第43話 授与式、そして四大王族

 次の日の朝。今日は授与式がある。何を授与をされるのかは分からないが……。でも少し楽しみでもあり寂しくもある。

 受け取ってしまったら、ジークさんやルナさん、そしてグーファーさんも、ここでお別れになるのかな? そんな事が脳裏によぎる。リーフィスさんもルルード王国に戻ったらお別れかな? せっかくできた仲間だから辛い部分もある。

 でも、ジークさんはアーティダル王国の王子で、ルナさんはお姫様。いずれ、ジークさんがこの国を統治する事にはなるのであろう。

 普通だったら僕なんかと会う機会すら与えられないだろう。会えて少しだけど、一緒に冒険できたこと自体が奇跡なんだと思う。こんな日が来るって心の中では思っていたけど、いざその時になると踏ん切りがつかない。遅刻はできないので、モヤモヤしながら王室に向かった。



 メイドさんの案内で王室の中に入ると、会話が聞こえてきた。


「王様! いいえ! お父様! ルナちゃんを私にください!」


 トロン王の前に土下座をした人がいる。結婚の挨拶だったのかな? それなら、変なタイミングで来ちゃったな。トロン王も、困った顔を浮かべている。まさに開いた口が塞がらない状態だ。

 周りの目を気にしないその態度は色んな意味ですごいね。僕には真似できないよ。そんな事を思いながら進んでいると、


「おぉ! トワ殿! よくいらっしゃった。これで全員揃ったな。では、取り急ぎ授与式を始めるとしよう」


「どうも。こんにちは」


 僕は軽く会釈する。トロン王は腕を高く挙げ、パンパン! っと手を叩いた。すると、サイドにあるカーテンから二人のメイドが台車を運びながら現れた。僕を案内してくれた銀髪ポニーテールのメイドさんもいた。いつの間にそっちに行ってたんだ……。


「あ! トワ君! 来てたんだ!」

「あ、ヒロさん……。こんにちは。今来た所です。僕が最後だったみたいですみません」


 トロン王に、「ルナさんをください」と言っていたのはヒロさんだった。流石はヒロさんだよと感心してしまう。ください、とまでは言えないけど、この先もルナさんたちと一緒にいたいっていうのは、ヒロさんも同じみたいで良かった。すると、トロン王は、咳払いをして、


「えー、コホン。では、これより授与式を行う」


 こうして、授与式が始まったのである。


__________


 三十分ほどで授与式は終わった。トロン王は謝礼として黄金に輝くメダルと百万ドリー、僕たち一人一人に感謝の言葉を述べてくれた。こんなに貰ってもいいものだろうかとは思ったが、せっかくのご好意を無下にはできなかった。

 

 黄金に輝くメダルには、表には【王】の文字が、裏には、二つの剣がクロスしているかっこいいデザインがしてある。

 このメダルは全大陸に存在する、四大王族の一つで全部で四種類しかないそうだ。王家の紋章みたいなものらしい。

 これを見せるだけで、王族が管理している施設に入ることができたり、アーティダル大陸内の検問所をスルーでき、王城にも入り放題となる。僕たちがいつでも、ルナさんやジークさんたちに会いに来れるようにと、トロン王の配慮だと思うし、国が僕たちを信用してくれている証拠だろう。


 その事に気付いてないヒロさんは、授与式は終わってもなお、トロン王に言い寄っていた。さすがに迷惑だろうと思い、二人に近づいて、


「ヒロさん、トロン王も困っていますよ。気持ちは分かりますが一旦出直しましょう? 長い間、国を乗っ取られて、やっとの思いで取り返したんですから。家族でいる時間も必要ですよ」


「分かってはいるんだよ? でも、このまま会えなくなるんじゃないかと思って……」


 やっぱり気づいてないのか……。ヒロさんにも分かってもらおうと、トロン王に問いかける。


「トロン王、この紋章付きのメダルを見せたら、検問所を素通りできて、城内に入れるってことですよね? いつでも、ルナさんやジークさんに会える。そういった解釈でいいんですよね?」


「うむ。勿論だとも。いつでも、遊びに来てルナやジーク、ユナと会えるし遊んでやってほしい。検問所はルルード王国も素通りできるから、リーフィス殿にも会いに行ける。ルナたちと冒険したいという、ヒロ殿の気持ちは親としても大変嬉しいが、今はまだ待ってほしい」


「ですって。分かりましたかヒロさん。トロン王はいつでも会えるように、紋章付きのメダルを渡してくれたんですよ。もう会えない訳じゃないので一回帰りましょう。ウガルンダにも戻らないといけませんし」


「そっか、それなら良かった。迷惑をかけてごめんなさい。また遊びにくるねー! お世話になりました!」


 切り替えはやっ! ま、まあ理解してくれたなら良かった。

 今はまだってことはいつかは、ルナさんやジークさんとも冒険に出れる日がくるのかな? そしたら、みんなでギルドを作って、ギルド対抗戦に出場したり、ギルド別のイベントに参加したり……。色々と楽しい妄想をしてしまう。

 現実に戻る方法を探さなきゃいけないんだけど、僕個人としては、帰らなくてもいいかなと心の隅にある。

 理由は、僕の帰りを待ってくれる人はいないからだ。帰った所で何を言われるか分からないし、楽しくない日常に戻るくらいなら、このままでいいと思ってしまう。

 勿論、そんなのダメだって事は分かっているけども。


 僕とヒロさんはお礼を言って振り返って帰ろうとすると、トロン王が僕たちを呼び止めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

追憶の電脳世界〜エタニティ・ドリーム・ワールド〜 夢達磨 @yumedaruma15

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