第3話 従属会議
「それでは!第……何回だっけ……忘れたけど、従属会議を開催します!!」
元気ハツラツなメイド服を着ている少女の声で、その会議は始まった。
カノン様との契約をした後、部屋に戻るとすでに従属である二人が居座っていた。
定期的に行われているこの会議のために、わざわざ集まっていたのだろう。
現に部屋に戻って間もなく、開催を余儀なくされた。この従属会議の目的は、定期報告を兼ねた従属同士の交流の場。だからこそ、集まっていた二人のうち一人はすでにテンションがハイになっていた。
「おい。勝手に始めるのはいいが、定期報告だということを忘れるなよ」
「もっちろんですよ。と言ってもそこまで報告することも無いんですどねぇ」
そう言って、メイドであるテルは一瞬でこの会議の目的をへし折ってきた。
しかも悪びれている様子が一切ない。ホントに何もなかったのだろか。
いや、さすがになんかあるだろ……ないと困るのこっちなんだからな!
「こら、テル。何も無いはないでしょう。ハル様に失礼ですよ」
そんな俺の心情を察してか、もう一人のメイドでテルの姉であるラルがテルの意見を批判する。
「何かあるって言うけど、今週なんかあったっけ……? 」
「えーっと。例えば……そうですね……何も……ありませんでしたね……」
いや、ないんかい!!
少しはフォローしてくれると思ったが、ラルの方も今週は特に何も無かったようで、顎に手を当てて数秒間考えた後、結局何も思い浮かんでいなかった。
そんな二人を嘘だろ……というような目で見た。
「じゃ、じゃあ!別の話に変えましょう!」
「……別の話? 」
「はい。今日の契約の内容とかですよ!」
気まずい空気を作ったことが申し訳なかったのか、今度はテルが別の話題を出した。
内容は、今日。今さっき起きたことだ。
契約は、二人もその場で見ていたが、何かおかしいところでもあったのだろうか。
自分では気づかないところもあるだろうから、ここは大人しくテルの議題に乗っ取ることにした。
「あ。それ、私も詳しく聞きたいと思ってたんですよねぇ」
どうやらラルもその議題でやっていくようだ。
「そもそもの話、聞きたかったんですけど、魔界の安定って結構進んでませんか? 」
「何言ってんだお前。」
あまりにも的外れなテルの意見に俺は呆れた声が出ている。
まぁ、カノン様の仕事を近くで見たら魔界の安定化のために日々とんでもない量の仕事をこなしてるように思うんだろうが、実際のところあの程度は魔界の安定化など測れていない。
魔王になって約二年間。未だに安定化するにはやる事が多く残っている。
「魔界の安定化なんて、今のペースでも数十年はかかるぞ」
「「……え……」」
俺が事実を告げると今度はテルとラルの二人が変な声を上げた。
本当に知らなかったんだな……
「お前ら……今、魔界の存在が何割維持できてるかわかるか? 」
「五割くらいですかね。そのくらいはできてるんじゃ」
「まぁ、そうだな。表側ではそうなっているな」
「表側……? 」
「あぁ。本来の維持率は……一割か二割だ」
今魔界の存在維持率は、表側では、五割ほど。これで他の世界とのバランスを保っている。
が、しかし。本来の魔界の維持率は一割か二割程度。これをより多くの割合で保たなければ意味が無い。
「もしかして、これ魔王様知らないやつですか? 」
おそるおそるどこか不安そうな声でテルが聞いてくる。
おそらくはカノン様がこの事を知らずに契約を結んだと思っているのだろう。
「んなわけあるか。魔王様はそれを理解している。それに何のために条件の変更を可能にしたんだ」
それを聞くと、どこか安堵したようにテルが息を吐いた。
「ん? 今気づいたけどあいつはどうした? 」
「あー。あいつは今日急用で来てないですね」
そんな中、どこか疑問を感じた俺は二人に問いかけた。従属会議はいつもなら四人で行われる。だが、今回は三人で行っていた。
もう一人は自由人だから、来なくてもおかしくないのだが、やっぱり少し寂しい。
「ホントに自由人だなあいつ。まぁいい。とりあえず今日の会議は終了だ」
「そーですねー。さすがに今回は内容が内容でしたし。ここいらで終わりますかね」
「それにハル様は、お風呂に入りたいでしょしね。血なまぐささが消えてませんし」
「あぁ。そうさせてもらうよ。じゃ、解散」
俺の声の後、二人は部屋を出ていった。
二人が出ていった後、俺は必死で服の匂いを嗅いだ。
血なまぐさいのがわかるなら、その場で言って欲しかった……ナチュラルにこの手でカノン様を触ったと思うと後悔しかなかった。
魔王様、その依頼引き受けます。 たこすけ @kotapi
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