第8話 デレ?
俺があげた焼き鳥を彼女が食べ終えるとブツブツと何かを言っているようだ。
「おかしい、昨日と同じで信じられないくらい美味しいわ。いつの間にこのお弁当を買いに行ったの?昨日はあなたのことを24時間体制で監視させていたのよ。調査によればあなたが外出した先は近所のスーパーと本屋の2か所だけだったはず。
高級レストランにも隠れ家的なお店にも言っていないわ。この感じは昨日食べたものと同じ料理人が作ったものだろうし、昨日はお弁当をまとめ買いしていたから買いに行かなかった?いや、でもこの味はどう考えても今日作ったものでないと出せない味よ。
白状してちょうだい、一体、あなたはどこでこれを買ったの。こんなものが非売品なわけがないでしょ。一体いくらとれる味だと思っているの、こんなものを売り出さないなんてありえないわ。」
俺の料理をここまで褒めてくれたのは嬉しいけど怖いよ。なんだよそれ、どこのスパイ映画だよ。やっていることが怖すぎる、いつの間につけられていたんだよ。
「だからこれは売ってないものだって、というか俺のことを監視するのはやめてくれよ。監視したところで買ってないんだからお店を突き止めることなんてできないんだし。」
俺がそんなことはしても無駄だと彼女に告げると彼女はいきなり立ち上がり、俺の机をバンと叩き、その顔をめいいっぱい俺に近づけてきたではないか。
「間島君、どうやらあなたは余程そのお弁当屋さんを秘密にしたいようね。いいわ、私をなめないことね。私の持てうる力をすべて使ってでもそのお弁当屋を見つけて見せるわ。」
「いや、何でそんなにそのお弁当屋に夢中なんですか、というかそんなお弁当屋なんて存在しないけど。」
「何言っているの、ここまで素晴らしい料理を作り出せる存在を私は知らないわ。こんな人間にはぜひともうちにきてその腕を振るってもらわないと。
いや、それだけじゃ足りないわ。もしもそのシェフが男性であるならば私はすべてをささげてもいいと思っているわ。私の人生なんて何回分でもあげたいくらいその料理に惚れ込んでいるのよ。絶対に結婚してでもつなぎとめて見せるわ。」
もはや距離などないような距離に院西さんの顔があり、そんな様子を見たクラスメイトたちが騒がないわけがない。
「キャ、キャー、も、もう駄目。お腹いっぱい過ぎて胸が苦しいわ。院西さんが間島君にだけデレが振り切れてるわ。こんなの見せられたら漫画のラブコメなんて満足しなくなっちゃうわ。」
「でも、院西さんは間島が買ったお弁当屋さんのことが好きなんだろ。それなら間島は関係ないんじゃないか?」
「な、なぁ、まさかと思うけどあの弁当、間島が作っているわけはないよな?もしもそうだったら・・・・。」
「や、やめろよ。あの院西さんに限ってそんなことないだろ。そんな頃が許されるのは漫画のラブコメの世界だけだ。現実にそんなことが起こるわけがないだろ。」
「何それ、なにそれ、もしもそれが本当だったら今のって公開告白じゃない。ついに間島君に告白までしたの!もう、心臓が持たないわよ、あっ、鼻血が、誰か輸血して~。」
「違う!そんな話はありえないって話だ!」
なにこれ、周囲からめちゃくちゃ言われている。誰だよ、輸血するほど興奮している奴。というか、院西さんも良くこんな歯が浮いたセリフ言えるな。いつもの彼女からは絶対に想像がつかないような発言だ。
俺が周囲のクラスメイトから目の前の院西さんに目線を戻すと彼女の顔は真っ赤だった。おっと、どうやら彼女も流石にこれは恥ずかしかったのだろう。ゆっくりと自分の席に座り、顔から湯気をあげ縮こまってしまった。
「と、とにかく、絶対に間島君が買っているお弁当屋さんを突き止めるきゃら。」
あっ、噛んだ。彼女も相当ダメージを受けていると見える。そんな彼女にさらなる追い打ちをかけるように彼女が噛んだことを可愛いと黄色い叫び声が響き渡るのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます