第7話 週1が月1に
あの日、病室で見せたしわくちゃの無邪気な笑顔の祖母。
それが、祖母と過ごした最後だった。
あんなに何でも無さそうに笑っていたのに。
心配かけまいと、祖母は誰にも言ってなかったから、主治医から死後初めて聞かされるまで俺も母も知らなかったけど、祖母は俺が中2になる前から既に末期癌だった。
辛そうなところを1つも見せず、いつも明るい笑顔で出迎えてくれた祖母。
そんな祖母の事が大好きだったと、気付いたのは、最後の病室だった。
それまでは、日曜日が来る度に憂鬱で、女装でいる自分に嫌気が差していたけど、祖母が意識を失ったと知って、女装でも何でもいくらでもやってやる!と思えた。
祖母が元気で喜んでくれるなら、女装なんて苦にならないと気付かされた。
そんな大好きだった祖母だから、祖母の月命日には、俺は毎回、祖母が喜んで会ってくれていた、あのお嬢様風の女装をして、母とお墓参りに向かう。
何度か、クラスメイトや小春とすれ違ったけど、今のところ、多分、気付かれてない様子。
いや、もしかしたら、自分がそう思ってるだけで、陰で思いっきり笑われているのかも知れないけど。
そんな事くらい、大して気になんない。
俺は、大好きな祖母の気持ちを優先したい。
祖母の莫大な遺産は......って?
死期を予感していた祖母は、母と俺名義で全財産を贈与する遺言書を作成してくれた。
それが無くても、俺は、月命日に女装していたよ、多分ね。
週に1度だったのが、月に1度になってしまったけど、祖母は、天国から、きっと喜んで俺達を見下ろしてくれているかな?
【 完 】
時折、お嬢様 ゆりえる @yurieru
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