ラブコメ主人公の弟になんてなるもんじゃない


 「アンタは!?」

 「ああ゛ぁ!? 何、邪魔してんじゃねよガキが」

「うっせぇよ、万年SE〇しか頭にねぇ発情猿が。そんなので女が釣れるわけねぇだろ。やらりたいなら、タップ〇でも使ってろ」


 突然現れた俺に困惑する四人。

 俺は掴んだ腕を、思いっきり握りしめる。


「いってぇ!」

「手離せよ。ガキが」


 握力六十という中学生にしては高めの握力によって、握りしめられたナンパAが苦悶の表情を浮かべると、もう一人のナンパBが俺を剥がそうと迫ってくる。


「この状況で離すわけないだろう」


 俺はナンパ野郎Aの腕を掴んだまま、冷静に相手の動きを観察する。そして、右足が上がったところでそれを払い転がした。


「ッッテ!」

「こんにゃろ、よくも浩二を」


 ナンパBがやられたのを見て、痛みを忘れて激高するナンパA。掴まれてない方の腕を振り上げる。

 

「こいつの名前とかどうでもいいわ」


 腕が振り下ろされる前に、俺はそう答えるとナンパAに背負い投げを決めた。


「一本。後一本で試合終了だな。ほら、かかって来いよ。お前らが望むなら何回でも付き合ってやる」


 クイクイっと、片手を動かしナンパ野郎達を挑発する。


「ッチ!マジで萎えた。帰るぞ」

「暴力とかないわ~」


 女に対して本気なら、この程度のことをされても諦めず向かってくるが所詮はナンパ野郎。そんな根性があるわけもなく、いそいそと逃げって行った。


 「……ッチ。そんなので引き下がるってんなら、そもそも話しかけて来んな雑魚が。面倒くせぇ」


 誰にも聞こえない程度の声量で毒突くと、俺は二人の方に向き直った。


「大丈夫だった?透華ねぇ、白銀さん」


 ずっと様子を見ていたから、何もされていないかは確認していたから分かっているが、念のためだ。

 白銀の方はあまり意識していなかったため一応確認を取る。


「エッ、えぇ、全然問題にいわひよ」

「…髪すら触られてない。ありがとう、ユウ」


頬を紅く染め、若干挙動不審白銀といつも通りに声色で答える透華ねぇ。これなら、問題は無さそうだ。


「そっか。なら、良かった。じゃあ、俺はこれで」

「ちょっと待ちなさいよ!」


 二人の買い物を邪魔するのも悪いと思い、離れようとすると白銀に引き止められた。


「何ですか?」


 俺はどうしたのかと、首を傾げる。


「あ、あの、ありがとう。助けてくれて…助かったわ」

「どういたしまして。無事なら良かったです。この後も、兄貴とのデート楽しんでください」


お礼を受け取ると、俺は邪魔するのも悪いと思い離れようとするが、今度は腕を掴まれ引き止められた。


「ちょっと!何でまたすぐ離れようとするのよ!?まだ話は終わってないわ」

「そうですか。他に何か?」

「あ、あ、あの。アンタの連絡先を教えなさい!後日、またお礼に行くから」

「兄貴の知ってるなら必要なくないです…「いいから、寄越しなさい!」…あっ、はい」


あまりの剣幕に押され、俺は白銀とlincを交換した。すると、嬉しそうに顔を綻ばせる白銀。どうして、そんな顔をするのか分からず俺はまた首を傾げるのだった。



その後、兄貴と白銀デートは遥ねぇの介入により中断。その場にいた五人で遊ぶことになり、夕方になったことでお開きとなった。

 その間に、やたら白銀が話しかけて来たのはよく分からなかったが。


 俺は家に帰ると、すぐ様部屋に戻りベッドに寝転び目を閉じる。そして、微睡出したところで部屋の窓が開いた。

 

「ユウ起きてる?」


そう言って、隣の家の窓からやって来たのは透華ねぇ。

 何故、そんな場所から彼女が現れるのかというと、兄貴と遥ねぇの部屋がお互い窓から移動できるように、俺と透華ねぇの部屋も移動できるからだ。


「どうした?いきなり。今日はこっちに来ないんじゃなかったのか?」

「……何となく気分でダメだった?」

「駄目じゃねえよ」


瞼を開け、透華の側に行くと俺は彼女に抱きついた。

 幼馴染と言えど、こんなことをするのは幼馴染の範疇を超えていると思われるだろう。


 だが、問題ない。

 

 何故なら、俺と透華の関係は幼馴染ではないのだから。

 

 透華は俺の彼女だ。

 数年前兄貴が助けるはずの、イジメを俺が解決してしまったことで好意を持たれ、すぐに告白。透華が負けヒロインであることを知っていたから、俺は色々考えて末に「どうせ選ばれないなら」と了承。晴れて、恋人同士となり現在も付き合っている。 

 が、恋人関係だとバレると色んな人に茶化されそうでまだ誰も俺達が付き合っていることを知らない。


 やはり、との触れ合いはいい。とても気分が落ち着いて、リラックス出来る。


「……要らない心配だったかな?」

「ん?」

「何でもない。…今日カッコよかったよ」

「そうか。なら、彼氏として面子はしっかり守られたな」

「ユウは、いつでもカッコいいからそんなこと気にしなくて大丈夫」

「……どうも」

「照れてる。可愛い」

「うっせえ」

「ふふふっ。そうだ…ユウ。これ、少し早いけど誕生日プレゼント」


 透華はそう言うと、袋を取り出した。

 

「…ありがとう」


 礼を言い、袋を開けるとそこには先程白銀と一緒に見ていた服とネックレスが入っていた。どうやら、彼女が原作と違う動きをしたのはこれを買うためだったようだ。

 そう考えると、今日俺が連れ出されたことも腑に落ちた。


 自業自得か。


「……ありがとう、透華。大切にするよ」

「そうしてれると、嬉しい。後、もう一つプレゼント」


  透華はそう言うと、俺の唇に自身の唇を重ねる。

 プレゼントとしてもらった口づけは、今までしたどれよりも激しかった


「どうしたんだ?」


その理由を尋ねてみると、


「…秘密」


透華はそう言って、可笑しそうに笑った。





後日


 またも、兄貴が部屋に訪ねてきて相談をしてきた。

 話を聞く前は、大したものではないだろう。そう思っていたが、彼が口を開いた瞬間俺は驚愕した。


「俺、透華のことが好きなんだ。付き合うのに協力してくれ」


兄貴の話を聞いた瞬間、俺は思わず天井を眺めた。


 何でこうなった!?


 ラブコメ主人公の弟になんてなるもんじゃない。


 変にストーリーと絡めてしまう立ち位置だから、欲が出てヒロインをつい助けてしまったり、手を出てしまう。そうしたら、こんな風に面倒臭いことになる。


 本当、ラブコメ主人公の弟になんてなるもんじゃない。



 


 

 


 


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