出会い

 何コール鳴っただろうか。

 恐る恐る電話をとった。

 非通知。


「もしもし……?」


「もしもし私メリーさん」


「はい」


「今、あなたの部屋の前にいるの」


 小さな女の子のような声だ。たどたどしい感じが好印象。きっと道で泣いていたら十人中七人くらいが助けてくれる。そんなか弱さがある。


「鍵開けようか?」


 酔っていたから言った言葉だろうな。自分の口から出た言葉に驚いた。電話口からは驚いたように息を飲む音がした。


「……えッ!? マジで?」


「――はは。大マジよ」



 西洋人形を覚悟していたのだが、部屋に入ったメリーさんは人形の格好をした外国人の少女だった。


 大きな瞳、セミロングの金髪。ゴスロリっぽい格好もメリーさんの為に作られたかのようだ。


「……ちょ、超可愛い!! まるで人形みたい!」


「私メリー。人形だもの、当たり前でしょ」


 メリーは可愛らしくうな垂れた。マニュアルにない、とかクレーム対応だとかそんな台詞ばかり呟いている。


「人間みたいだけど、人形なの?」


「だって道歩いてたら悲鳴上げられるじゃない」


「問題はそこなのね」


「今は瞬間移動なのね、歩いてる時に見えちゃう人がいるのよ……」


 メリーを家に入れたものの特に話題が続かない。

 彼女もどうしたら良いか分からないようだった。


「メリーちゃん! お菓子買ってくるから寛いでてね!」


「はぁ……」


 本日二度目のコンビニは、珍しく行きも帰りも足取りが軽い。


 コンビニでお菓子を物色してる時に頭をよぎったのだが、もしかしたらもしかしたら『☆☆☆☆☆メール』の方の女の子も家に来るかもしれない! ということだ。


 だからお菓子とジュースは多めに購入した。


「メリーちゃん! チョコとか飴とかクッキーとか買ってきたよ!!」


「つまみは!?」


 メリーが玄関まで来て聞いた。


「お菓子なら」


「サキイカとかピーナッツとかは!?」


「そういうのが好きなの?」


 メリーが私の手を引きながら部屋の隅を指差す。もしや『死んでる女の子』!?


 部屋にはメリーが移動させたのか転がったチューハイの缶と中身が綺麗に消えたつまみの空袋があった。


「ああ!? 何見てんだよ!!」


 その少し上あたりに完全に出来上がってるお姉さんが浮いていた。


「女の子じゃない!!」


「てめぇ! 喧嘩売ってんのか!? ああ?」


「綺麗系のお姉さんだ! 苦手なタイプ!」


 お姉さんはアラサーくらいに見える。気の強そうな目に射殺されそう。


 メリーは彼女の扱いに困っているようだった。黙ってチョコレートを頬張っている。……可愛い。


 完全に目が据わっているお姉さん。お姉さんは私を睨みながら、ゆらゆらと浮いている。


「おかげさまで女子会に引っ張りだこです~。皆私をみてコイツよりマシだって思いたいのよ」


「いや、ちょっとろりを期待しただけで」


「もっと料理上手かと思った~、私服ださいね~、思ってたのと違うんだけど! 私悪くない! あんたもそうでしょ!」


「私にとっては……ご褒美ですかね?」


 お姉さんはじとっと私を見て一言。「お前、歪んでるな。色々」この人とはとても気が合いそう!


 それから少しお姉さんと私、メリーちゃんとで少し話した。


 お姉さんは「彼氏いない歴が年齢を超えて記録更新中」私はそれに「わたしはイコールだから勝ってる!」メリーちゃんが呆れて「二人とも……」こんな感じ。


 外が明るくなるまで気づかず、私は眠そうにしている二人を見て言った。


「友達がいるのってこんな感じなのかぁ……」


 二人とも何とも言えないような顔をして、少し沈黙した後メリーが「私たち友達でしょ!」お姉さんがそれに釣られるように頷いた。


「来週も来るから酒とつまみ宜しくな!」



 この日、私に初めて友人が出来た。



 彼女らはきちんと玄関から帰っていった。なんだか今まで重かった玄関の扉が軽くなった気がする。

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ちぇんメのメリー 夏伐 @brs83875an

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