ニュースピーシーズ

redstennis

第1話

 人類は猿から進化したのだろうか、、

 神が人を作り賜うたのか、、

 人類は進化しているのか、進歩しているのだろうか。


 フリージャーナリストの坂本は山道をフーフーいいながら歩いていた。

 

 ジャンルは問わないが売り込まないと食べていけない、、

 編集長が言った。

 「坂本ちゃん、今時間ある?いやね、読者から変なネタが来ててね、、どうも、ほら、昔テレビであった山の中の一軒家みたいなやつ、それがね、どうも変なのだけどね、ほら、人工衛星からは写らないのに確かに小さな集落があって、世捨て人か、変な人達が居るらしいんだ、まあ、本当かどうか分からないけどね、取材して来て欲しいんだよね」

 つまらないネタでも膨らませれば記事になるかなあと思いつつ、

「いいですよ、どうせ暇だし、、」

 

 この奥深い山の中をもう大分長い時間歩いている。

 

 しかし日本も便利になったものだ、、幹線道路は電気抵抗のグリッドで行き先さえ言えば車は少し浮いて自動で行ってくれるし、、水素電池ハイブリッドエンジンが使われている、、遠くに行くには空飛ぶロケットカーが使われている、、高く飛べばほんの少しの角度計算で遠くまでアッという間に到達できるわけだ、、円盤は本当にあったのかも知れない。

 日本のお得意の自動水洗シャワートイレが進化して、今では座れば自動で多くの健康管理上のデータが取れて、ドクターとオンライン診察のデータ連携も取れている、この業界は日本の独壇場だ。 

 通信、ITも発達し、今は通信とカメラを内蔵した小型のスマートウオッチを通じて通信もデータ転送も写真や動画撮影も出来るし、超軽量メガネスクリーンでリアルタイムで見ることも出来る、、便利だ。


 ・・・脇道では車のタイヤを下ろして、水素エンジンで快適に走るが、道が狭くなると注意を受けていたので、途中で車を停め、取材のカバンだけ持ってここからは歩くしかないか、、歩く、まだか、、何も見えない。

 大分疲れてきた。まだ陽は高いが、本当にそんな村があるのか、ガセネタじゃないのか、、


 しかし最近、地球全体がおかしくなりつつあるな。

 

 新たな感染症に見舞われ、膨大な人数の人間が死んだ。

 温暖化現象は止まらず、巨大隕石の落下があり、南太平洋の海底火山が急に大噴火し、かなりの長期間にわたって太陽を遮断してしまい、穀物の生育に大きな影響があり、更に太陽の黒点の異常なのか、異常気象現象が各地で続き、遂にアマゾンの大森林が消失してしまった。植物の光合成が阻害される状況が全世界で発生し、砂漠化が顕著となり、その為なのかどうやら地球の空気が薄くなってきているようなのだ。

 このままでは地球は、酸素不足になり、数十年の内に人類は滅亡するしかないという学説も出てきて、、危機感がジワジワと身に迫ってきている。

 

 大国は宇宙ステーションの建設を加速し、いよいよ宇宙に乗り出す勢いだ、、

 人類もいよいよ神に近づくのか、、、ノアの方舟は宇宙ステーションなのか。


 科学が進歩しても信仰は続き、暗い時代には新たな新興宗教も生まれている、、人は怖いのだ、、、怖いと神を探したくなる、、、

 変な人間も出てくるというものだ。


 ・・・と、ボーッと考えながら山道のカーブに差し掛かった時に急に何か動物が飛び出たのか、ワッと驚いた瞬間、足がズズッと滑って、アーッ!!

山の斜面を転落してしまった。脚が木か岩か何かに当たった感触があり、ボキッと嫌な音がして、骨が折れたと確信した、、痛みを感じながら、失神していくのが分かった。


 ウーン、目を開けるとボンヤリと人の気配を感じた、、どの位時間が経ったのだろうか、辺りは少し暗くなっていた。

 女だ、と、思った、、慌てて起き上がろうとするが、身体中が痛み、イテテテ、息が切れる、起き上がるのを制するように少女が肩を押しとどめた、そして首をゆっくり振った。

 見ると少女は坂本の脚の折れた部分を片手で包み、覆っていた。坂本は思った、”この女は何をしているのか、少し脚を動かしてみようか”、その女性はダメとばかりにまた首を横に振った。"上の道に戻れるだろうか?"、女性は上を見てからまた首を振った。表情は穏やかだ。

