真っ白な消しカス少年

かとれや

教室

昼休みが始まったばかりだった。僕が次々に教室を出ていく連中に巻き込まれるようにして席を離れると、廊下から騒がしい声が聞こえてきたので、うるさくて教室に引き返した。教室はいつにも増して静かだった。僕以外の誰もいない。外から微かに聞こえてくる笑い声を除けば、ため息だけが響く。


机に戻った僕は頭を抱えた。家庭環境も性格も顔も良くなく、ついでにコミュニケーションもできない僕には、話す相手などいない。机には、何の悪戯か文字が書かれている。いつものことだ。汚れたペンケースから消しゴムを取り出してそれらを消そうとしたが、サインペンか何かで書かれていたらしく少しも消えなかった。今日ばかりはなぜか、細かく残った真っ白な消しカスを見ると無性にいらいらした。


廊下の騒ぎ声が一層うるささを増したような気がしてくる。淀んだ空気とストレスのせいか頭痛がしてきた僕は、開けっぱなしの窓から思い切り外の空気を吸い込んだ。それはいつまでも吸っていたいような空気であった。窓に向かって、先ほどの真っ白な消しカスを投げ捨てる。消しカスが手から離れたところで思った。


これ以上汚れてしまうなら何の役にも立たないでいた方がいいのだろうか。


笑い声は耳にこびりついたままだったが、ゴミなんて投げ捨てたところで、空は綺麗だった。僕は廊下を振り返って笑った。

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真っ白な消しカス少年 かとれや @orinas

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