第7話 阿吽絶叫
翌日、昨日の一件もあり本当は院西知佳は近寄りがたい存在ではないのでないかという結論に至ったクラスメイトが彼女に何とかして話しかけようとするも結果的には今までと変わらなかった。
「ねぇねぇ、院西さん。今度クラスのみんなでカラオケに行くんだけど院西さんもどう?」
「・・・。」
「えっと、院西さん?」
「なぜ、私がそのような事に時間を使わないといけないのかしら?」
どうやら昨日の一件で俺みたいな陰キャが声をかけられたのだからイケメン陽キャである自分が声をかければ彼女もうんというだろうと自信満々に話しかけるも隣で容赦なく撃沈されている。ぷぷっ。
結局、その後も何人かが彼女に対して話しかけるも結果は大して変わらなかった。そうして今日も昼食の時間がやってくる。今日のおかずは焼き鳥と筑前煮、ポテトサラダだ。
今日も自分で朝から仕込んできたお弁当を食べる。今日の一押しはこの焼き鳥だ、もちろん炭火で焼いており作ってからしばらく経っているこの時間でさえもその香りは健在だ。
俺が今日の弁当の出来に満足しながら食事を進めていると昨日と同様、隣からの視線が痛く感じられる。
「な、なんでしょう?」
俺が彼女の視線に負け声をかけると他のクラスメイトの対応とは異なり普通に会話が成立している。しかも、昨日とは打って変わって今日は些か素直なようだ。
「間島君、その焼き鳥、一つ私にくれないかしら。」
「えっ、あぁまぁ良いけど。」
昨日は欲しくないと言いながら勝手に俺の卵焼きを食べていたにもかかわらず今日はどうやら素直に欲しいというようだ。別に欲しいと言われればおかずを分けるのもやぶさかではない。俺がおかずを彼女に分けるとすぐさま彼女はぱくりと口に頬張るのであった。
「みて、みて、院西さん大胆ね。」
「キャー、出たわね、間島君専属のデレ!クーデレ超可愛い!」
「なぜだ、何故なんだ!どうして俺は近寄ることすらできないのにあいつはおねだりされるんだ!許すまじ間島。」
周囲のクラスメイトは昨日に引き続きこんな俺がぶっきらぼうな院西知佳からおかずをねだられていることに対して阿吽絶叫であったが。
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