 それから少女はゆっくり立ち上がり、”すぐ戻るからジッとしていてね”と言ったような気がした、、そして少しして、木の枝と蔓のようなものを持ってきて、坂本の脚を固定した。”有難う”、”大丈夫”。

 もう陽もすっかり落ちて、山の湿気と夜の冷たさが下りてきたような、、

ザワザワと木立の間を縫って、少女と老人二入が現れ、一言も発しないまま軽々と担ぎ上げられ、「その村」に連れて行かれた。


 古い日本式の家屋のようだった、、昔の畳だろうか、部屋に寝かされて、しきりに老人が脚を見て、少女がしたのと同じように手をジッと置いたりした。水を飲まされたが、美味かった。そしてどうやら薬草を煎じたらしい液体が入ったお椀を渡された。一瞬、"これ、毒じゃないよな"と思いがよぎった、、老人は笑いながら”大丈夫”といわんばかりに首を振り、自分で一口飲んで見せた。

 それから思わず寝てしまったらしい、、脚は勿論痛いが、眠気の方が強かったようだ。目が醒めるともう陽が高かった。

 

 起きて横の椅子に何とか腰掛けた。ウン?驚いたことに脚は折れていなかった??まだ痛むが骨は繋がっているような気がする、、恐る恐る思わず触ってみる、、添え木もない。

 老人がお粥を運んできて薄く笑った、ように見えた、、

 ”頂きます”

 ”ゆっくりお食べなさい”

 ”ここどこですか?”

 ”山の中じゃよ”と窓から山を指差して笑った。

 するとあの少女が坂本のカバンを持ってきて差し出した。若くて美人だ、、

 ”有難う”

 ”どう致しまして”

 

 アッと思った、、俺は一言も喋ってない、心の中で思っただけだ、そして少女からも老人からも一言も言葉を聞いていなかった。


 今では、雪男もネス湖のネッシーも実在していたことが分かってきた。ダーウインの進化論は修正が必要なようだ、、進化とは何だろうか、人類は進化しているのか、進歩しているのか、何か退歩しているのか??


 スイスに拠点を置く世界的巨大企業集団であるGOTTECHS社は極秘のプロジェクトを進めていた。あらゆる人類のDNAや化石も集めていた、、雪男を見つけたのもこの会社だ。会長のブラウン博士が金にものを言わせて何かを企んでいるようだ。

 「おい、例のハンティングは進んでいるのか」とブラウン博士がスマートウオッチに叫ぶ。

 「アッ、ハイ、あの、今やってます」

 「早くしろ、地球の砂漠化と酸素不足は止まらないぞ。ハンティングでDNAや身体の器官も全部調べるんだ、それで掛け合わせるのだ。全ての生物は突然変異で生まれたのだ。神が人を作ったと言うなら、我々が神になるのだ、、突然変異を起こすのだ、鳥人を作るのだ、、もうすぐ来る次の氷河期でも平気な雪男や、以前の地球だったように二酸化炭素を呼吸する人間のオーガンを作り、欲しがる金持ちに移植するのだ」

 「イエッサー」


 このような時代には新たな宗教も出てくる。日本の宗教団体であるアマテラスは、新たな日本神話の解釈と進化論を融合させているが、教祖は教義の目玉を欲していた、、教祖の目が狂気を帯びている。

 そんな教祖の元に日本に神の子がいると情報がもたらされ、多数の信者が密かに捜索に旅たった。


 ヨーロッパでは、異教徒狩り、悪魔狩りを旨とする新宗教団体が世紀末をもたらす悪魔の集団を駆逐する運動が始まっていた。今そのターゲットはヨーロッパにも日本にも隠れ住んでいる変わった村民達であった。そしてそれらの悪魔集団の壊滅と神の子狩りが命じられた。


 アメリカには昔からエイリアンや円盤を調査している秘密の政府機関、エイリアン研究所があり、膨大な研究費を使って世界中を調べている。

 最近の研究ではエイリアンが地球に来ていたことは明白になっている。生命体なのか、呼吸器官、脳の働きやどのようなマシンで宇宙から飛来したのか解明出来ていない。

 最近世界各地から何らかの人類の移動、ある種の人間か村落が、どこかに向かっている様子なのだ、、何なのか、調査隊が各地に派遣される。

 

 その少年を誘拐しろとの命令を受けて誘拐犯の3人はやっとその少年を町で見つけた。ゆっくり歩いている。何だか小さな動物を服の下に抱いているようだ、、どこで誘拐するか、周囲を見回した。小さな町だが、うまくさっさとやれば小さな子供だ、余り証拠を残さず、連れていけるだろう。

 信号のある道路だ。

 その時、キーッという車の急ブレーキとドンという何かをはねた音がした。小さな女の子が飛ばされて、血がベットリと付き、壊れた人形のように腕がおかしな向きになっていた、、息はあるのか、、周りは一瞬、皆、凍りついていた。

 

 その少年がいつの間にか小さな女の子の横にしゃがんで居た。手を女の子の腕に当てて、撫でるような仕草をゆっくりだが繰り返していた。

 きゃー、ああーという声を発しながら母親と父親が走って来た。少年には目もくれず、ブルブル震える手で恐る恐る女の子に触った。

 「エリ、エリ、エリー!!」

 周りに人が集まり、遠巻きに見ていた。

 「ウーン、、ママあ〜、、」女の子が薄っすらと目を開けた、、

 「オー、エリ、大丈夫か、大丈夫か」

 エリという女の子はそばに立っている少年を見た。

 ”大丈夫?”、少年から言葉なく発せられた。

 『うん、大丈夫』とエリが少年に答えた。

 両親は思わずエリと少年と見比べた、、エリの独り言か、そしてエリはゆっくりと上体を起こした。

 オーという声が周囲の人達から発せられた、、驚いたのだ、、そしてエリが立った。

 アーッという声が上がった、、両親も驚いて見ていた。肩や腕をさすったが問題なさそうだったし、血も止まり、何にもまして、曲がった腕が元に戻っていたのだ。

 ”良かったね”と少年。

 「有難う」

 ”またね”

 「うん、またね、お兄ちゃん」

 母親は少年に、「助けてくれたの?」と聞いた。

 少年はニコッと笑ったように見えた。見ると横に小さなフクロウがちょこんと立っていた。

 近くにいた男が叫んだ、、「その男の子が治したんだよ!」

 「有難う、有難う」泣きながら、エリを抱きしめながら母親が男の子に小さな声で言った。少年はニコッと笑い、ゆっくりとその場を離れ、小さなフクロウは今度はポンと少年の肩に止まった、そしてフクロウは首をくるっと後ろに向け、二人組の男達を見据えた。

 神の子だ、、数人はスマートウオッチで写真を撮り、すぐSNSで全世界に流れた。

 救急車がやっと来て女の子を乗せたが、血は付いていたが、身体は何ともないようで不思議がっていた。エリは少年の歩いて行った方を見ていた。


 3人組はアッサリとその少年を拉致した。ついでにフクロウも付いてきた、、大急ぎで車に乗せ、走り去ったので誰にも気づかれなかった。


 坂本は観察していた、、山の中で通信電波も繋がらないが、スマートウオッチを見るとまだ1日しか経っていないようだ。身体、脚は不思議と問題なくなっている、、驚きだ。

 村の男達は老人が多いように思えた、、少しだけおでこが広いようにも見える、、女性は少ないようだ、、子供も余り見ない感じだ、、誰も喋らない、、喋れないのか、言葉を知らないのか、、一体どこから来たのか。

 

 事前に近くの村で話を聞いたところ、何十年も前からその村落はあったようで、もっと前かも知れない、、世捨て人かおかしな新興宗教集団と思われていて、あたり触らずで放置されているのだ。


 村はザワザワしていた、、槍か棒か、何か武器になるような物が集められていた、、引っ越しでもするのか、荷物もまとめられていて、、それにしても荷物は少ないし、大体トラックも無いし、、移動はどうするのか??


