第52話:黄金の誘惑、恐怖のお宝ツアー!?④
③お土産コーナー。
「ここはお土産コーナー。キャーメル村伝統の品やお菓子を販売してるお店が盛り沢山。さあさ、好きなだけお買い求めください」
「俺たち先に村で買い物しちゃったんだけど」
「まあまあそう言わず! 限定品に巡り会えるかも」
旅行プランのなかに土産屋に連れてくなんてここで金落とさせるつもりか。
汚ぇな。
店は全部で三店舗。
一つ、二つ、三つ目の店をまず見比べる。値段品質を見比べ吟味する。
「ここが一番安いな」
最後に見た店が閉店セールのため30%オフだった。
「ねぇビターこのお店やめちゃうんですって」
「三件中一つ潰れるのか……」
「安いし可哀想だし買ってってあげようよ」
メルトのセリフを聞きツアーコンダクターのおっさんが横から声をかける。
「そうですぜ旦那!(注ビターのことである)ここ品質もかなりいいですよ。なんたって俺が
「三年前?」
「あ」
「次行こ次」
ウギャアアアアーーッッ……!!
後ろでビターに制裁の首絞めを受けるおっさんの地獄の光景が見えぬように、フィナンシェはメルトの肩を抱き別の土産店へと向かうのであった。
続けて2店舗目。
「お茶です」
「あ。どうも」
「ど、どうしようフィナンシェ。お茶くれたし買わないわけにも」
「落ち着いてくださいメルト様。自分の買いたいものだけを選べばいいんです」
「でも、入って早々お茶なんて渡されたら」
良心揺さぶられるメルト。
二件目の店に入ってすぐ店長らしき人にお茶らしき飲み物を渡されてしまった。
「チャイティーです。美味しいですよ。どうぞお好きなだけご覧になってくださいね」
ほんわかしたご主人だ。
厚意は嬉しいがなんだか買わずに出にくい雰囲気。
「あんだこの店さっきの店とほぼいっしょじゃん。特に目新しいモンもねェな」
合流したビターもカップを握らされていた。
「出るぞ」
「でも悪いわよっ。それにこのお茶も甘くてスパイスが効いてて美味しいし」
「同情や罪悪感で買い物するな。
店を出る。
二件ともろくな買い物が出来なかった。
「全部で三件か」
こうなったら残りの一件も気になる。
ということで最後に残る三件目(ギラギラの金色塗装)の土産屋に入ることにした。
「いらっしゃい~」
出迎えたのは紫色のパンチパーマに前歯が金色のご主人。
もう帰りたい。
「コレねオススメ蛇柄の財布。金運あがるよ」
聞いてもないのにオススメを言ってくる。
「ちなみに2000キャンディー以上お買い上げのお客様につきラッキーバッグ一個ついてくるよ~」
「ラッキーバッグ!?」
メルトが食いつく。
「欲しい欲しい! 何が入ってるの!?」
「買ってからのお楽しみだよ~」
「ビターここで買ってこうよ!」
「おまけのために2000キャンディー落とす奴がいるか!」
思わずツッコむ。
「いいじゃんさっきのお店だって何も買ってないんだし。ほら! このハンカチとか可愛い!」
「それ健康運上がるよ~。こっちはギャンブル運、こっちは勝訴運ね」
「ろくでもねェぞこの店!」
「(健康運)」
なんか切なげな声が聞こえた。
「フィナンシェ欲しいのか?」
「(こくこく)」
「あ、ラッキー! フィナンシェ買ってもらいなよ! それ買えばラッキーバッグ貰えるじゃん」
「なんで当たり前のようにおまけがお前のモノになってんだよ……」
まいど!
結局胡散臭い健康運アップのお守りを買った。
「ありがとうございますビター様。一生大切にしますね」
「重いわ」
「めっちゃ健康になるよ~。腹筋六個に割れちゃうよ。はい、それとラッキーバッグ」
「キャー楽しみ!」
お目当ての品を貰いさっそくバッグを開封するメルトだったが、「……」中身を見たとたん静まり返った。
変なオモチャに不気味な石に奇妙なお面に汚れた人形……。
がらくただらけだった。
「在庫処分じゃねーか!」
ボロいミイラの人形片手にキレるビター。「ふざけんなよインチキがァーーッ!」
「ひいいぃいすんませんこれあげるから許して~」
胸ぐらを掴まれたインチキ主人がビターたちに向かって何か差し出した。
【インチキ店員から小さい箱×3を貰った!】
「なんだこれ」
箱のパッケージには怪しいローブを着た盗賊姿の人物が不気味に笑いながら鍋をかき混ぜる絵が描かれている。
「『キャラメルメルメ』。この村で採れるキャーメルストーンと同じキャラメルがこのセットで簡単に作れちまうのさ! ちょっとネチョネチョしてるけど。いやぁ~ラッキーだねお客さんたち」
「三店舗ろくな店じゃなかったな」
「グレーゾーンの綱渡りだったわね」
「ほぼ闇市でしたね」
さすが激安ツアー。
「さあさ楽しいツアーはこれからですぜ。ツアーで一番目玉の場所へご案内しやす!」
戦利品を片手にビターたちは土産物店街を去るのだった。
スイーツ・トリップ~ちょっぴりオカシな珍道中~ 秋月流弥 @akidukiryuya
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