「さよなら人類」で一世を風靡した敬愛するバンド「たま」のメンバーも語っていた。

 解散の一因として、ライフワークであるバンド活動がマンネリ化したり、四十代という年齢の階段を昇ることのキツさがメンバーにも如実にでてきた、と。

 あぁ、あたくしも老けたもんなぁ。

 カラオケ行っても裏声とかキレイに出ないし、昔はポール・マッカートニーと同じキーでロックの歌謡曲を朝までギャーギャー歌っても平気だったのに、今やすぐに咳込むからね。

 このメンタルの乱高下は、オトコの更年期が始まったのかしら?

 なんだか令和の時代になってから人生サッパリだわさ。



 長期休職は免れたけど週明けからはノー残業、ノータスクで業務の負荷を減らしてリハビリ。

 自分の弱さにいやんなっちゃうなぁ。

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