 夜になって、突然辺りが光ったかと思うと多数の白装束の男が村を襲撃してきた。皆無言で戦っている、ようだ、、坂本にはよく見えないが攻撃してきた集団も村の人間も暗闇でも見えているのだろうか。


 突然、腕を掴まれた、一瞬ジッと目を見られたが、村の老人だった、表情はない、一つ頷いた途端、身体が宙に浮いた、ような気がした。

 気がついたら車のそばに居て、老人は行けという風に手を動かした、、あの少女も居て老人と手を繋いでいたが、小さな声で「SA YO NARAH 」と、話したような、気がした、、喋れるのか、、次の瞬間、二人とも見えなくなった。

 水素エンジンカーに乗り、エンジンをかけた。あの襲撃、あの村はどうなったのか??少女は大丈夫だろうか、、下界に戻り、病院に行き、そしてまた戻らねばならない、、これ、凄い特ダネになるかも知れない。


 その頃、村では戦いが起こっていた。襲撃者は口々に「悪魔は去れ、異教徒は去れ!」と言いつつ、鎌やナイフや鉄パイプを振り回していた、、村の人々はそれらをかわしながらも落ち着いて後退するかのようだった。

 「我々は君達を殺しはしない!信じてくれ、ただ、この土地にはそぐわない、早々にどこかに行って欲しいだけだ、、」と叫んでいたが、殺意満々だった。

 村人は、、嘘がすぐ分かるようだった、、どうやら言葉の意味ではなく、気持ちや感情や敵意、好意を直接察知しているようだった。

 突如襲撃者達がドッと地面が割れて穴の中に落ちた。村人は上から一度確認する仕草を見せてから荷物を集めて逃げる移動を始めた、、罠を仕掛けたのだった、、殺戮よりも逃げるのがこの種族の生き方のようだった、、こうやって生き延びてきたのか。

 

 村を離れる前、長老とみられる老人がふと何かに気づいてか、、天を仰いでジッと見つめていた。そして、"北だ"とつぶやいた。


 坂本は病院に行き、その間にも編集長にレポートし、これは大変なスクープになると説得し、取材の続行を認めて貰った。編集長は半信半疑というより疑い満々だったが、変わったネタとして少し追いかけることを承認した。

 数日後、坂本はあの村にまた戻った。事前に人工衛星をチェックし、今回は古い村落が写真に写っていた。

 しかし、村はもぬけの殻だった。誰も居ないのだ。全員殺されたか?それなら死体がある筈だが、、何もなかった。何故か大きな穴があり、覗くといくつか棒なり武器のようなものが散乱していた。

 ジャーナリストとしては、しまった、、と、思った。これからどう追って行こうか、久し振りにジャーナリスト魂を思い出した。


 アマテラスの教祖はその神の子と呼ばれた少年の誘拐が別のグループに出し抜かれたことに激怒していた。、3人組の怪しげな男達に拉致されてしまったと、、指を咥えて見ているしかないのか。教祖は指を噛んだ。


 悪魔狩り集団は自担だ踏んでいた。今回は失敗したが、次は根こそぎ狩ってやる、、逃げるのは昔からだ、、どこに行ったのか?ヨーロッパに戻るのか。


 アメリカのNASAと空軍が揃って緊急アラートを大統領に報告した。宇宙から飛翔体がいくつも地球を目指して飛んできているのだ。地球が徐々にボロボロになりつつある状況に追い討ちをかける危険な兆候だった。

 すぐさま、国連会議が開かれ、軍事的迎撃を含めた対策本部が立てられた。

 一体何故宇宙人が飛来するのか、何故今なのか?弱体化した地球をこの機会に一気に叩いて植民地化しようというのか??


 あの少年と小さなフクロウを誘拐した犯人達はまさにロケットに乗って飛びたとうとしていた。エンジンがかかり、一気に空中に飛び出した。

 「アッ、居なくなった!」ロケットの中で犯人が叫んだ。

 

 その少年はロケットを見ていた。フクロウも。そしてロケットが軌道を外れて墜落してもなお、空を見続けていた。何かが来るのだ、、と。


 そして声なき声で、”北だ”と呟いて、歩き出した。


 アメリカの情報局もエイリアンの秘密研究所もスイスのGOTTECHS社もほぼ同時にその少年の存在とSNSの写真に気づき、分析を始めていた。どうもこの少年は通常の人間、人類ではない可能性があると論じた、、人類の進化系かエイリアンか新しい種、ホモ・サピエンスのニュースピーシーズなのか。

 

