虫人の星編

第6話 通訳の仕事は思ったよりハード

 グレーンで星を出て二か月。

 ついに他の星が見えてきた。

 今から上陸する星は緑色に見える。

 おそらく、自然豊かな星なのだろう。

 

 グレーンは無事に着陸した。

 この星ですることは、裏切った人間たちの情報集めだ。

 セイナが超能力でみんなとグレーンに目に見えないバリアを張る。

 これで、すでにステルスモードで外から見えなくなっているグレーンを守る準備が整い、全員で星での調査を始めた。

 まず、この星に着陸する際に見つけた町を目指す。


 森を歩いていると開けた場所に町が見えてきた。

 近づいていくと人がいるのも確認できる。


 しかし、人ではあるが人間ではない。


 正式名称はわからないが、見た目で言うなら、「虫人」が一番しっくりくるだろう。

 なんせ町で生活していたのは、人型のアリ、カブトムシ、ハチ、カマキリ、チョウチョ、トンボ、などだったからな。


 僕たちが町の近くで驚いて足を止めていると、虫人たちも僕らの存在に気づき驚いていた。双方ともに警戒しながら距離を詰めていく。

 そして、ライネルが話しかける。


「すまない、いくつか尋ねたいことがあるのだが、いいだろうか?」


 すると、虫人たちは仲間内で少し話してから応答する。


「―――――――――。」

「すまん、もう一度言ってくれないか。何もわからなかった。」


 僕たちに虫人の言葉が通じてないようにおそらく、ライネルの言葉も虫人たちには伝わってないだろう。

 僕が、転生してきたときみたいに勝手に言葉がわかるようになれば、虫人たちと話せるようになるけど。

 そう思っていると、虫人たちの話している言葉が徐々にわかるようになってきた。

 やはり、言葉がすぐわかるようになるのは、神様に与えてもらった能力の効果の一つとみて間違いないだろう。


「ライネル、この人たちの言葉わかるようになったから、僕が通訳するよ。」

「ほんとかリオ!助かる。頼むぜ。」

「おう、任せろと言いたいところだけど、通訳なんて初めてだからそこまで期待しないでくれよ。」

「わかったよ。それで、彼らはなんて?」


 虫人たちにさっきなんて言ったのかを聞く。

 そして、それをみんなに伝える。


「どうしてこっち側に人間がいるのかって言ってる。」

「こっち側っていうのはどういうことだ。」

「ここの反対側にこの星で一番大きな都市があるらしい。それで、違う星から人が来るときはみんなあっちに行くし、こっち側には誰も来ないらしい。」

「ということは、この近くにはあいつらは来てないことになるな。」

「うん。もし来ているとしたら、この真裏にある都市だろうね。」

「リオ、彼らにその都市への行き方を聞いてくれるか。あとお礼も。」

「了解。リーダー。」


 それから、翻訳の機械が出来るまで僕は大忙しだった。

 一週間、休む暇なくみんなの通訳をした。


「あの、ちょっといいですか?」

「なんだよ、っておまえらもか。おまえらも僕に通訳させるつもりなのか。」

「だって、あなたがいないと我々もあなたたちと話ができないですから。」

「まじかよ。」


 グレーンの仲間だけでなく、虫人が話しかける時にも僕は必要だったし、寝ているとき以外は基本的にずっと通訳をしていた。

 それに、一日中虫人の町を走り回らないといけなかったから、会社やグレーンで仕事している時より忙しかったかもしれない。


 みんなの役に立つからと思って、自ら志願して通訳の仕事をしたわけだけど、思ったよりハードだった。


 

 

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