ティーブレイク ~油事件~

 私は米粉で、パンだけでなくお菓子を作ることもある。


 その一つが「蒸しパン」なのだが、初めて作ったとき、苦くて薬臭い蒸しパンが出来上がった。


 当たり前だが、薬を入れたわけではない。どこぞの黒づくめの組織ではないので、そんなことは誓ってしていない。


 そうではなくて、オリーブオイルを使ったせいである。


 お菓子を作るとき、大抵はバターが使われるが、最近のお菓子の本は菜種油とかサラダ油などが使われるようになってきている。使っていたレシピもサラダ油が推奨されていたが、「香りがあまりないものであれば、好みの油で良い」と書かれていたので、私は調理する際に目に入りやすい位置にあった、オリーブオイルを入れてしまったのだ。


 だが、オリーブオイルは香りの強い油である。


 昔、「サラダにオリーブオイルをかけると体にいい」というので、一度やってみたことがあるのだが、薬に似たようなにおいがするので食べられなかった。ヨーロッパの人は当たり前にサラダに掛けているが、食べ慣れていない私にはとてもではないが難しかった。


 それを分かっていたのに、どうしてこうなってしまったのかというと、「火にかけると大丈夫」だと思ったからである。


 炒め物をする際に、オリーブオイルを使うことがあるのだが、加熱すると大抵強いにおいが消える。その要領で使ってみたのだが、お菓子はオリーブオイルのにおいを閉じ込めてしまうらしい。


 まるで薬を食べているのではないか、と思うくらい苦みのある蒸しパンだった。


 においも酷いが、食べると口がひん曲がる。噛み方も、自分がラクダとかラマになっているんじゃないかと思うくらい、へんてこりんである自覚がある。いや、彼らの場合は美味しく草を食べているのだから、状況は全く違うけれど。


 それから食べていると実写映画で見た『不思議の国のアリス』を思い出した。何故だろう。私にとってアリスが食べた体を大きくするケーキは、想像できない味だったため、こんな風な変な味がするんじゃなかろうかと、思ったせいかもしれない。


「オリーブオイルを入れると、こんな風になるんだ……」ということを身をもって体験したことで、私の経験値は幾分上がったとは思う。きっと二度とお菓子を作るときに、オリーブオイルを入れることはないだろうから……。


 しかし、この失敗は避けて通れるなら避けた方がいい。皆さん、お菓子を作るときは「油」に気をつけて。


<お知らせ>

 5回目の米粉パンの写真を近況ノートに掲載しました。

 https://kakuyomu.jp/users/Pleiades_Yuri/news/16816927860702327519

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