 更に調べてみるとそれ以前にもこの少年は目撃されていた。海外で同一人物かは定かではないが、よく似ている。ガス管の爆発事故があり、作業員が地下に閉じ込められた、ガスが充満していた為、すぐに酸素が無くなり、息絶えたと思われていた。 

 その後酸素マスクを着けた救助隊に発見された時に、その少年が一緒にいたのだが、驚くことに空気はもう無かったにも関わらず、怪我をして動けず失神していた男性作業員もその少年も助かったのだ。

 少年はいつの間にか居なくなったが、男性に聞いてもそんな少年に覚えがないと言う、、てっきり自分は窒息して死んだと思った、、神に助けられたと周囲に告げていたと。

 病院で診察した医師は奇跡的な生還で信じられないと、、またローカルの新聞は、と言ってもこの時代は紙ではなくメガネ式のスクリーンだが、”神の子”がいて、作業員を救ったのだとはやし立てた。


 「この少年の手は何か電気的なものを発するのかも知れない、それで傷が治せるのかも知れない、、ひょっとして酸素が無くても生きていられる生物的オーガンを備えているのかも知れない。現在の地球の状況を考えると人類を救うのはこの少年かも知れない」、、エイリアン研究所の研究員が興奮気味に喋った。

 

 ニューヨークの大手新聞社の記者のグレイシーも少年の存在に気付き、調べ始めていた。海外の小さな記事もチェックして、少年の記事と共に、不思議な村落と村民の存在に付いて書いた坂本の記事が目に止まった。その記事で坂本の骨折を治したことは少年の行為との共通点であることがうかがわれた。

 女性記者は、「すぐ日本に行くわ。SAKAMOTOの居場所を調べてスマートウオッチにデータを送って!デスクには後で報告するから!」とコートを掴んで新聞社を飛び出した。 

 "神の子"か、それとも悪魔か、、また消えた村人も気になる。国務省も

情報局も国連の緊急リモート会議も気になる。この地球に何が起こっているのか、国際ロケットの中でグレイシーは考えていた。

 

10

 「日本では子供の誘拐を失敗してしまい、スミマセン!」

 「フン、兎に角見つけろ。ヨーロッパにもその種族がいるぞ」とブラウン博士だ。

 何としてもあの少年を生け捕りにして、内臓を増殖させて世界中の金持ちのリクエストに応えなければいけない、、酸素が無くても生き抜けるように、、新しい人種を作るのだ。


 どうやらあの村民はノルウエイか北極圏を目指しているようだ、、密かな行動だが、目撃情報が出てきている。

 

 今やアメリカの新聞社の臨時特派員として無理やり連れてこられた坂本も興奮していた。ヘルシンキのカフェで二人が話をしている。

 「じゃあ、移動したのね?」とグレイシー。

 「多分、戦闘よりもうまく逃げることを考えているようなんだ」と坂本。

 「何で北極圏なのかな?」

 「俺には分からないがね」

 「その村人は喋れないの?」

 「喋らなかった、、でも最後に僕を助けてくれた少女はかすかに喋ったような気がする、、いづれにしても喋る必要がないのかも知れない」

 「言葉は、、でも分かるのよね?」

 「そう、僕が頭で思ったことは言わなくても分かっていたよ」

 「ひょっとすると言葉は必要ないのかも知れない、、そんな交信手段を持っているのかも知れないわね、、、喋る必要がないから、口や喉の器官が退歩しているかも」とグレイシーが言った。

 「そう言えば、、額が少し広い感じがした、、第3の目があって、それがセンサー、レーダー、交信手段になっているのかも知れない、、」坂本は想像した。

 「そして手で骨折を治してしまう、、本当なの?」

 「本当だ、病院の医者もとても不思議がっていた、、確かに骨折の痕があるが、すぐにくっ付いていた、、そんなこと有り得ないと、、だから、あまり他人に言っても信じて貰えなかった」

 「例の少年の話と共通するわね、、同類かな、、南米でも日本でも、、世界に拡散しているのか知れないわね」


 更にグレーシーが言った、、

 「どうもスイスのあるグループが少年を追いかけて誘拐しようとしているという情報があるんだ。世紀末を迎えて不老長寿や内臓改造や人間のサイボーグ化を研究して世界中の金持ち連中に売るつもりらしい」


 猿や他の生物と人間は何が違うのか、言葉が出来、インドでゼロの発見があってから数学が進歩し、物理、ITと応用されてきて、創造力が生まれて進歩してきたのだろう、、要は頭脳だけの違いか。  

 

 ロボットの違いはどうか、、ロボットも自分で燃料を作るプログラムを内臓し、感情や想像力というものを定義してインプットすれば人間同様、理解し合えることが出来るのではないか?では人間と高度なロボットと何が違うのか、人類と呼んでも良いのではないか?


