第10話・縁とは、神様からのサプライズ。

昨日ふと話題に出た、映画NANA。その挿入歌である「Endless Story」を昨日は何度も聞きながら、今日も目覚めの一曲として味わっている自分がいる。


妻とまだ結婚する前。付き合っている時に見ていたのがNANAという映画。とても印象深い映画だったこともあって、そこに紐ずいた昔の記憶も思い出していきながら、昨夜は妻と当時を振り返る話もしていた。


「あの頃のパパは、カッコよかったな。」


「あの頃のって、今はあかんみたいやな・・・苦笑」


何気ない話から生まれた言葉に、すかさず突っ込みたくなる。


「付き合ってた時は多くを語らんし、笑顔も見せへんようなとっつきにくい人間やったけど、それはそれで好きやったからな。今はなんか、いつもヘラヘラしてるし、ナヨナヨした感じもするから、そこは嫌やなねん。」


その妻の言葉が、また昔の記憶を掘り起こす。確かに昔は『人斬り侍』と愛称がつくほどに目つきが鋭く寡黙な人間だった。そこから心理学を学ぶにつれてマイルドになることで、今のパーソナリティーが形成されている。ある意味、今の伊藤勇司は心理学を学び始めてからの伊藤勇司なので、後天的に身につけたものだ。


「確かに、昔の自分が素の自分やわ。そう思ったら、素の自分やったらあかんと思って、今の自分を作っていった部分はあるな。でも、それが意外と窮屈に感じる部分もあったりして、この13年間以上は素の自分でいられる時間がめっちゃ少なかったな。」


「うん、それは、ほんとそう思ってた。これからはもっと、素でいっていいんちゃう?」


映画NANAをきっかけに、夫婦でいつもと違う会話が生まれていった。改めて「Endless Story」にある「強がることに疲れたの」という歌詞を味わう自分もいる。


朝6時のサンライズカフェのオープンの前に、改めてyoutubeで曲を流していく。歌は大切な記憶を思い出させてくれる最高のきっかけになるものだ。


「それでは、時間になりましたので、今日も始めていきましょうか!」


昨日までは第1クレド「愛」をテーマに『全てを愛おしく、全てを愛おしむ。』というフレーズを軸にして、イメージ、感情、言語の問いを3日に分けて答えあっていた。


「では、またみんなで振り返りをしていきましょう。今日は、Locoさんは大丈夫でしょうか?」


ここ数日朝には参加されていなかったLocoさんが、久しぶりに顔を出してくれているのを見つけ、ぜひ話して欲しいなと思って声をかける。


「はい、大丈夫で〜す。いやー、あのですねー。もう昨日は衝撃で、起きたらお昼になっていたくらいに爆睡してしまったんですよー。もう、なんていうか、バイトは休みだったんで良かったのですが、一日カオスでしたねー。人間にならずに過ごしていました。こんなこと初めてのことで、衝撃でして・・・。」


「Locoさん、ありがとうございます。そうだったのですね(笑)2月はLocoさんにとっても転機になるような1ヶ月だからこそ、何か変容が起きているのかもしれませんね。では、せっかくなの今日は最後にLocoさんに問いを作っていただきましょうか!」


「なもなもでーす!」


サンライズカフェはオンラインで展開しているからこそ、日本全国からご参加いただいている。各地の方言なども聞けるシーンがあるのがいつも興味深い。


「それでは、今日からは「縁」をテーマに3日間過ごしていきましょう。『縁から始まり、縁から発展する。』これが、第2クレドです。今日は縁のイメージの質問として、未来まで大切なご縁が続くことをイメージして問いに答えていきましょう。」


オンラインでありながらも、同じ時を過ごしているこの時間もまた縁。出逢いが末長いご縁に変わる秘訣が、それぞれが答える問いの答えに隠されている。


「では、またブレイクアウトルームに振り分けていきますので、シェアをよろしくお願いしまーす!」


縁とは、日本人的な独特な表現かもしれない。世界的に見ても、縁を適切に表現する言葉が難しい。そのことを、100カ国以上の外国人の方々に日本語を教えている日本語教師のblue coffeeさんがチャットでコメントしてくださっていた。


「みなさん、ありがとうごあいます!それぞれのシェアが味わい深くて、このテーマで問いを考えるのは素晴らしいですね!では、冒頭でお伝えしていた通り、今日はLocoさんオリジナルの問いをみんなで考えていきましょう!」


「わかりました。いや、実は縁で問いを作るのが、結構難しいなと思って・・・。ずっとここまでの時間でも、考えてたんですが。この問いでもいいですか?あなたにとって、縁とはなんですか?という問いです。」


「いいですね〜。それぞれが考える縁という定義が明確になるので、ぜひ!では、今日のグループで一緒になったメンバーも縁だと思いますので、同じグループでシェアをしていきましょう!」


改めてブレイクアウトルームに振り分けながら、その間に俺も縁について考えていた。昨日からの流れも相まってか、妻との縁が生まれた当時のことが頭に浮かぶ。そこでふと降りてきた言葉。それが『縁とは、神様からのサプライズ。』という言葉だった。


「今繋がっているご縁、末永く続いているご縁は、ほんと狙って繋がったものじゃないよなぁ。そしてその全てのご縁が俺の人生を豊かにしてくれている、ほんと神様からのサプライズって感じがするわ〜。」


直感的に降りてきた言葉を、そのまま筆ペンで紙に書き出す。その文字を見ながら、改めて味わい深くそのフレーズを感じていた。


「すいませーん、ボタン押し間違えて、自分が話している途中で抜けてしまいました・・・。」


俺が物思いにふけっていると、まだシェアタイムが終わっていない段階で、突如現れたのは、もう一人今日久しぶりに顔出しして朝から参加してくださっていた、三咲さんだった。


「大丈夫です!ブレイクアウトルームあるあるですね(笑)あと15秒ほどで、みなさんも戻ってきますよ。」


こうして、先に戻ってきた三咲さんを起点にして、最後のシェアをしていく。その皆様の言葉一つ一つが奥深いものだった。


「それでは最後に、今日の問いを作ってくださったLocoさんに感想を伺って終わりにしましょうか。自分で問いを作ってみて、そして皆さんの答えを聞いていかがでしたか?」


「はい、ありがとうございます。正直いって、問いが思いつかなくて、そもそも縁ってどういうことかと思ったんで、そのまま問いにしたんですが、こんなんでいいのかなーって、最初思ってたんです。でも、みなさんの問いを聞いて素晴らしくて、この問いで良かったなーって思えました!」


「ありがとうございます!まさに、ですね!素晴らしい問いをありがとうございました!では、今日の問いで出てきた縁に関する言葉を軸に、今日も過ごしていきましょう。それでは、いってらっしゃい!!」


縁から始まり、縁から発展する。このクレドから生まれる言葉は、今年のキーワードにもなるかもしれない。


ご縁とは、神様からのサプライズ。その言葉を改めて眺めながら、俺は今日の小説を書き始めていった。

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