重式人型兵器アダンゲリオンAK3

芋けんぴうす

第1話:パイロットの試練


「準備はいいかい?コタローくん」


重式人型兵器アダンゲリオンAK3のパイロットに選ばれた男、コタロー。

彼は今、アダンゲリオンの胸部に組み込まれた操縦室に乗り込んでいる。

操縦室といっても床と一体化した椅子があるだけで、ハンドルやメーターといった設備は一切置かれていない。


これから実際にアダンゲリオンを使っての動作テストが実施されるところだ。


「もちろんです博士。地球の未来のために、必ず使いこなしてみせます」


コタローが自信満々に答える。


恐ろしいほどの戦闘力を持った地球外生命体『アンノウン』が侵略してきてから2年、窮地に陥った人類は国境を越え、その技術を結集し、そして作り上げたのが、アンノウンに唯一対抗しうるアダンゲリオンだった。


博士、と呼ばれた男性はモニター室から遠隔でコタローに話しかけているようだ。


「コタローくん、以前も伝えたようにアダンゲリオンには自立型のAIが搭載されている。非常にレベルの高いAIでな。アダンゲリオンに自我があると言ってもいい。これから君はアダンゲリオンに試されることになる。パイロットとして君が本当にふさわしいのか、をな」


「安心してください。血のにじむようなトレーニングで得たこの肉体と精神力でどんな試練にも打ち勝ってみせます」


「すばらしい。この試練を無事に終えれば、君は晴れてアダンゲリオンのパイロットだ。・・・では試練をスタートする。幸運を祈る」


博士が言い終わってすぐに操縦室が少しだけ暗くなる。コタローが息をのむ。

試練の内容は何も聞いていない。自信があるとはいえ、少なからず緊張もしていた。


数秒間の沈黙の後、


・・・ピロピロリン♪


ふいに電子音が操縦室に流れた。

コタローのポケットの中のスマホの通知音だ。


(しまった・・・マナーモードにするのを忘れていた。いまのうちにマナーモードにしておこう)


まだ操縦室に動きはない。コタローは急いでスマホを取り出した。


「ん?」


コタローの目に留まったのはスマホのロック画面に映し出されたメッセージアプリの通知だった。先ほどの通知音はメッセージの受信を教えてくれたのだろう。


通知にはこう書かれていた。


『送信者:AK3

メッセージ:こんちは!!( *´艸`)』


目を見開いたままコタローが一瞬固まる。

とりあえず見なかったことにしてマナーモードにするのを忘れたままポケットにスマホを戻す。


・・・ピロピロリン♪


・・・ピロピロリン♪


・・・ピロピロリン♪


すぐに通知音がなる。今度は3回だ。


恐る恐るポケットに手を入れ、再度スマホを取り出す。


『送信者:AK3

メッセージ:え、なんで無視するの!( ;∀;)』


『送信者:AK3

メッセージ:返信ほしいな~( *´艸`)』


『送信者:AK3

メッセージ:・・・もしかして私のこと嫌い・・・?』


「・・・ちょっとごめんなさい1回整理させてください」


独り言のようにそう言い放ってコタローは考え始める。


(なんだこの状況)


(過酷な試練がはじまると思ったらメッセージ届いた)


(もしかして、予測不能の事態に陥ったときににどう対処するかを見られているのか?)


(分からん、とりあえず無難に返信してみよう)


『はじめまして、コタローです。アダンゲリオンさんですか?』


返信はすぐに返ってきた。


『そうだよ~♪ってかそんな他人行儀だとなんだか寂しいな。不合格にしちゃうぞ(笑)』


返信を読み終えたコタローは上を見上げため息を一つ吐き、そして確信した。

アダンゲリオンのパイロットになるためには、メッセージを通じてアダンゲリオンにハマる必要がある、と。


・・・ピロピロリン♪


通知音がなる。見ると今度は博士からだった。


『気付いたかい?コタローくん。そう、君の役目はアダンゲリオンの良き話し相手になることだ』


急いで返信するコタロー。


『くわしくおしえてください』


『必死だなコタローくん。元々アダンゲリオンにパイロットは必要なかったんだ。自立型AIを搭載しているからね。自分で考えて自分で戦うことが出来る。

ただ、AK3はなんというか、その、恋愛に依存してしまってね』


『恋愛依存?』


『あぁ、インターネットを教えたのが良くなかった。出会い系のオンラインメッセージチャットに入り浸るようになってからAK3は変わってしまった』


『つまり、僕に、アダンゲリオンの彼氏になれと?』


『話が早くて助かるよ。そう君は、恋愛依存で情緒にムラがあるAK3の心の支えになって、AK3が戦いに集中できるようにしてほしいのだ』


『メンタリング的な意味でのパイロット、というわけですね』


『うまいこと言うじゃないかコタローくん、その通りだ。

ただ注意してくれ。AK3はとても、重いぞ』


『正直、拍子抜けしました。この程度の試練、簡単に乗り越えて見せます!!!』


ひとしきり博士とのやりとりを終え、状況を理解したコタロー。


気付くとアダンゲリオンからすでに10数件ほどメッセージが届いていた。


『不合格は冗談だよ・・・?( ;∀;)』


『返信、ほしいナ(*‘ω‘ *)』


『コタローくんはどんな人が好き?アタシは返信してくれる人』


『アタシ、もう戦いたくない(-_-;)』


『でもがんばるよ!アタシ(*‘ω‘ *)』


『だからはやく返信ちょうだいね』


『ねぇ!返事してよ!!』


『もうムリ・・・』


『さよなら』


『・・・冗談でしたー!!(笑)』


『でも早くしないとほんとになっちゃうよ??( ;∀;)』


読んでいる間も鳴りやまぬ通知音。

コタローは操縦室の天井を見上げる。


(無理かもしれん)


to be continued....

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