第2話

ぼくは、「テライ·ダンネバ(すごく、ありがとう)」と、ネパール語で返した。

ある日、夏の終わりに「チソチャ?(寒いですか?)」と聞いてきた。

夏なので、「カトチャ(あついです)」と答えた。すると、「カトチャ?」と、ユータンさんは、ニヤニヤしていた。

おかしいなあ、なんでニヤニヤしてたんてだろうなあと思い、家に帰って、ユータンさんの教えてくれた、ネパール語のメモを読み返すと、「カトチャ」は、(熱いです)という意味だった。(暑いです)は、「ガルミチャ」だった。

それでかー、と思った。

次の日、再び行くと、帰りにまた、「チソチャ?(寒いですか?)」と聞いてきた。

意地になって、「カトチャ(熱いです)」と答えると、ユータンさんは、相変わらずニヤニヤ笑ってたいた。

店が売れなくなると、業者の人が出入りしたり、店の外に飾ってあった、植木鉢を片付けたりしていた。

おかしいなと思って、「ユータンさん、お店やめるの?」と聞くと、「やめないよ」と言っていた。

「でも、業者さんとか出入りしているよ」と言うと、日本語がわからないフリをして、「わかんない」と答えたままだった。

ある日、張り紙がはってあった。「閉店します」と、いきなりのことだった。

ユータンさんは、もう店にいなかった。

それから、店が新しい店に変わった。

ある日、うれしいことに、もう会えないと思っていたユータンさんが、ぼくの家に訪ねてきてくれた。

ユータンは、近況を話した。とにかく、借りたお金がたくさんあるらしい。

「心痛いね」と言っていた。

早く、また店をやってもらいたいものだ。

そこでまた、ネパール語や、ヒンズー教の話を聞かせてほしい。神さまの、おとぎ話がとても、うまかった。

ユータンさんには、まだ、教えてもらいたいことがたくさんある。

また、ユータンさんと、カウンターの席でお話する日がきたら、どんなにうれしいことだろう。

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ユータンさん 林風(@hayashifu) @laughingseijidaze4649

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