第9話 終わりのない日々
今日も今日とていつもの様にお昼の時間になると隣からは熱烈な視線を弁当に向けられ、俺はその視線の主におかずを渡す。そんな俺たちを時には黄色い悲鳴をあげながらクラスメイト達が観察するという謎の構図が完成していた。
もはや最近ではこの特殊な状況にも慣れてしまい、見られているということに恥ずかしさを感じなくなってしまっていた。いや、見られないのであればそれが一番であるが俺からそんなことを彼らに伝える勇気などない。
「間島君、いい加減にはいたらどうなの。最近、毎日あなたのお弁当を頂いているけどどう考えてもこの味は同じ人間によるものよ。
監視チームをどれだけ増やしてもあなたはいつも代わり映えせずに本屋とスーパーの2か所しか放課後はいかないし。どうして頑なに本当のことを言ってくれないのかしら。」
別に嘘を言っているわけではない、俺は一貫して彼女にはそんなお弁当屋さんなど存在しないと言っているのに彼女は是が非でも信じていないようだ。
当初の予定ではこのお弁当は自分で作っているということを彼女にも明かそうと考えていた。このお弁当は朝から自分ですべて仕込んでいるため、俺が行くのはお弁当屋ではなくスーパーなのだと。
しかしながら、先日の院西さんの告白?みたいな一件がありそれも言い出しづらくなってしまったのだ。あの時でさえ彼女は散々顔を真っ赤にしており、あの後は何もかも手についていない様子だった。
初対面で人の箸でつかんでいた卵焼きを食べてしまう彼女ではあるが以外にも初心な一面があるのかもしれない。そんな彼女がクラスメイト達の目の前で盛大に思いを語った弁当の作り手が俺だとばれてしまえばいったいどうなってしまうか?
相手はこちらの動きを監視するために監視チームまで作ってしまうような存在だ。もはや恥ずかしさを無かったことにするために俺が消されかねない。
おれは、自分の命を大事にするためにこの秘密を墓場まで持っていこうと心に誓うのであった。
「院西さん、毎度言っているけどそんなお弁当屋さんは存在していないからね。あと、プライベートって言葉を知ってる?監視チームとか止めてくれよ。」
「何を言っているのかしら、私は自分の手に入れたいものは絶対に手に入れるわよ。なんとしてもそのお弁当の作り手を突き止めてやるんだから。せいぜい覚悟していなさい、あなたがそのお弁当を食べることが出来るのは私がその人を見つけるまでよ。
見つけたら最後、私だけのためにお弁当を作ってもらうんだから。その時があなたの最後ね!」
彼女は勝利を確信したかのようにニヤリと笑みを浮かべているがたかが弁当程度で俺は終わったりしない。というか、このお弁当の作った人間が分かって終わるのはあなただと思いますよ。主に羞恥という面で。
この調子だとこれからもしばらくは院西さんに監視される日々は続くだろう。自分ではそう言われてもその存在に全く気が付くことはできないが。監視チーム、結構優秀だな。
ふとしたことをきっかけにこのお弁当を作った人間が俺だとばれてしまうのではないかという不安を抱えながら俺は今日も院西さんにおかずをあげるのである。
隣の席のお嬢さまが俺のお弁当に興味津々なのだがどうするのが正解なんだろう? 創造執筆者 @souzousixtupitusya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます