工業高校へ

夏伐

戻りたくはない

 工業高校ではよくあることだと思う。


 それは女子が少ないことだ。本当に少ない。

 でもいないわけではなかった。工業科でその学年唯一の女子で、しかも可愛い後輩は三学年全部合わせた男子生徒から『アイドル』というあだ名をつけられていた。


 関わることはなかったが、確かに小動物チックで可愛らしかったのは確認した。


 そのレベルで女子が珍しい。


 そんな思い出から、もう十年は経っただろうか。


 逆に女子が少なすぎて、同性カップルが校内デートを楽しんでいたのを見た事がある。多少ざわついてはいたが、特に表立った問題にはなっていないようだった。

 休み時間には罰ゲームで男同士でキスしていて、別の科の腐女子が歓喜していたのも良い思い出だ。


 パンツ一丁で廊下を走ったり、暑いからとズボンを脱いで教師に注意される、そんな日常だった。


 スカートの短い先輩のパンツを見るために階段の踊り場に這いつくばっている姿は本当に楽しそうだった。俺は誘われたが断った。


 現在、男女比が半々の世界で暮らしている。全員が節度を守っている。これが人間の生活か、と噛み締めている。生きやすい。


 今ではそんな記憶を時折思い出すばかりで、せっかく専門で勉強したはずの電気配線の授業や情報処理の知識はさっぱりである。

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