第7話 迷子になった森で出会った虫人が話を聞かな過ぎてハード

 今は、みんなで大都市を目指している最中なんだが、僕はみんなとはぐれてしまい迷子になってしまった。

 みんなが僕を置いて行ったことにパニックになり、自分がどっちから来たのかすらわからなくなってしまった。

 なにせ、同じような木々が無数にある森。どこを見ても同じような木しかない森だからね。

 僕が休憩中にみんなと少し離れたところに小便を、たっしょんをしに行っている間に僕を置いて出発するとか...ないだろそれは。


 ってか気づけよ。仲間だったらふつう気づくだろ。

 なんだよ、僕は仲間じゃないってか。ちくしょう。


 なんか懐かしいな。

 見知らぬ土地で、周りは辺り一面同じ景色。

 思い出すな、転生した時のことを。


 まあ、あの時ほど絶望的な状況じゃないけど。

 今回は、仲間がいるところ、グレーンがある近くの村、と正解ルートがいくつかある。

 それに、間違った道を進んでいても、虫人の誰かには会えると思うし、最悪一人でも大都市に着けるしな。

 まあ地図を持ってないからどう進めばいいかわからないし、どの方向に進んでもいいから木の棒倒してどの方向に進むか決めるか。


 ちょうどいい長さの木の棒を見つけて、地面に立てる。

 ゆっくり慎重に手を離したら、木の棒は倒れず、ふつうに立ってしまった。


 ・・・・。


 一向に倒れる気配がない。

 仕方ないからもう一回やるかと思った矢先、風が吹き木の棒は倒れた。

 よし、決まりだな。

 僕は木の棒が倒れた方向に歩き始めた。


 二時間くらい歩いたところから、妙に野生の虫が多く出てくる。

 それも、でかい虫ばかり。

 しかも僕を襲ってくる。

 その虫たちを携帯していた光線銃で撃ち落としながら、さらに森を進んでいく。

 僕を襲う虫が出だしてから一時間したころ、急に人に見られていると感じて、視線を感じた方を見る。

 だが、何も変わったところはなかったため、また森を進んでいく。


 しばらく進むと、また視線を感じ、今度は視線を感じた方角に光線銃を撃った。

 すると、遠くから虫人が両手を挙げてこちらにやって来た。

 近づいてきてわかったが、これまで見たことのない虫人だ。何の虫なのかまったくわからない。

 クワガタが持っている大きな顎のようなものが頭の上についており、背中にはトンボのような羽を持っている虫人だ。


「おまえは何者だ。なぜ僕の後をつけていた。」

「俺はウェンド族のゼフだ。樹海の虫たちの見張りをしていたら、虫たちを殺しまくってどんどん村の方に向かっていくやつがいたから後をつけていたんだ。」

「なるほど。」

「なあ、そろそろ銃をしまってくれないか。俺は別に危害を加えるつもりはない。」

「はぁー。わかった。その代わり、僕を村まで案内して泊めてくれ。」

「わかった。それでいい。だから、銃を向けるのをやめてくれ。」


 銃をしまい、村まで案内させる。


「いやー、ほんとびっくりしたぜ。まさか、あの距離で気づかれるとは。それにしても、いきなり銃撃ってくるとかおまえ危なすぎるわ。俺たちの一族じゃなかったら死んでるぜあれ。だから、もう不用意に銃なんて撃つなよ。」


 こいつ自分が危険じゃなくなったとたんめっちゃ喋るじゃん。

 まあいいけど。


「あっ、そういえば俺は名前言ったけど、俺おまえの名前聞いてなかったわ。おまえ名前は?」

「リオ。」

「へえー、リオか。いい名前だな。なあリオ、おまえなんで誰も寄りつかないこの樹海に来たんだ。虫人ですら来ないのに。それに、なんでこっち側に人間がいるんだ。」

「それは――」

「いやー、でもリオって強いんだな。あの虫たちは普通の虫よりでかいのに、普通の虫より速いんだよ。なのにいとも簡単に倒してよ。すっげえなリオ。」


 こいつ、全然話聞かねぇじゃん。おまえが聞いてきたから答えてやってたのに、急にまた喋り始めやがって。


 村に着くまでゼフは一方的に喋り続けた。

 村に着いてゼフの家に着くまでの間、村にいたゼフと同じ一族の虫人たちにめちゃくちゃ見られた。

 ゼフの家は、ゼフの家に着くまでに見てきた家と同じく、木の上に家があった。

 ゼフの村では、木の上に家があり、木々の間に橋を架けていて移動しやすくしてある。


 ゼフが晩御飯を作っている間に風呂に入らせてもらった。

 窓はなく、壁も低いため露天風呂みたいになっている。

 それに、湯船も何の木で作られた物かはわからないが、檜風呂を連想させる。

 死ぬ前、京都に旅行に行っていたときも旅館で檜風呂とか露天風呂に入ったことを思い出す。高級旅館のそれと同じとまでは言えないが、湯加減もよく、程よく風が吹いていて、とても気持ちよかった。


 ゼフは一人暮らしのため、ベッドが一つだった。

 ゼフは一緒にベッドで寝ようと誘ってきたが、男二人でベッドで寝るのは狭いし普通に嫌だったから、僕はゼフの誘いを丁重に断って床で寝た。


 朝目が覚めると、ちょうどゼフが家を出ようとしているところだった。


「ゼフ、どこか行くのか?」

「おう、起きたかリオ。俺は仕事に行ってくる。」

「どこに?」

「まあ、好きに過ごしていてくれ。」

「いつ帰って来るんだ?」

「じゃあ、いってくる。」

「ちょっ、ゼフおまっ。」


 寝起きというのと、さすがに頭に来て大声を出してしまった。


「おいゼフ、おまえいい加減に人の話を聞け。」


 だが、ゼフはもうそこにはいなかった。

 僕の声がさわやかな朝にむなしく響いただけだった。

 僕はどうすればいいんだ。

 好きに過ごしててと言われても、知らない場所だし、することもないし。

 ほんと何なんだよもう。


 悪い奴ではないが、ゼフが僕の話を聞かな過ぎてハードだ。


 


 


 

 

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二度目の人生はまあまあハード~転生先は神様に選んでもらった世界~ 空音 隼 @hoshiduki-75

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