6_彼女の家

俺は蒼さん(彼女)のお母さんの誘いで、蒼さんの家に来ていた。

行ったはいいけど、家に着いたら肝心のお母さんは不在。


部屋で蒼さんといちゃついているところを、帰ってきた妹の陽葉里(ひより)ちゃんによってお母さんに告げ口されたところだ。


絶体絶命!



「ママがリビングにおいでって」



死刑宣告を伝聞で聞いた!

恐る恐るリビングに降りて行った。



リビングではお母さんがテーブルについていた。

蒼さんはキッチンで料理をしていて、妹の陽葉里(ひより)ちゃんはソファでテレビを見ていた。


俺はどこに座れば!?



「あ、橋本くん、こっちどうぞ」



お母さんにテーブルにつくよう促された。

そしたら、そこに座るしかない。



「……」


「……」



世間一般の方々は、彼女の親とは何を話していらっしゃるのでしょうか?

俺は既に自己紹介は終えたので、話すことは終了しています。



「橋本くんが……」



お母さんの方が先に話し始めてくれた。

助かった。

あのまま沈黙が続いたら、5分で胃に穴が開いてたわ……



「蒼にバイトを減らす様に言ってくれたのよね?」



そう言えば、そんなこともあった。



「減らすように言ったっていうか、無理しないようにって……」


「やっぱり!」



お母さんが手を合わせて喜んだ。

てか、お母さん若いんだよ!

お姉さんかと思ったわ。


そして、笑顔がかわいいんだよ!

それが蒼さんにしっかり遺伝してるわ……



「私が言っても全然ダメで……なにか欲しいものがあるのかもって思って強く言えなかったの」


「そ、そうなんですか」


「学校で貧血で倒れたって聞いたから心配になって……」



そりゃあそうだろうなぁ。



「一度会ってお礼が言いたかったの!」



「はあ…」



俺はてっきり怒られると思って降りてきたんだが……



「ママ!橋本くんに変なこと言ってないでしょうね!」



蒼さんがキッチンから顔を出した。

カウンターキッチンなんだけど、中の音はあんまり聞こえない。

多分、こっちの会話も聞こえないんだろうなぁ。



「はいはい。大丈夫だから、お夕飯つくってね。今日は橋本くんも食べていけるんでしょ?」


「え?あ……」



そんな話になってんの?

初耳だけど?

まあ、それならそれで……



「大丈夫だよね?」



確認するように蒼さんが聞いた。

俺に伝え忘れたな?



「大丈夫」


「やた!」



蒼さんがキッチンに戻った。



「あの子、見てないと無理するから。橋本くんには感謝してるの」



お母さんが小さい声で、蒼さんには聞こえないように言った。



俺も軽く頭だけ下げて返事をしといた。


「……」


「……」



はい、また話すことなくなりました!

とりあえず、少し冷めてきたコーヒーに口を付けた。



「あと、一つだけお願いがあるんだけど……」



俺は目だけで『何ですか?』と視線をお母さんに送った。



「高校卒業まではしっかり避妊してもらえると……」


(ぶー!)


「わっ!ふきん!ふきん!」


「なになに!?どうしたの!」


とんでもないことを言うお母さんだった……






■夕ご飯にお呼ばれ

夕飯にお呼ばれした。

リビングのテーブルで食べるのだが、やっぱり、お母さんと蒼さんと妹さんの3人だけ。

お父さんはいなかった。


4人掛けのテーブルなので、俺が蒼さんの隣に座った。



「どれくらい食べられる?大盛り?」


「うん、じゃあ、大盛りで」



今日の夕ご飯はカレーだった。

蒼さんがご飯を多めによそってくれて、ルーもたっぷりかけてくれた。


テーブルに載った俺のカレーは、他の人のより大きくて、なんか恥ずかしかった。



「男の子はいっぱい食べられていいわねぇ」



お母さんが俺の分のカレーを見てしみじみ言った。



「あ、スプーンです。どうぞ」



妹さんもスプーンを持ってきてくれた。

俺だけ座っているだけなので、なんか居心地が悪い。

こういう場合って何かするべきなのだろうか。





「「「「いただきます」」」」


一口カレーを…うまい!

思わず蒼さんの方を見てしまった。



「どう?どうなの?どっち!?」


「うまい!」


「よかったー」



マジで上手い。

なにこれ。

ダシとか使ってる感じ!?


