第6話誓い

正式に片倉家との婚約が結ばれ、準備期間を用意された私は一年後嫁ぐことになる。


通常ならば婚約を結んで半年から一年の月日を置いて結婚になるのだが、半年後に挙式を挙げるように告げられてしまった。




そして現在、私達は二人きりで片倉家の縁側に座っていた。



何故に?


眉間に皺をよせながら難しい表情のまま一時間沈黙が続き、ようやく片倉様自身が沈黙を破ったのだった。


「蔦殿、顔合わせの時にも申しましたが…」


「はい」


「片倉の家は未だ家人も定まっておらず、郎党もろくに揃っておりません。

 ただ頼りにすべきは、小十郎のこの身ひとつと言っても過言ではない。決して安楽な生活は

 できぬでしょう。」


本当に律義過ぎる。

今でも罪悪感があるのかもしれない。



戦国の世では恋愛結婚はない。

庶民でも見合い結婚が多い中、思い思われる結婚は難しい。


責任感が強すぎるからこそ、気にしているのだろうと思っていた。


「この小十郎の身が及ぶ限り、蔦殿をお守りする事をお約束いたします」


「はい、ありがとうございます」



幸せにするとは言わないのが正直で好ましく思った。


義理でしかないのに、私にここまで気遣うなんて真面目過ぎるわ。

だからこそ史実では色々やらかして暴走してしまったのかもしれないと思うと少し気の毒に思った。



「小十郎は安易に蔦殿を幸せにすると約束できません」


「それは当然ではありませんか?」


「え?」


私の返答に驚くも私は続けた。


無礼かもしれないけど、私は誰かに幸せを与えてもらう気はない。



「幸せも不幸も誰かに与えられるものではありません。自分の手で幸福にならなくては…私のこれまでの一生は不幸ではありませんでしたし、これからもなりませぬ」



そう、例えどんな形であっても私は不幸に生きるつもりはない。

幸せな未来は自分で勝ち取って見せる。


「そうですね…確かに」



少し眉を下げて笑った片倉様はイケメンだった。


笑顔がすごく綺麗だった。

普段の表情が怖いので気づかないけど、笑うと本当に綺麗な人だった。


喜多様も美女だから当然か考える中。


私は祝言前に片倉家に花嫁修業をすることになったのだが。



「困りました」


「はい?」


「教えることがございませぬ」


悔しそうに言う喜多様に私は首をかしげるしかなかった。


「フン、喜多如きでは武家の娘たる教育ができるものか。既に大森城で行儀見習いで学んでおるわ。矢内家の奥向きも蔦が仕切っておるというのに」


「それにしても、米沢城の女中よりもずっと優秀ですね」


「大森城は…その、女中の数が少ないのです。侍女様も年齢がお若くない故に」


米沢城と異なり大森城の女中と侍女は多くない。

その為効率よく動かなくては仕事が終わらないのもあるが、元専業主婦のなせる業だった。



「姉上、何を落ち込んでおられるのです」


「片倉様?」


「蔦殿、せめて片倉様はやめていただきたいのだが」


丁度帰っていらした片倉様は私の呼び方を注意する。

確かに、結婚したら私も片倉になるのだからおかしいと思うけど。


「ではご主人様ですか?」


「えっ…それは」


「小十郎如きにそんな減り下る必要はないぞ!普通に小十郎で良いわ!」


「左月様は私に何の恨みが…」


「では景綱様とお呼びさせていただいても?それとも旦那様の方がよろしいですか?」


「なっ…」


そこで何故驚く?

何故顔を赤くする?


「小十郎、お前はどれだけ甲斐性がないのじゃ」


「我が弟ながら情けない」


「放っといてください!」


何故景綱様が真っ赤になり左月様と喜多様が呆れている理由を私は知らなかった。


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戦国一の鬼武将が奥方好きだった件~鬼の巣窟に嫁いだのにこんな供給聞いてません! ユウ @rebolution

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