 でもロボットは発明や独創的な発想は出来ないのではないか、、

 発明の95%以上は過去の組み合わせだとする説もある。しかし残りの5%は人間しか持てない発想力ではないか、所詮ロボットは論理に縛られて、過去の組み合わせしかアウトプット出来ないのでは。


 ならば、頭脳だけは人間で残りの体は機械のサイボーグは生命体と呼べるのか、人類だろうか、空を飛んだり出来る機能も持てる、それともロボットなのか??


 では、突然変異で人間とは異なる身体能力、機能を持つ人間は雪男と同じか、類人猿なのか新種の人類と考えるべきなのか??言葉を持たないとすると進化はなく退歩したと解釈されるべきか。

 

11

 ノルウエイの北、フィヨルドの山の中にあの老人も少女も、他の各地からも村民が集まってきていた、、そしてあの少年も、小さなフクロウも居た。

 悪魔狩り、異教徒狩りの新興宗教団体の一群も武器を持って集結していた。

 インターポール、各国軍、NATO軍なども集まっていた。坂本もグレイシーらマスコミも遠巻きにしていた。

 あの村民達はしきりにじっと空を仰いで見ていた。

 上空に円盤が数機、浮いて漂ってきたのだ。NATO空軍のロケット機が何機もスクランブル発進し。攻撃合図を待っているのだ。

 悪魔狩り軍団がドッと近づこうとしたが、何かのバリアーがあるのか、ある一定範囲からは近づけなかった。

 

 本当に悪魔の集団なのか、それとも善意の集団なのか、宗教集団なのか。


 それからおかしなことが起こった、、円盤が急に四方に散って飛んで行ってしまったのだ。そしてあの村民達は少し安堵して喜んでいるようだった。


 その中であの少女が坂本の方を向いてニコッと笑ったように見えた。

  

 その後の展開については坂本もよく覚えていない。誰もハッキリと分かっていないのだ。いつの間にかあの村民が消えたように居なくなったのだ、、、

 どこに移動したのだろうか??


 不思議なことに、それから世界中で大雨が降った、、そして砂漠化したアマゾンに今まで地球上には存在しなかった植物が猛烈な勢いで生育し始めた。光合成がすごい勢いで酸素を放出し始めていた、、地球の危機は少しだけ収まるかも知れない。

 

12 

 それから数ヶ月して久しぶりに坂本とグレイシーがニューヨークのバーで酒を飲んでいた。

 「あの村人達や少年はどこに行ったのかしらね」

 「俺には分からない、でも、また迫害を受けたり、そこから逃げたりしてるんじゃないかな、、」

 「そもそも移動はどうしてたんだろう?」

 「分からないづくしだね、アメリカの見解は?」

 「彼らは新人類種、、new spices じゃないかって、躍起になって国務省もエイリアン研究所も世界中を探しているわ、、明日の人類の姿があるのじゃないかって、、でも進化するんじゃなくて、、元々別の種なのかも知れないと。GOTTECHSは無理やり人類と掛け合わせるつもりよ、、でも何もまだ分からない」


 坂本達はあの村民達が円盤と必死に交信していたという推論だった。北極圏が交信に都合良かったか、、そして円盤、エイリアンが応答して、雨を降らせ、新種の植物を撒いた、、突然変異のように。

 ひょっとしてあれが神か、、人類もそうして生まれたのか、、日本の神話と同じか、、ひょっとして自分達と近いもの、いづれ時期が来れば交信出来るような人類も作ったのかも知れない。


 またあの少女、神の子と言われた少年と会えるだろうか?

 

 その時、坂本には”また会えるよ”と少女の声が聞こえた気がした。


終わり


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ニュースピーシーズ redstennis @khtennis1972

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る