懐古

@hugehuman

懐古

懐古とは、いつか自分が体験した昔馴染みを思い出すことである。それは当時の自分が好きだった場所や雰囲気、似た境遇な空間を五感で感じた時によく起こるものだ。その時の感情は何とも表しづらい、望郷とも取れる感情の客観視。客観視と言っても、自分自身を冷静にさせるためや落ち着かせるものではなく、頭の中で実際に自分の後ろ姿を見ていることである。今を考えているものには決してできない、今に対する諦めともとれる感情である。懐古は、とても恐ろしいものだと私は考える。古く懐かしむことに慣れてしまえば、あの時あの瞬間の自分に戻ることが出来てしまうからだ。つまり、今を簡単に捨てさせることが出来るということだ。

今、というのは未来でもあるがそれと同時に不安でもある。なぜなら、未来は流動的で制御できないものであるからだ。不安は恐怖になり、今を恐れさせ、ここではないどこかを求めるようになる。今を生きる辛さから逃げるようにして、小学生の放課後の鬼ごっこをしている瞬間を思い出すのだ。

また、懐古は、過去の体験によって自分を守ってくれる親のようなものだ。孤独を感じ、まるで自分が赤子のように1人で歩けなくなったと感じる時、後ろを振り向くと我が子を慈しむ目で見ている親のようである。手を伸ばすとすぐに握り返してくれる。母親である。その温もりがまた今を忘れさせてしまうのだ。

私は、懐古を依存してしまう可能性のある危険な感情だと考える。今を忘れさせ、自分を簡単に子供にしてしまう恐ろしいものだと。しかし、懐古というのは今と向き合うための対照的で必要なものでもあると考える。今は過去からの繋ぎものであり、今を感じられるのも過去があるからである。だからこそ、そんな過去を思い出し、今を感じられるものである懐古は、側に信頼出来るものがいる、自分にとっての人生そのものである。


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