市販のカレールーなのは間違いないけど、確実にうちのカレーよりうまい。



「うちはね、ご飯は大体、蒼と陽葉里(ひより)が作ってくれるの」



お母さんが話し始めた。



「二人とも食いしん坊だから、お料理がおいしくなって……」


「変なこと言うなし!」



蒼さんが止めに入った。



「あの……」



今度は陽葉里ちゃんだ。



「なに?」



下向いてたけど、多分、俺に話しかけたに違いない。



「私……橋本さんのこと『お兄ちゃん』って呼んだ方がいいですか?」


「なっ……」


「……//////」



いや、蒼さんはツッコんで!そこ!



「あらあら、陽葉里はお兄ちゃん欲しいって言ってたものねぇ」


「うん、お兄ちゃんできたら、『おでこ、つーん』をやってもらうの」



なんだその『おでこ、つーん』とは!?



「じゃあ、橋本くんと、もっと仲良くならないとね」


「うん!」






乗り切った!

あの変な空気になった食卓を俺は乗り切った!


あんなにうまい料理なのに、居心地の悪さ!

なんかめちゃくちゃ、もてはやされてたぞ俺。


そんな良い人キャラじゃないから、なんて返していいか……


お母さんの『この人なら、うちの子がいうことを聞く』みたいな期待も辛い。

陽葉里ちゃんの漠然とした『お兄ちゃん』に対するあこがれも痛い。


どちらも答えるだけのキャパが俺にはない。






食べた後、再び蒼さんの部屋に呼ばれたので来た。

……というか、避難。


リビングには俺の居場所はないし、あの空気の中いる鉄のメンタルはない。




例によってベッドに座っている。

しかも、また横並びで。


勉強机の椅子もある訳で……



「はぁー、人気だったね」


「妙にな」


「いや~、彼氏が親に紹介できるような人で良かったわぁ」


「いや、俺はそんなに誇れるような人間じゃ……」


「いいじゃん?私がそう思ってるんだし?」



蒼さんが腕を組んできた。

なんか、ヒラヒラした薄着だから、お胸がめちゃくちゃ腕にやわらかい感触を与えてくる。

これを無視できるほど、童貞は人間ができてない。



「あれ?どしたの?テレた?」


「いや……別に……」


「あれ?どしたの?なんか変じゃない?」



顔を覗き込んでくる蒼さん。



「いや、別に変じゃないし」



顔を背ける俺。



「でも、なんかさぁ……」



前から蒼さんが近づくから……


(どさっ)蒼さんに押し倒されたような格好で、俺がベッドの上に倒れた。



「あ……」



固まる二人。

俺は蒼さんを見ているし、蒼さんも俺を見ている。


なんとなく、蒼さんの頭に手を回して、顔を近づけて、キスした。

今日、2回目。


どんなキスが正しいのか、よくわからないけど、唇と唇をくっつけた。

でも、それだけじゃ、気持ちが収まらなくて、頭を抱きしめた。


その後…



「うーん……」



蒼さんがうなっている。



「どうしたの?」


「マンガとかで二人っきりになったとき、彼氏が彼女を押し倒す気持ちが分かった」


「どういうこと?」


「さっき、橋本くんと目が合った時、『あ、今が押し倒すチャンスだ』って思った」



押し倒す方の気持ち!



「ん?やっぱり押し倒しておく?」



蒼さんが、ベッドに倒れ込む。



「1階にお母さんと陽葉里ちゃんいるのに押し倒す訳ないだろ!」


「あ、じゃあ、二人っきりなら押し倒すんだ!」



ニマニマしてる。

いつもの調子が出てきたみたい。



「それはまあ…やぶさかではない…というか…」




なんとなく視線を感じてドアを見たら、ドアが少し開いていた。

そして、そこから陽葉里ちゃんが覗いているのが見えた。


俺の視線に気づくと、ふっと姿を消し、タンタンタンタンと勢いよく階段を降りて行く音が聞こえたかと思ったら……



「ママ―!今度はキスしてたー!」


「あらあら、そうなの?邪魔したらダメよ?」


「大丈夫!気づかれないように、ちゃんとドア閉めてきた!」



いや、だから気づいてるから!

そして、最高に気まずいから!!

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【なろう日間1位獲得】クラスの白ギャルがニマニマしながら俺に彼女を紹介してくる【1話目読了後タイトルの本当の意味が分かる!】 猫カレーฅ^•ω•^ฅ @nekocurry

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