第5話 アクセサリー
――「ラプンツェル・ストーン」。
その昔、歴史上の大泥棒に盗まれたとされていたアクセサリーの名前よ。
それが少し前に無傷で回収されて、美術館へ収蔵されたの。
……知らない?
あれ、私の事なのよ〜?
ビックリした?
私、ずっと古びた
一歩も外に出る事なく。
付喪神になってもね、ずっと箱の中。
だから「ラプンツェル」ってわけ。
でも、そのおかげか年代物だけど若くみられるのよ。
やっぱり紫外線って怖いわね。
みんな気をつけた方がいいわ。
……話が逸れたわ。
その泥棒は生涯捕まる事なくそのまま寿命を迎えたわ。
数年後、ようやく
その時は、完全に悲劇のヒロイン気分!
飛び込んできた調査の人達が王子様に見えたものよ。
まあ白馬には乗ってなくて、防衛のために武装してたけどね!
………いやね、笑うところよ。
そこからは、本物のお姫様状態!
綺麗に磨き直されて……私のための台座ができたわ!
しかも私を見る為に連日、人が押し寄せるの!
やっぱりアクセサリーは箱の中じゃなくて、見られてこそよね!
みんな私を見ては羨望の眼差し。
美しいものね、仕方ないわ!
……そこから今に至る訳だけど、ここ最近気づいたのよ。
箱の中じゃなくて、見られる事がアクセサリー。
それは間違ってない。
でも、同じ見られるでも【飾られるもんじゃない】のよ。
誰かを【着飾って】、どこかへ連れていかれて……。
その女と羨望の眼差しを受けるの。
それこそが最高なのよね。
それに、ここは夜になると誰もいなくなるのよ。
今もそう。
静かで、静寂の空気が……息苦しいわ。
私を支える台座。
守ってくれるガラスケース。
こっちを黙って見つめるカメラのレンズは鉄壁の要塞。
……まるで、監獄ね。
あら、だあれ? あなた。
……誰もここには来れないはずだけど?
でも、いいじゃない。
久しぶりよ、そんな射抜かれそうな瞳。
まるで、あの大泥棒みたいね。
やだ、乱暴にされる趣味はないわよ。
でも、なんでかしら……久々に昂っちゃう。
だって……。
ガラスケースの外に出るなんて、久しぶりだもの。
そうだ、貴女は私を身につけられるのだから……
しまい込んだりしないでよね。
【女の泥棒を着飾る宝石】なんて、洒落てるじゃない?
貴女はどこへ連れて行ってくれるの……?
どこへでも、付き合うわ。
……さぁ、魅せつけましょう……?
付喪神の独り言 草鹿りのすけ @kusakarinosuke
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